制定されて76年…女性の「生理休暇」、なぜ周知されない? 社労士に聞く“2つの理由”
働く女性の強い味方になり得る「生理休暇」。法律で認められている権利にもかかわらず、「知らない」という女性も少なくないようです。その背景について、社会保険労務士に聞いてみました。

働く女性の中には、生理による症状が重く、「出社するのもつらい」「生理痛がつらくて、仕事に集中できない」と悩む人も少なくありません。そんな女性のために、生理による不調の際に仕事を休むことができる「生理休暇」の取得が法律で認められていますが、「正直、利用しづらい」「使っている人を見たことがない」「名称がよくない気が…」という“本音”が聞かれる他、「そんなのあるんだ」「知らなかった」という人も少なからずいるようです。
働く女性の強い味方となり得るにもかかわらず、「生理休暇」が周知されていないのはなぜなのでしょうか。社会保険労務士の木村政美さんに聞きました。
就業規則に記載がなくても請求できる
Q.そもそも、「生理休暇」とは何ですか。
木村さん「生理休暇とは、1947年から労働基準法68条で定められている休暇です。条文によると『生理日の就業が著しく困難な女性労働者が休暇を請求したときは、その者を生理日に就業させてはならない』とあります。法律で認められた休暇なので、会社の就業規則に生理休暇に関する記載がなくても請求は可能です」
Q.生理休暇は「会社勤務の女性」であれば、誰でも取得できるのですか。
木村さん「女性労働者であれば、正規・非正規といった雇用形態や役職などを問わず、誰でも請求できます。年齢や勤続年数の制限もありません。
取得限度日数に関しては、国の通達により、就業規則などで上限を決めることはできないとされています。生理期間中のつらさの程度、労働の困難さは人によってまちまちであるためです。また、必ず日単位で取得しなくてもよく、半日や時間単位での取得も可能です」
Q.生理休暇を取得する際、診断書などの証明は必要でしょうか。
木村さん「働くことができないほどつらい症状であるにもかかわらず、休暇を取得するのに医師の診断書などの提出を必要条件にすると、わざわざ、病院に行かなければならない上、発行には日数がかかるので、かえって、休暇が取りづらくなってしまいます。そのため、特別な証明をしなくても、生理休暇を取得することができるようになっています。
また、会社側で証明を必要とする場合であっても、医師の診断書のような厳格な証明ではなく、例えば、同僚の証言程度の簡単な事実証明でよいとされています」
Q.生理休暇を取得した日は有給扱いになるのでしょうか。それとも、無給扱いでしょうか。
木村さん「生理休暇中の賃金について、『有給としなければならない』という労働基準法の規定はありません。従って、有給とするか無給とするかは会社で独自に決めることができます。その場合、就業規則などに定めた上で運用していくことになります」
Q.生理休暇の取得が有給休暇の付与・取得、社内評価に何らかの影響を与えることはありますか。
木村さん「有給休暇の付与と生理休暇取得の関係について、『生理休暇を請求して就業しなかった期間は、年次有給休暇の出勤日の算定に当たっては出勤したものとはみなされないが、労使間の合意によって出勤したものとみなすことも差し支えない』との通達があります。
労働者が有給休暇を付与されるには、『労働日の8割を出勤していること』という基準をクリアする必要がありますが、就業規則などで『生理休暇日について出勤日とみなす』旨の定めがない場合、生理休暇は欠勤扱いで計算され、取得日数によっては基準のクリアができず、有給休暇を付与されない可能性があります。
社内評価については、賞与・昇給などでマイナス評価をされるなどの不利益な取り扱いはできないことが、最高裁で確定しています」
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