「曖昧な労働条件」「ブラックのイメージ」の声も…「みなし残業」何のためにあるの? 社労士に“メリット&デメリット”を聞いてみた
求人応募時は“2つの注意点”を確認
Q.みなし残業の制度について、違法となるラインはあるのでしょうか。
木村さん「みなし残業制度そのものは違法ではありませんが、制度の内容を理解せず、次の6つのケースのように間違った運用を行うと、制度の適用が無効になり、労働基準法などの法律違反になる場合があります」
【(1)労働条件通知書や雇用契約書、就業規則などに、みなし残業制度を適用するときに必要な事項が記載されていない】
みなし残業制度を運用する場合は、基本給とみなし残業代(設定したみなし残業時間数も提示すること)、それぞれの計算方法、みなし残業の設定分を超えた場合の残業代に対応するなどの記載が必要です。
【(2)基本給が最低賃金を下回っている】
給与の中でバランスを取るために、基本給を下げ、みなし残業代に割り振った場合、基本給が最低賃金を下回ると最低賃金法違反になるので、下回らないような金額を設定する必要があります。
【(3)みなし残業代部分が法定賃金割増率を下回っている】
みなし残業代部分が法定時間外労働である場合、残業代に対して25%の割増賃金を上乗せして計算する必要があります。
【(4)設定したみなし残業時間以上の残業に対して、残業代を払っていない】
月でみなし残業時間を超えて残業を行った場合、超過分の残業代を支給する必要があります。みなし残業制は残業代を節約するための制度ではないことに留意しなければなりません。
【(5)給与明細に、『残業時間数』と『みなし残業代』が記載されていない】
給与明細には、みなし残業代の金額や残業した時間数の記載が必要です。残業時間数を把握するには、従業員ごとの労働時間の管理がしっかり行われる必要があります。
【(6)36協定で締結した時間以上のみなし残業時間を設定している】
「36協定(サブロク協定)」とは、労働基準法で定める労働時間(1日8時間、1週で40時間)以上の残業をする場合、企業と従業員で結ぶ時間外労働および休日労働の取り決めをいいます。
時間外労働の上限は原則「月45時間」ですが、これを下回る取り決めをすることは可能です。ただし、取り決めた時間以上のみなし残業時間を設定した場合、取り決めした時間以上の残業をした時点で36協定違反になります。また「特別条項付き36協定」を締結した場合でも、45時間以上のみなし残業時間を設定した場合、違法になる可能性があります。
Q.求人情報に「みなし残業代」の記述がある企業について、応募前に確認しておいた方がよいこと、注意すべきポイントとは。
木村さん「2018年に施行された改正職業安定法により、みなし残業制度を導入している企業は、求人情報に『基本給』『みなし残業代の額』『みなし残業時間を超える時間外、休日、深夜労働について割増賃金を支払うこと』を掲載、明示することが義務になりました。求人応募したい企業がみなし残業制度を導入している場合、これらの内容をよく確認するようにしましょう。
ここで特に注意することは2つあります。1つ目は『みなし残業時間の長さ』です。例えば、みなし残業時間が20時間と40時間の企業を比べた場合、後者の方が、一般的に残業時間が多い傾向にありますし、みなし残業時間で設定された分の残業はあるものとして考えた方がいいでしょう。
2つ目は『基本給の額』です。みなし残業時間が長い場合、給与額がその分高くなるので、基本給を同業他社と比較した上で、給料が高いのか低いのかを判断することが大切です。
みなし残業制度を導入している会社が必ずしもブラック企業だとは限りません。求人情報の内容をよく確認し、納得できる会社選びを行いましょう」
(オトナンサー編集部)

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