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完全自動運転「レベル4」によって自動車保険は消滅するのか

自動運転技術が損保会社のあり方を覆す日は来るのか…

 自動運転は近い将来、損害保険会社のあり方を根底から覆す爆発力を秘めています。

 将来、完全な自動運転が実用化されれば事故が激減し、自動車保険そのものの必要性がなくなるかもしれないという予測があります。多くのシンクタンクがこうした趣旨のリポートを発表しており、損保会社の売り上げの50~60%を占める自動車保険のマーケットが“蒸発”してしまう可能性があるのです。

 それは以下のような理由からです。

 現在公道で走れる自動運転は「レベル3」が最高とされています。レベル3は原則、自動運転ですが、必要時にドライバーが運転する「準自動運転技術」であり、あくまで「準運転」です。つまり車全体の運行の責任はあくまでもドライバーにあると思われます。

 またハンドルを握っている人からすれば、システム不具合などが原因で、たとえ自分に過失がなくても、相手を傷つければ道義的な責任を感じることでしょう。過失の有無にかかわらず、その時、その場所にその車が走っていなければ事故は起こりえないため当然、罪悪感は生じるのです。

 しかし、今後レベル3の信頼性が上がり、システムトラブル以外の事故はありえない、また準運転中の事故は自分の責任ではなく、被害者はメーカーと話すべきだという風潮になってしまえば、それが“免罪符”になり、ドライバーの罪悪感は軽減されます。

 また「自動運転中の事故は補償しない」という条件が付いた、レベル3用の安い保険が販売される可能性もあり、それがスタンダードになれば業界全体の収益が低下する可能性が高いのです。

損保会社が恐れているのは完全自動運転「レベル4」

 今回の東京海上の特約には「レベル3」の事故が含まれますが、少々意地悪く見れば、「たとえAIやシステムの不具合が原因でも事故は所有者の責任。加入している自動車保険を使って補償を行うべきだ」という論理に先鞭をつけたとも言えるでしょう。

 つまりは「あなた(ドライバー)の責任です」というメッセージでもあるのです。

 実は、損害保険会社が最も恐れているのは「レベル4」、つまり完全な自動運転です。米グーグルなどが有名ですが、レベル4の車にはハンドルやブレーキすらなく、利用者は「座って目的地を設定するだけ」。ドライバーという概念すらありません。

 この場合、感覚としてはタクシーやバスに乗っているのに近く、たとえ事故を起こしたとしても、どれだけの人が「自分の責任」と感じるでしょうか。おそらくは、メーカーの責任と思う人が大多数でしょう。

「うちの車で発生した事故はうちがすべての補償を行う(もしくは、月数百円の保険料で補償する)」。どこか一社でもそのようなことを言い出せば、あっという間に自動車保険は消えてしまいます(その一社はグーグルである可能性が高そうですが)。

 自動運転は車のあり方、そしてドライバーの意識を変えつつあります。そして、来たるべき技術革新「レベル4」は車のハンドルだけでなく、巨大な損害保険会社の運命さえも握っているのです。

(株式会社あおばコンサルティング代表取締役 加藤圭祐)

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