年間1800人超が犯罪被害に…子どもと大人が知っておくべき「自撮り」のリスク
自撮り画像の投稿や交換をきっかけに、犯罪に巻き込まれる子どもが増えています。スマホを使う子どもと、周囲の大人が知っておくべき「自撮りのリスク」について、識者が解説します。

「自撮り」の投稿や交換をきっかけに、犯罪に巻き込まれる子どもが増えています。そもそも、なぜ自撮り画像を他人に送ってしまうのでしょうか。子どもの自撮りに潜むリスクについて、青少年のインターネット利用などに詳しい、作家・ジャーナリストの石川結貴さんが解説します。
最年少の被害者は8歳の女児
格安スマホの普及に伴い、子どものスマホ利用が急増しています。インターネットセキュリティー企業のデジタルアーツによると、10~18歳のスマホ所有率は90.3%。小学校高学年(10~12歳)でも、7割以上がスマホを使っています(「未成年の携帯電話・スマートフォン利用実態調査」2018年3月)。
子どもはゲームや動画視聴アプリの利用度が高いですが、撮影した写真を加工できたり、簡単に動画編集できたりするアプリも人気です。こうした画像のために、軽い気持ちで自撮りをする子どもが少なくありません。SNSへの投稿や友達とのアルバム共有だけでなく、自撮り写真を誰かと交換して、結果的に犯罪被害に遭う子どももいます。
2017年に、SNSを通じて犯罪被害に遭った18歳未満の子どもは1813人(警察庁調べ)。多くが自撮りを通じて被害に遭うケースとみられています。被害の内訳としては、児童ポルノや淫行、強制性交など性的な被害が多いことも特徴です。
最年少の被害者は8歳の女の子で、動画共有サイトで知り合った相手に自撮り写真を送っていました。
なぜ知らない人に自撮りを送ってしまうのか?
子どもたちも、最初は見知らぬ人に自撮りを送るつもりはないのですが、巧妙に誘導されてしまうのです。
例えば、SNSでペットの話題で盛り上がり、親しくなった人がいるとしましょう。相手が、かわいい猫の写真を公開していたり、毎日優しいコメントを投稿していたりするような人だと、つい安心感が湧きます。
個人的にメッセージ交換を始めてだんだん親しくなると、相手から「自己紹介したい」と言われ、自撮り写真が送られてくるのです。
その自撮りは、アイドルみたいにさわやか系の写真だったり、優しい雰囲気のイケメン青年だったりして、送られた側はうれしくなります。特に、子どもの場合、社会経験や知識が未熟のため、簡単に舞い上がってしまうのです。
そういう気持ちを見透かしたように「今度はキミが自己紹介して」などと言われます。子ども側が自分のプロフィールや顔写真を送ると、「カワイイね」「もっと仲良くしたい」、そんなふうに優しい言葉を送ってきます。
そうしたやり取りを続けるうちに、相手から上半身裸の写真が送られてきて、「キミの体も見たい」などと言われるのです。たとえ断っても、「僕の裸を見たんだから、キミも同じようにしてくれればもっと好きになれる」「これは二人だけの秘密の儀式」などと押してきます。結局、断り切れずに性的な自撮りを送ってしまうのです。
ところが、実際の相手はイケメン青年ではなく、子どもを狙った大人の男性の「なりすまし」。相手の正体を知った時にはもう遅いのです。「お前が送ってきた自撮りをバラまく」「あと一回だけ裸の写真を送ってくれば許してやる」「俺に会いにくれば写真を消去してやる」などと迫られ、結果的により深刻な被害に遭ってしまいます。
例えば、46歳の男が19歳のイケメンモデルになりすまし、ID交換掲示板で知り合った約1600人の女子中学生とLINEの「友だち」になったケースがあります。男は「裸の写真を送って」「すぐに削除するから安心して」と持ちかけ、約130人の女の子が裸の自撮りを送信させられていたのです。
一人の犯罪者によって、100人単位の子どもが性的な被害に遭うことを考えると、自撮りを取り巻く問題がいかに深刻か分かると思います。こうした自撮りは、コピーされて不特定多数の人に閲覧されたり、児童ポルノ画像として使用されたりする可能性もあります。
なお、性的な被害だけでなく、監禁などの事件も起きています。2016年に、SNSを通じて略取誘拐の被害に遭った児童は全国で20人に上っています。
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