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「銃の音、聞いたことあるんか?」…拳銃を懐に忍ばせた“支離滅裂”な訪問者〜実録・ボディーガード体験談

「おまえ、銃の音、聞いたことあるんか?」

 こんなときこそBの出番です。物置のドアはZの背後。Bが背後から押さえれば、私が正面から攻撃できます。しかし、Bが入ってくる気配はありません。後で聞いたところ、携帯の音声はほとんど聞き取れず、途中で充電も切れたそうです。「それなら他の手を考えろよ!」と怒りが湧きましたが、そもそも彼には適正がなかったのでしょう。私も思慮が足りませんでした。いずれにせよ、私1人で何とかするしかありません。

 そのとき、Zが尋ねました。

「おまえ、銃の音、聞いたことあるんか?」

 私は「あります」と答えました。すると、Zはニヤっとして「今、聞かせてやろうか?」と言うのです。何と答えるかで結果が変わる局面です。そして、私はこう言葉を返しました。

「こんな夜中に撃つと近所迷惑ですよ」

 これが正解かは分かりません。しかし、模範解答ではないでしょう。自分でも「何を言っているんだ」と思いましたから。

 しかし、その言葉を聞いたZは笑いました。爆笑ではありませんがウケていました。そして「今日は引き上げるわ」と言って席を立ち、しっかり50万円を受け取って帰ったのです。この現場は翌日から半年間続きましたが、再びZが現れることはありませんでした。

 今思うと、最初からZに撃つ気はなかったと思います。彼も引き際を探していたのでしょう。本気であれば、わざわざ武器を持っていると教えませんから。ちなみに、Zの銃は本物だった可能性が高いです。後に別件で彼が逮捕されたとき、銃刀法違反も要件に入っていたと聞いたからです。

 私の間抜けな回答が、Zが引くきっかけをつくったのかもしれません。そうした意味では、今回は間違いではありませんでしたが、正解はケースごとに変わります。

 トラブルが、口論で終わるか、暴力に発展するかは受け答え次第です。銃はともかく、刃物による犯罪は他人事ではありません。相手の引き際を用意してあげることは、被害を最小限にする有効な方法です。

(一般社団法人暴犯被害相談センター代表理事 加藤一統)

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加藤一統(かとう・たかのり)

一般社団法人暴犯被害相談センター代表理事

1995年より身辺警備(ボディーガード)に従事し、これまで900件以上の警護依頼を請け負う。業界歴26年。現在は、優良なボディーガード会社や探偵会社を探すユーザーに向けた無料紹介所「ボデタンナビ」を主宰。紹介だけでなく、企業のセキュリティーから家庭の防犯まで、網羅的な質問にも答えている。護身・防犯用品の設計企画を行う「タカディフェンスデザイン」も運営。ボデタンナビ(https://bhsc.or.jp/)、タカディフェンスデザイン(https://www.t-d-design.com)、公式ツイッター(https://twitter.com/bodetan)。

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