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もはや「推し活」ではない!? ライバーに高額投げ銭で人生崩壊も 現代人が“ライブ配信の沼”にハマりやすいワケ

ライブ配信に「沼る」状況の背景とは?

 先述の民間会社の調査では、投げ銭をする理由として「好きなアーティストの応援で1番になってほしかったから」(女性)や、「好きなライバーのイベントでの結果を少しでも良くするため」(男性)という声が紹介されていますが、まさしくプラットフォーマーの仕掛けが人々の購買意欲をうまく刺激している好例といえます。

 ですが、単にプラットフォーマーの力だけで、このような「沼る」状況が作り出されると考えるのはちょっと無理があります。筆者は、仕事や家族といったフィールドに実りを感じられない人々が増えていることが背景にあると考えています。恐らくその実りのなさを解消するために、手っ取り早く、自分で考え積極的に行動する「自律性」「能動性」の感覚を得ようとしているのです。これはユーザーの側だけでなく、ライバーの側にも当てはまります。

 同様の指摘を行っているのは、社会学者の山田昌弘氏です。山田氏は、「希望格差社会、それから 幸福に衰退する国の20年」(東洋経済新報社)で、格差の拡大・固定化が進行している現状をデータで示しながら、「日本人は、リアルな世界で格差を乗り越えることを諦めて、『バーチャルな世界』で格差を埋める方向に進んでいる」と主張しました。

 そして、パチンコやゲームなどの「努力が報われてその成果が人から評価されるもの」を「疑似仕事」、スターやアイドルの「推し活」などの「親密関係をリアルな家族(配偶者や子ども)ではないものに求めるもの」を「疑似家族、疑似恋愛」と定義しました。つまり、「リア充」(現実の人生が充実している人々)の対極にいる、仕事や恋愛の世界でリアルな体験を得られない人々が、その体験をバーチャルな世界で埋め合わせるようになったと見ているのです。

 例えばソーシャル・ゲームについて、「『疑似成功体験』つまり『努力が報われるという感情』を売るシステム」と評していますが、これはライブ配信サービス全般にも見いだせる要素です。冒頭で恋愛感情の話をしましたが、当然ライバーとのやりとりを楽しむという「親密関係」を求める部分が大きいことに変わりはないものの、そこにプラスする形で投げ銭をはじめとした応援という「努力が報われるという感情」も抱き合わせで売っているのです。

 この構図が想像以上にややこしいのは、先述のように、「自律性」「能動性」の感覚と密接につながっているだけでなく、他者からの承認という自尊心にも関わっているからです。とりわけ「好きな人の役に立っている」「周囲から注目され評価される」という感情体験は、仕事での自己実現や家族形成が困難になっている現代では、簡単に得ることができなくなっています。

 誰でも子どもの頃、一度は兄弟や友だちとトランプ遊びなどにのめり込んで、泣いたり、怒ったり、騒いだりしたことがあるのではないでしょうか。しかも時間がたってから「なんであんなに真剣になったのだろう。バカみたい」と思ったのではないでしょうか。それはちょっとした遊びであったとしても、そこで生じた感情自体はリアルなものであったからです。逆に言えば、必要な感情体験はバーチャルなものからでも得られるのです。

 ひょっとすると、現在起こっているのは、このような人間の心理を徹底的に学習したプラットフォームの多くが、現実に疲れて、現実から退避しつつある人々の「駆け込み寺」になりつつあるということなのかもしれません。

(評論家、著述家 真鍋厚)

【要チェック】「えっ…」 これが「ライブ配信」にハマりやすい人の“特徴”です

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真鍋厚(まなべ・あつし)

評論家・著述家

1979年、奈良県生まれ。大阪芸術大学大学院修士課程修了。出版社に勤める傍ら評論活動を展開。著書に「テロリスト・ワールド」(現代書館)、「不寛容という不安」(彩流社)、「山本太郎とN国党 SNSが変える民主主義」(光文社新書)。

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