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「タンパク質不足で疲れやすくなる」は本当? 真偽&対策を医師に聞いてみた

タンパク質が不足すると、健康上、どのようなリスクが生じる可能性があるのでしょうか。医師に聞きました。

タンパク質を多く含む食べ物をあまり摂取しなかった場合、体にどのような影響がある?
タンパク質を多く含む食べ物をあまり摂取しなかった場合、体にどのような影響がある?

 体にとって大切な栄養素の一つが「タンパク質」です。特に筋肉を作るのに欠かせない栄養素といわれており、日々運動をする人の中には肉類や魚介類、卵類などのほか、プロテインのような栄養補助食品でタンパク質を積極的に摂取するケースもあります。

 ところで、タンパク質が不足すると、体にどのような影響を与える可能性があるのでしょうか。ネット上では、「タンパク質が不足すると疲れやすくなる」という内容の情報がありますが、本当なのでしょうか。

 タンパク質が不足した場合の健康上のリスクのほか、効率的にタンパク質を摂取する方法について、なか整形外科 京都西院リハビリテーションクリニック(京都市右京区)院長でスポーツ医学にも詳しい、整形外科医の樋口直彦さんに聞きました。

タンパク質不足で「筋力」「免疫」低下のリスク増

Q.そもそも、タンパク質にはどのような働きがあるのでしょうか。

樋口さん「タンパク質は体内のほぼすべての生理的機能に関与しており、非常に重要な役割を果たしています。特に身体的な活動量が多い場合やストレスがかかった場合、タンパク質の需要が増します。主な働きは次の通りです」

(1)筋肉や皮膚などの構造を形成
タンパク質は細胞や組織の主要な構成要素です。例えば、筋肉や皮膚、髪の毛、爪などの構造を形成するのに必要です。

(2)酵素としての働き
酵素はタンパク質の一種で、化学反応を促進します。消化酵素や代謝酵素など、体内のあらゆる代謝プロセスをサポートしています。

(3)ホルモンとしての働き
ホルモンは体内の各種プロセスを調節するために重要な役割を果たします。例えば、血糖値を調節するのに必要な「インスリン」、成長と代謝の調節をするのに必要な「成長ホルモン」などがあります。

(4)免疫系の構成要素
抗体はタンパク質から作られ、体内の病原体と戦うために重要な役割を果たします。

(5)運搬と貯蔵
血液中のタンパク質は栄養素や酸素の運搬を助けるほか、肝臓などでは栄養素の貯蔵にも関与しています。

(6)エネルギー源としての利用
体にとっての主なエネルギー源は糖質や脂質ですが、必要に応じてタンパク質もエネルギーとして利用される場合があります。

Q.では、タンパク質が不足すると、体にどのような影響を与える可能性があるのでしょうか。

樋口さん「タンパク質が不足すると、『筋肉の減少』『免疫機能の低下』『皮膚の乾燥や炎症』など、健康上の問題が生じる可能性があります。順番に詳しく説明します」

■タンパク質が不足した場合に体に与える影響
(1)筋肉の減少
タンパク質は筋肉の主要な構成要素であり、不足すると筋肉量が減少し、筋力が低下する可能性があります。これにより体のパフォーマンスが低下することがあります。

(2)免疫機能の低下
先述のように、抗体や免疫細胞の一部はタンパク質から作られており、タンパク質が不足すると免疫系の機能が低下し、感染症への抵抗力が弱まる可能性があります。

(3)皮膚の乾燥や炎症が生じる
タンパク質は皮膚の構造を形成しており、不足すると皮膚の弾力性や修復力が低下し、皮膚の健康に影響を及ぼすことがあります。これにより、皮膚の乾燥や炎症が起きる可能性があります。

(4)貧血が生じる
ヘモグロビンの合成にはタンパク質が必要であり、タンパク質が不足すると赤血球の数が減少し、貧血のリスクが高まる可能性があります。

(5)代謝の低下
タンパク質は体内の代謝プロセスに重要な役割を果たしており、不足すると基礎代謝率が低下し、エネルギーの消費効率が悪化する可能性があります。

(6)骨の健康に影響
タンパク質はカルシウムの吸収を助けるため、不足すると骨の健康に影響を与える可能性があります。

(7)成長や発育に影響
特に子どもや若年層の人にとって、タンパク質は成長や発育に必要不可欠です。不足すると身長の伸びや体重の増加が遅れることがあります。

これらの症状や健康上の問題は、長期間にわたってタンパク質が不足することでより顕著になる可能性があります。バランスの取れた食事を心掛け、適切な量のタンパク質を摂取することが重要です。

Q.ネット上では「タンパク質が不足すると疲れやすくなる」という内容の情報があります。実際にこうしたケースは存在するのでしょうか。

樋口さん「存在します。タンパク質が不足すると、エネルギーの代謝や筋肉の維持に影響が出て、『エネルギーの供給不足』『神経伝達物質やホルモンが作り出せなくなる』『貧血』『免疫機能の低下』といった状態が生じ、疲労感が増すことがあるからです。詳しく説明すると、次の通りです」

(1)エネルギーの供給不足
タンパク質は糖質や脂質と同様、エネルギー源として利用されます。特に運動や身体活動を行った際に、タンパク質が筋肉の修復や再構築に使われます。不足すると、筋肉の疲労回復が遅れたり、エネルギーの供給が不足したりするため、疲労感が増すことがあります。

(2)神経伝達物質やホルモンが作り出せなくなる
タンパク質は神経伝達物質やホルモンを作るのに必要な栄養素です。タンパク質不足で神経伝達物質やホルモンが作り出せなくなると、精神的な疲労感のほか、集中力の低下につながることがあります。

(3)貧血
タンパク質はヘモグロビンの合成にも関与しており、不足すると貧血になりやすくなります。貧血になると酸素が十分に運搬できなくなり、疲労感が増すことがあります。

(4)免疫機能の低下
タンパク質は免疫機能の維持にも必要です。タンパク質が不足して免疫系が弱まると、感染症にかかりやすくなり、それにより疲労感が生じることがあります。

【画像】あなたも当てはまるかも…タンパク質を積極的に摂取した方がよい人の“特徴”です

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樋口直彦(ひぐち・なおひこ)

医師(スポーツ整形外科)、なか整形外科京都西院リハビリテーションクリニック院長

帝京大学医学部卒業後、複数の病院勤務を経て、2017年3月に日本整形外科学会認定専門医を取得。2021年1月、医療法人藍整会なか整形外科京都西院リハビリテーションクリニックを京都市で開業し、理事長、院長を務める。バレーボールのVリーグ男子1部「サントリーサンバーズ」のチームドクターを務めるなど、スポーツ選手の治療やリハビリにも詳しい。なか整形外科(https://nakaseikei.com/)。

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