オトナンサー|オトナの教養エンタメバラエティー

ホークス福岡移転30年、プロ野球チームの「地方進出」はなぜ可能になったのか

サッカーやバスケと共存は可能

Q.地上波の全国放送でプロ野球中継が少なくなった要因と影響を教えてください。

江頭さん「前述の通り、視聴率の低下が最大の要因です。巨人はブランド力を維持したかったので放映権料を値引きせず、1試合1億円を厳格に守りました。バラエティー番組なら、2時間で1億円の放映権料と、中継車や実況など制作費まで含めて1.2億~1.5億円といわれる費用がかかりません。しかも、視聴率も20%台が期待できます。

視聴率低下の理由ですが、地上波の野球中継は『試合開始』も『試合終了』も放送されていないことが多かったです。これは世界的にも珍しいことでした。本当に観戦したいファンがお金を払っても試合終了が見たいと考え、地上波を見なくなったと考えられます」

Q.かつては、放映権料が球団の大きな収入だったと聞いたことがあります。現在は、放映権料に頼らないビジネスモデルが確立しているのでしょうか。

江頭さん「ビジネスモデルの変更を余儀なくされたのはセ・リーグ球団だけ、特に巨人です。ホームゲーム70試合で70億円の収入があったものが、現在ではCS中心になり5分の1程度になったといわれています。巨人にとって大きなダメージですが、放映権収入が減っても他球団と同等の収入がありますので、超高額年俸の選手を減らせば問題なく経営可能です。

セ・リーグ球団は1990年代、巨人の公式戦10~15試合が1試合1億円で売れていました。しかし、他の試合を購入するテレビ局はありませんでした。しかし、CS局が全試合を購入するようになりました。1試合単価は下がりましたが、総収入に大きな変化はないようです」

Q.プロ野球球団の地方拡散が地方に与えた影響はどのようなものでしょうか。

江頭さん「経済効果は大きいと思われます。楽天イーグルスのレギュラーシーズンに関する経済効果算出を宮城県が毎年行っていますが、200億円以上です」

Q.サッカーやバスケットボールなど他のスポーツも地方でのチーム運営が盛んです。飽和状態になったり、共倒れになったりする懸念はないのでしょうか。

江頭さん「スポーツの観戦顧客は、いわゆる『8:2の法則(パレートの法則)』になっていると考えられています。頻繁に来場する20%の顧客が収益の80%を生んでいます。コアな野球ファンは同じ県内にプロのバスケチームができてもサッカーチームができても、野球観戦に通う回数を減らすことはあまりありません。

残りの80%の来場者がサッカー観戦に5000円消費すれば、野球観戦は5000円減少します。ただ、収益に大きな影響は出にくい状況です。高校時代、熱心にバスケ部で活動していた人はおよそ15万人、サッカー17万人、野球15万人です(2018年、全国高等学校体育連盟などのデータ)。この人たちが主要なファンとなる可能性が高いと仮定すれば、他のプロ競技が誕生することで共倒れになる危険性は低いと思われます。

ただ、同一競技でプロチームが増加し過ぎると、選手数が多くなりすぎてファンが覚えることが難しくなります。また、選手間に実力格差も生まれます。その結果、スター選手が出現しにくくなり、悪循環になる危険性があります。現在のJリーグがこの状態に近いのかもしれません」

(オトナンサー編集部)

1 2

江頭満正(えとう・みつまさ)

独立行政法人理化学研究所客員研究員、一般社団法人日本スポーツマンシップ協会理事

2000年、「クラフトマックス」代表取締役としてプロ野球携帯公式サイト事業を開始し、2002年、7球団と契約。2006年、事業を売却してスポーツ経営学研究者に。2009年から2021年3月まで尚美学園大学准教授。現在は、独立行政法人理化学研究所の客員研究員を務めるほか、東京都市大学非常勤講師、一般社団法人日本スポーツマンシップ協会理事、音楽フェス主催事業者らが設立した「野外ミュージックフェスコンソーシアム」協力者としても名を連ねている。

江頭満正(えとう・みつまさ) 関連記事

もっと見る

編集部おすすめ記事

ライフ 最新記事

ライフの記事もっと見る

コメント

CAPTCHA