「銃の音、聞いたことあるんか?」…拳銃を懐に忍ばせた“支離滅裂”な訪問者〜実録・ボディーガード体験談
「おまえ、銃の音、聞いたことあるんか?」
こんなときこそBの出番です。物置のドアはZの背後。Bが背後から押さえれば、私が正面から攻撃できます。しかし、Bが入ってくる気配はありません。後で聞いたところ、携帯の音声はほとんど聞き取れず、途中で充電も切れたそうです。「それなら他の手を考えろよ!」と怒りが湧きましたが、そもそも彼には適正がなかったのでしょう。私も思慮が足りませんでした。いずれにせよ、私1人で何とかするしかありません。
そのとき、Zが尋ねました。
「おまえ、銃の音、聞いたことあるんか?」
私は「あります」と答えました。すると、Zはニヤっとして「今、聞かせてやろうか?」と言うのです。何と答えるかで結果が変わる局面です。そして、私はこう言葉を返しました。
「こんな夜中に撃つと近所迷惑ですよ」
これが正解かは分かりません。しかし、模範解答ではないでしょう。自分でも「何を言っているんだ」と思いましたから。
しかし、その言葉を聞いたZは笑いました。爆笑ではありませんがウケていました。そして「今日は引き上げるわ」と言って席を立ち、しっかり50万円を受け取って帰ったのです。この現場は翌日から半年間続きましたが、再びZが現れることはありませんでした。
今思うと、最初からZに撃つ気はなかったと思います。彼も引き際を探していたのでしょう。本気であれば、わざわざ武器を持っていると教えませんから。ちなみに、Zの銃は本物だった可能性が高いです。後に別件で彼が逮捕されたとき、銃刀法違反も要件に入っていたと聞いたからです。
私の間抜けな回答が、Zが引くきっかけをつくったのかもしれません。そうした意味では、今回は間違いではありませんでしたが、正解はケースごとに変わります。
トラブルが、口論で終わるか、暴力に発展するかは受け答え次第です。銃はともかく、刃物による犯罪は他人事ではありません。相手の引き際を用意してあげることは、被害を最小限にする有効な方法です。
(一般社団法人暴犯被害相談センター代表理事 加藤一統)

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