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「曖昧な労働条件」「ブラックのイメージ」の声も…「みなし残業」何のためにあるの? 社労士に“メリット&デメリット”を聞いてみた

実際の残業時間に関わらず、設定された時間分の残業代を支払う「みなし残業制度」。働く人からは「何のためにあるの?」という声も聞かれます。制度の存在意義について、社労士に聞いてみました。

「みなし残業」は何のため?
「みなし残業」は何のため?

 企業の求人情報でしばしば見かける、「みなし残業代」や「固定残業代」といった言葉。実際の残業時間に関わらず、設定された時間分の残業代を支払う制度で、企業によっては基本給に含まれているケースもあります。この「みなし残業」には、「残業が少ない月にも残業代がもらえる」「残業が多ければ損になる」といった特徴がありますが、働く人からは「どうしてこんな制度が存在するのか」「何のためにあるの?」「労働条件として曖昧に感じる」「ブラック企業が採用している制度のイメージ」など、疑問の声も聞かれます。

 ネガティブな印象を持つ人も少なくない「みなし残業」の制度は、何のために存在するのでしょうか。企業と従業員、それぞれにとってのメリットやデメリットについて、社会保険労務士の木村政美さんに聞きました。

企業側には「3つのメリット」

Q.そもそも、「みなし残業」(固定残業)とはどのような制度ですか。

木村さん「『みなし残業(固定残業)制度』とは、あらかじめ設定した時間分の残業をしたとみなして、給与の中にその分の残業代を含める制度です。例えば、みなし残業時間が30時間であれば、30時間分の残業代が既に給与に含まれていることを指します。

本来、企業と労働者が雇用契約締結時に定めた所定労働時間を超えて働いた場合は、残業代が発生します。しかし、みなし残業制度を適用した場合、実際の残業時間がみなし残業として設定した時間内であれば、新たに残業代を支払う必要はありません。

ちなみに、みなし残業制度は、2017年にトヨタ自動車が働き方改革の一環として、会社で定めた基準を満たした社員に対して、約45時間分17万円程度の固定残業代を支給する制度を導入したことで注目を集めるようになりました」

Q.ずばり、みなし残業は何のために存在する制度なのですか。企業側・従業員側それぞれのメリットやデメリットを教えてください。

木村さん「まず、みなし残業制度を導入する企業側のメリットは次の3点です。

(1)みなし残業設定時間分までの残業代計算が不要になることで、給与計算業務の効率化が図れる
(2)残業代が固定化されるため、企業にとって人件費の把握が容易になり、経営計画が立てやすくなる
(3)残業代の固定化により、給与を増やす目的で必要以上に残業をする従業員が減り、逆に残業を減らす、もしくは定時で退社する従業員が増え、生産性が向上する可能性がある

一方、従業員から見た場合、給与の中にみなし残業代が含まれている分、給与額が高くなりますし、みなし残業時間よりも実際の残業時間が短い場合でも、給与額に変動がないので安定した収入が得られるメリットがあります。

しかし昨今、国が推進する働き方改革により残業時間を削減する企業が増え、中には毎月の残業時間が、みなし残業で設定した時間を下回るケースも出てきています。その場合、みなし残業制度を運用しない場合に比べて人件費の増大につながることが、企業側のデメリットになります」

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木村政美(きむら・まさみ)

行政書士、社会保険労務士、ファイナンシャルプランナー

1963年生まれ。専門学校卒業後、旅行会社、セミナー運営会社、生命保険会社営業職などを経て、2004年に「きむらオフィス」開業。近年は特にコンサルティング、講師、執筆活動に力を入れており、講師実績は延べ700件以上(2019年現在)。演題は労務管理全般、「士業のための講師術」など。きむらオフィス(http://kimura-office.p-kit.com/)。

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