もはや「推し活」ではない!? ライバーに高額投げ銭で人生崩壊も 現代人が“ライブ配信の沼”にハマりやすいワケ
ライブ配信にのめり込む人の背景について、評論家が解説します。

近年、「ライバー」という言葉をよく聞くようになった人は多いと思います。これは、ライブ配信アプリや動画配信サイトを使ってコンテンツを配信する人を指します。主に視聴者からの投げ銭で収入を得ているとされています。
そんな中、ある女性ライバーが3月、東京都内の路上で動画のライブ配信中、ユーザーの男に刺殺される事件が発生しました。評論家の真鍋厚さんはこの事件をきっかけに、ユーザーがライバーに高額の投げ銭を送って生活苦になるなど、推し活に「沼る」背景に関心が集まっていると指摘します。現代人がライブ配信にハマりやすい背景について、真鍋さんが解説します。
1回の投げ銭で「5万円」を使った人も
一連の報道によると、3月に女性ライバーを殺害したユーザーの男は、多いときで月10万円ほどの投げ銭をその女性ライバーに送っていたということです。仮に月収が手取りで20万円だった場合、その半分に当たるため、生活費を切り詰める事態に陥ることは明らかです。
また、男は生活費などの名目で計200万円以上を女性に貸したものの、返してもらえなかったと警察に供述したとのことで、金銭的なトラブルが事件の引き金になった可能性が指摘されています。こうした点が一般的な「推し活」とは大きく異なるように見えます。
民間企業が全国の男女2500人を対象に行った「ライブ配信への投げ銭」に関する調査によると、「投げ銭」の1回当たりの最高額について、「1万円以上」と回答した人が4.8%でした。また、「1万円以上」の人に1回の最高額を聞くと、「5万円」と回答した例がありました(日本トレンドリサーチとfilmentsによる調査、2022年)。
自分の好きな推しのグッズを買ったり、投げ銭をしたりして応援する推し活は、相手の恋愛感情を利用したキャバクラやホストクラブのようなコミュニケーションにたとえられることがよくあります。もちろん、そういう情緒的な面はありますし、ビジネスモデルとしても好意を持たせることが重要であることは互いに共通しています。
しかし、プラットフォーマーが仲介している点で根本的に違っています。路上で大道芸人や流しのミュージシャンに投げ銭をするとき、自分の財布から硬貨や紙幣を取り出して渡します。一方、ライバーに投げ銭をする場合は、まずライブ配信サービスのプラットフォーマーが提供するアプリを使用し、有料アイテムを購入する必要があります。
もし1000円のアイテムを購入した場合、その金額がそのままライバーに渡るわけではありません。ユーザーが支払った金額と配信者がそれを換金した際の差額を「還元率」と呼びますが、これは配信サービスによってまちまちで30~70%程度の幅があります。要するに、還元率50%であれば、500円がプラットフォーマーの取り分になるイメージです。
そのため、プラットフォーマー側もあの手この手で「投げ銭」を促すことに注力しています。分かりやすい例は、YouTubeのライブチャットでメッセージを書き込める投げ銭として知られる「スパチャ」(スーパーチャットの略)でしょう。金額が高くなるほど、アイコンとメッセージ表示の時間が長くなり、赤色などの目立つ色に変わる仕様です。
ユーザーの側からすれば、自分のメッセージがライバーに届きやすくなり、「名前などを覚えてもらえる」「直接返事がもらえる」といった利点があります。そうして、承認欲求や虚栄心を満たすことができるのです。そのような心理を効率的にあおるのが投げ銭のランキングなどのイベントです。配信サービスによっては上位の者に報奨金などが入るため、ライバーがユーザーに投げ銭を呼び掛けることも少なくありません。
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