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目黒女児虐待死の衝撃 「連れ子」に対する虐待はなぜ起こるのか、専門家が実例で解説

虐待を疑ったら、まず児相に通報を

 虐待の中でも、タイガが受けたようなネグレクトだけでなく、おなかを空かせた子どもが街を徘かいすることによって早期に発見し、保護できるケースもあります。

 しかし、ほとんどの虐待の場合、家庭という密室の中で起こっているため、発見が困難なのです。また、余計なことに関わりたくない、といった風潮があることも否めません。結愛ちゃんのように、取り返しのつかない事態に陥って、ようやく明るみに出るケースも後を絶ちません。

 虐待から子どもを救うために欠かせないのが、周囲の人の通報です。「近所の子どもが虐待されているかも?」と思ったら、迷わず「189」に通報してください。児童相談所につながり、専門家が対応します。また、緊急の場合は警察に通報してください。

 実は、最初に紹介したマキのケースでは、マキ本人が担任の先生に何度か相談しており、先生は「何かあったらいつでも連絡して」と自分の携帯番号を教えていました。

 しかし、実際にマキが父親から執拗(しつよう)な暴力を受け、何とか父親の目を盗んで携帯に電話をしたとき、電話はつながりませんでした。電源が切れていたのです。

 あのとき、先生が「電話が通じなかったら110番通報するんだぞ」とご指導くださっていたら、あんなに暴力は振るわれずに済んだのではないかと思うのです。

 今回は、再婚家庭の虐待についてでしたが、虐待は、一歩間違えばどこの家庭にも存在します。ただ、子どもは自分の口から「親にやられた」と言わないことがほとんどなので、第三者の介入がとても重要なのです。結愛ちゃんのケースのように、関係機関がその状況を認識していたのにうまく連携できなかった結果、死亡事例が発生してしまうケースもあります。

 平成16年に児童虐待防止法が改正され、地方公共団体の責務、児童虐待に係る通告義務、被虐待児童に対する支援などが整備され、関係機関の会議において、要保護児童の共通理解や対応についての話し合いが定期的に行われるようになりました。にもかかわらず、今回の事件が起きてしまったことは、子どもに携わる私としても残念でなりません。

(文/構成・オトナンサー編集部)

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上條理恵(かみじょう・りえ)

少年問題アナリスト

少年問題アナリスト、元上席少年補導専門員、東京経営短期大学特任准教授。小学校、中学校、高校講師を経て、1993年より、千葉県警察に婦人補導員として、青少年の非行問題(薬物問題・スマホ問題・女子の性非行)・学校との関係機関の連携・児童虐待・子育て問題に携わる。学会活動として、非行臨床学会の会員としての活動も行う。小中学生、高校生、大学生、保護者、教員に向けた講演活動は1600回以上に及ぶ。

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