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「足を組んで座る」のがやめられない→実は悪影響だらけ! 整形外科医が教える「脱・習慣化」6カ条

足を組む=「快適」?

 こうしたリスクが分かったといっても、足を組んで座ることが癖や習慣になってしまっていると、意識していてもなかなかやめられないことが多いもの。どうしてやめられないのか、これにも明確な理由が存在します。

 まず、習慣化のメカニズムが考えられます。行動が習慣化するまでには時間がかかり、一度習慣として定着すると、無意識のうちに行うようになります。「足を組む」という行為も繰り返し行うことで、脳がその行動を「通常の状態」として認識するようになるのです。

 加えて、足を組むことが「心理的に落ち着く姿勢」として感じられることがあります。特に、足を組むことで自分の空間を確保するような感覚があり、安心感をもたらすこともあるでしょう。

 足を組むことが「快適」と感じるのは、心理面だけではありません。足を組むことで、一時的に特定の筋肉や関節の負担が軽減されることも考えられます。例えば、腰や背中にかかる圧力を分散させるために、足を組むことがあります。

 また、長時間同じ姿勢で座ると、姿勢が崩れてくるものですが、その際、足を組むことで無意識にバランスを取り直そうとすることがあります。これが結果として足を組む癖につながるケースも考えられるでしょう。

 そして、何度も繰り返される行動は、脳内の神経回路が強化されるため、さらにその行動が習慣化されやすくなります。「足を組む」ことが何度も繰り返されると、その行動をやめるのが難しくなるのはこのためです。

癖を治すための「6カ条」

 とはいえ、足を組んで座る癖や習慣が続くと、長期的にみて身体に悪影響を及ぼすことは間違いありません。足を組む癖を治し、無意識に組まないようにするには、まず日常生活上で次の“6カ条”を実践することから始めてみてください。

【意識的に姿勢を保つ】

自分の姿勢を定期的に確認し、正しい姿勢を保つように意識します。足を床にしっかりとつけ、骨盤を真っ直ぐに保つことを心がけましょう。

【リマインダーを設定する】

スマートフォンのリマインダーや付箋紙などを使って、自分に注意を促す方法が効果的です。「足を組まない」というメモを、デスクやパソコンの近くに貼っておくとよいでしょう。

【定期的なストレッチと運動】

長時間座っている場合は、定期的に立ち上がってストレッチを行うことをおすすめします。特に腰や背中、脚のストレッチが効果的です。定期的な運動を取り入れることで、筋肉のバランスを整えることができます。

【正しい座り方を学ぶ】

骨盤や背骨の正しい位置を学び、実践することが重要です。エルゴノミクス(人間工学)に基づいた椅子やクッションを使うことで、自然と正しい姿勢が保てるようになります。

【筋力を強化する】

体幹の筋肉を強化することで、正しい姿勢を維持しやすくなります。ピラティスやヨガなどのエクササイズが効果的です。

【座り心地のよい環境を整える】

椅子やデスクの高さを調整し、足を組まずに快適に座れる環境をつくりましょう。フットレストを使用するのも一つの方法です。

 一方で、足を組むことに関して、医療機関や専門家への相談が必要なケースも存在します。

 先述した日常生活上での実践を経ても改善が難しい場合、姿勢矯正の専門家(整形外科医、理学療法士、カイロプラクター)に相談することを検討してみてください。姿勢矯正のための具体的なアドバイスや治療法を提供してくれます。

 足を組む癖が原因で、筋肉の不均衡や慢性的な痛みが生じている場合は、医療機関での診察を受けましょう。理学療法やリハビリテーションが推奨されることがあります。また、足を組むことがストレスや不安によるものである場合、カウンセリングやメンタルヘルスの専門家に相談することが有益と考えます。

 他にも、新しい良い習慣を取り入れ、悪い習慣と置き換えることもおすすめです。例えば「意識的に深呼吸をする」「背筋を伸ばす」など、健康的な行動を習慣化することが有効です。そして、家族や同僚に、足を組んでいるときに教えてもらうようお願いすることで、自分で気付く機会を増やすことにもつながるでしょう。

 これらの対策を組み合わせて実行することで、足を組む癖を改善し、正しい姿勢を維持することができるようになりますよ。

(オトナンサー編集部)

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樋口直彦(ひぐち・なおひこ)

医師(スポーツ整形外科)、なか整形外科京都西院リハビリテーションクリニック院長

帝京大学医学部卒業後、複数の病院勤務を経て、2017年3月に日本整形外科学会認定専門医を取得。2021年1月、医療法人藍整会なか整形外科京都西院リハビリテーションクリニックを京都市で開業し、理事長、院長を務める。バレーボールのVリーグ男子1部「サントリーサンバーズ」のチームドクターを務めるなど、スポーツ選手の治療やリハビリにも詳しい。なか整形外科(https://nakaseikei.com/)。

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