目黒女児虐待死の衝撃 「連れ子」に対する虐待はなぜ起こるのか、専門家が実例で解説
少年問題アナリストの上條理恵さんが、犯罪に巻き込まれた子どもたちの事情や悩みなど、その実態を解説します。今回のテーマは「連れ子の虐待」です。
元千葉県警上席少年補導専門員として青少年の非行問題に数多く携わってきた、少年問題アナリストの上條理恵さんが、犯罪に巻き込まれた子どもたちの事情や悩みなど、その実態を解説します。今回のテーマは「連れ子の虐待」です。
盾になれない母親、我慢する子ども
東京都目黒区のアパートで今年3月、船戸結愛ちゃん(当時5歳)が、父親の船戸雄大被告の暴行により死亡しました。この事件では、結愛ちゃんが「パパ、ママ、もうおねがい ゆるして ゆるしてください」といった手書きの文章を残していたことがたびたび報道されたので、強く記憶に残っている方も多いのではないでしょうか。
結愛ちゃんは母親の連れ子で、船戸雄大被告は継父でした。悲しいことですが、再婚家庭における「連れ子の虐待」は、統計的に多いというわけではありませんが、私も何度か扱ったことがありました。
母親はどうしても「子どもがいる私と結婚してくれた」という負い目があることが多く、「また結婚に失敗したくない」「夫に嫌われたくない」という理由から、子どもの盾になれないことが多いのです。同時に、子どもは「母親を悲しませたくない」「母親が好きになった相手を悪く言ってはいけない」と我慢してしまうことが多いように感じます。
捜査関係者によると、結愛ちゃんの部屋からは、「はをみがく/かおをあらう/べんきょうする」など、10項目以上の「決まり事」を書いた段ボール紙が見つかったようです。雄大被告は5歳の結愛ちゃんに、朝4時前に目覚ましをかけて、平仮名や算数などの勉強をするよう強制していたといいます。
5歳児にその環境を強制させていることだけでも悲しすぎますが、雄大被告は結愛ちゃんにこうした厳しいしつけをする一方で、自分は無職の上、自宅で大麻を吸っていたのですから、あきれたものです。
しかし、実は、雄大被告に限らず、継父は子どもへのしつけが厳しくなってしまう傾向があるように感じます。
多くの場合、当初から子どもを憎らしく思っているわけではなく、「好きで一緒になった相手の子どもの父親としてしっかりしなければ」「一家と主としての威厳を見せなければ」「子どもになめられたらダメだ」という、「母親とは逆の気負い」がエスカレートしてしまうのかもしれません。
虐待をした親からよく聞く、「しつけのつもりだ。何が悪い」という言葉も、子どもにとっては迷惑な話です。
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