「シェアする」「スルーして」…親の「英語交じり日本語」は逆に子どもの英語力を阻害する
わが子に英語を習得させたいと願うあまり、「英語交じりの日本語」で会話する親が増えているようです。識者は「英語だけでなく、日本語力の育成にも悪影響」と指摘しています。

「このお菓子、ママとシェアしよう」「時間がタイトよ」
幼児期から英語に慣れさせたいと願うあまり、親子の会話に片言の英語を交ぜて話す親が増えているようです。しかし、子どもに対するこうした言葉遣いは、肝心の日本語力の成長を妨げるという指摘も少なくありません。
国際化が進む昨今、わが子への英語教育に関心を持つ親が、日常のコミュニケーションで注意すべきことは何でしょうか。著書に「1人でできる子になる テキトー母さんのすすめ」(日本実業出版社)などがある、子育て本著者・講演家の立石美津子さんが解説します。
カタカナ英語では、英語も日本語も習得できない
2020年度の全面実施を前に、2018年4月から小学校で「新学習指導要領」の移行措置が始まりました。これにより、3・4年生で「外国語活動」を年間15時間(2020年度以降は年間35時間)、5・6年生で教科としての「外国語」を50時間(同70時間)など、新しい指導要領の一部が実施されています。
年々義務教育における外国語の学習時期は低年齢化しています。より早い段階から英語に触れる環境や機会を準備することで、子どもが英語に親しみ、吸収していくことを期待する親も少なくないでしょう。
「外国語を話せる子どもに育てたい」と考え、幼少期から少しでも多くの英単語に触れさせようと、以下のような会話をしている親が増えている印象を受けます。
「このピザ、ママとシェアする?」
「○○スーパーがコスパだから、アイスゲットしに行こう」
「時間がタイトだから、急いで支度してね」
「お迎えが遅れるから○○駅でピックアップしてあげる」
「お友達をプッシュしたらダメだよ」
「ママの注意したことをスルーしちゃダメよ」
しかし、こうした言葉遣いは逆効果です。正しい英語が身に付かないどころか、母国語の習得にも悪影響を与えかねません。
日本で生まれ育った子どもや、外国に住んでいても家庭内できちんとした日本語を話す親元で育った子どもであれば、「さあ、今から日本語のお勉強をするよ」などと意図的に勉強をさせようとしなくても、親の言葉遣いを通じて日本語を習得し、3歳ごろには日常会話ができるようになります。
しかし、先述のような「日本語と英語が交ざった言葉」を取り入れた会話をする環境にいると、基礎となるべき日本語の理解力が育ちにくくなる危険があるのです。
中には、会話の中に英単語を混ぜる話し方が癖になり、無意識のうちに使ってしまっている人もいるかもしれません。例えば、ビジネスシーンでは「論理的に話す」を「ロジカルに話す」などのように、英単語を取り入れた表現が多用されています。「ランチする」「チキンを2ピース買う」「ゲットする」などは、一般に定着していると言えるでしょう。
しかし、これらはあくまでも、大人同士の会話における言葉遣いです。日本語の基礎がまだ身に付いていない時期の子どもに使うのは控えた方がよいでしょう。
私自身、20年にわたって学習塾を経営し、多くの子どもとその親のコミュニケーションを見てきました。その中で、中途半端に英語混じりの日本語を話す保護者はそもそもきちんとした日本語の言葉遣いができておらず、子どもも十分な会話力が身に付いていないケースが多いと実感しています。
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