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手取り「月13万」で昇給見込めず不安 発達障害・27歳男性に社労士が差し伸べた“救いの手”

発達障害や精神疾患などを抱えながら働く人が、障害年金を受給するには、どのような取り組みが必要なのでしょうか。社労士が解説します。

発達障害や精神疾患などを抱えながら働く人が、障害年金を受給することは可能?
発達障害や精神疾患などを抱えながら働く人が、障害年金を受給することは可能?

 筆者のファイナンシャルプランナー・浜田裕也さんは、社会保険労務士の資格を持ち、病気や障害で就労が困難なひきこもりの人などを対象に、障害年金の請求を支援する活動も行っています。

 浜田さんによると、発達障害や精神疾患を抱えながら働く人の中には、雇用条件や能力などの関係で収入が少なく、障害年金の受給を検討する人もいるということです。実際に、何らかの障害や病気を抱えている人が、働きながら障害年金を受給しているケースは多いということですが、必ずしも障害年金を受給できるわけではなく、受給には事前準備が重要だといいます。

 では、障害や病気を抱えながら働く人が障害年金を受給するには、どのような取り組みが必要なのでしょうか。浜田さんが発達障害の20代男性をモデルに解説します。

支援者の手厚いサポートを受けながら働く男性

 今回、私の元に相談に訪れたのは、発達障害がある27歳の佐藤さん(仮名・男性)です。佐藤さんは障害者雇用により1日7時間、週5日働いています。収入は手取りで13万円ほど。現在は両親と同居しており、生活費を全額負担することはないので、何とか生活は成り立っているそうです。

 それでも、今後、昇進することは考えにくく、収入が増える見通しも立たないので、将来へのお金の不安がどうしてもつきまとってしまうそうです。

「何か他に収入を得る方法はないのか」

 そう考えた佐藤さんは、障害年金の受給を検討するようになったといいます。佐藤さんは、発達障害で初めて病院を受診したときに国民年金に加入していたため、障害基礎年金を請求することになります。

 そこまで話したところ、佐藤さんは不安そうな声で質問をしました。

「働いていても、障害年金は受給できるのでしょうか」

「結論から言いますと『働いているからといって、障害年金が受給できないわけではない』ということです。少し難しいお話になりますが、厚生労働省の『国民年金・厚生年金保険 精神の障害に係る等級判定ガイドライン』によると、就労については主にこのように規定されています。ガイドラインの内容を読み上げますね」

【ガイドラインに書かれている内容】
労働に従事していることをもって、直ちに日常生活能力が向上したものと捉えず、現に労働に従事している者については、その療養状況を考慮するとともに、仕事の種類、内容、就労状況、仕事場で受けている援助の内容、他の従業員との意思疎通の状況などを十分確認した上で日常生活能力を判断する。

 私は続けてこう言いました。

「ざっくり言うと『仕事の内容や職場での支援の様子を踏まえて判断します』ということです」

「ということは、僕も障害年金が受給できるということですよね」

「障害年金が受給できるかどうかは、国の審査結果が出ないと分かりません。ちなみに障害年金が受給できるかどうかは、主に医師の作成する診断書とご本人または代理人が作成する『病歴・就労状況等申立書』の記載内容で判断されます。ここまではよろしいでしょうか」

 佐藤さんは「はい」と言ってうなずいたので、私は説明を続けました。

「障害年金の請求については、事前準備が大切です。まずは、医師に診断書を依頼する前に、佐藤さんの困難な状況をまとめた参考文書を作るところから始めてみましょう」

 私はそう言うと、佐藤さんから職場での状況を聞き取ることにしました。

【画像】どんな書類が必要なの? これが「障害基礎年金」の“受給要件”です

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浜田裕也(はまだ・ゆうや)

社会保険労務士、ファイナンシャルプランナー

2011年7月に発行された内閣府ひきこもり支援者読本「第5章 親が高齢化、死亡した場合のための備え」を共同執筆。親族がひきこもり経験者であったことから、社会貢献の一環としてひきこもり支援にも携わるようになる。ひきこもりの子どもを持つ家族の相談には、ファイナンシャルプランナーとして生活設計を立てるだけでなく、社会保険労務士として、利用できる社会保障制度の検討もするなど、双方の視点からのアドバイスを常に心がけている。ひきこもりの子どもに限らず、障がいのある子ども、ニートやフリーターの子どもを持つ家庭の生活設計の相談を受ける「働けない子どものお金を考える会」メンバーでもある。

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