悩む親も…子どもに対する「怒る」と「叱る」、どう違う? 子育てのプロに聞いた
子育ての基本ともいえる「怒る」と「叱る」の違いを、正しく理解していますか。この両者にはどんな違いがあるのか、子育てアドバイザーに聞きました。
子どもが間違ったことをしたり、悪い行動を取ったりしたときに、親が「怒る」、あるいは「叱る」のが子育ての基本です。しかし、この「怒る」と「叱る」の違いについて悩む親は少なくないようで、「日常的に『怒る』方が多い気がする…」「正直、違いを正しく理解できている自信がない」「子ども側の捉え方で変わることもある?」など、さまざまな声が聞かれます。
子どもに対する「怒る」と「叱る」はどう違うのか、また、その違いを日々の子育てにどう反映させればいいのか……。そんな親の疑問について、子育てアドバイザーの佐藤めぐみさんに聞きました。
“感情的に叱っている”状態の親が多い?
Q.子どもに対する「怒る」とは、どのような行動・状態を指すのですか。
佐藤さん「子どもに対する『怒る』とは、親が感じる子どもへの不満を感情的にぶつけることを指します。例えば、子どもが宿題をやらないときに『だからおまえはダメなんだ』と怒鳴ったり、ゲームをいつまでもやっているときに『いいかげんにしなさい!』とぶちまけたり……これらは『怒る』の典型でしょう。言葉の内容というよりは、声の大きさや勢いに表れると思います。
望ましい行動ではないので、『子どもを萎縮させる』『傷つける』などデメリットばかりですが、『あまりの怖さに、子どもが言うことを聞く』様をメリットと捉える人もいると思います。『怒鳴らないと言うことを聞かない』と理解している場合はそうですね」
Q.次に、子どもに対する「叱る」とは。
佐藤さん「子どもに対する『叱る』とは、基本的には『教え』です。“基本的に”としたのは、教えから逸脱してしまっていることも多いからです。子どもの望ましくない行動に対し、ルールや約束事を提示しながら、より望ましい行動に導くことが『叱ること』といえると思います。
メリットは、この定義そのままですが、望ましい行動を子どもに教示できることです。この形で進めばデメリットはありません。しかし、ここまで読んだ多くの親御さんが、自分のやっている『叱る』は、これとは違うと感じていると思います。多くのケースで『叱る』と『怒る』の混合型、つまり“感情的に叱っている”状態になっているためです。よって、言葉上の定義よりも、実際に何をしているかで判断することが非常に大切だと感じています」
Q.子どもに対する「怒る」と「叱る」の違いは何だと思われますか。
佐藤さん「『怒る』は感情的、『叱る』は教育的といえるでしょう。『怒り』はそもそも感情に区分されるので、その点でも『叱る』こととは質的に違います。
片や“親が感情を表出している状態”で、片や“子どもへの教え”であれば、当然ながら親としては『叱る』方を重視すべきです。ただ、先述したように、実際には『叱る』行為の中に正しい叱り方と間違った叱り方が混在しているので、ここで重視すべきなのは前者です。
なお、認識の区別について、受け手である子どもが、『昨日のママは怒っていたが、今日は叱っている』のように別物として捉えていることはまずありません。そして、それは親の方にもいえると思います。『私は今怒っている』とか『今回は叱った』などと意識的に使い分けしていることはないでしょう」
Q.子どもに対して「怒る」あるいは「叱る」必要がある場面になったとき、親はどうするのがよいのでしょうか。
佐藤さん「どちらを意識するのがよいかといえば、『叱る』方です。ただ、この2つの言葉の定義が人それぞれ異なっていることも感じています。日頃受ける相談事例を見ても、『怒る』ばかりを使う人もいれば、『叱る』ばかりを使う人もいます。双方を、意味に応じて使い分けている親の方がまれです。よって、意味を踏まえなければ、『叱ることを重視した方がいい』とアドバイスすることもあまり意味がないように感じています。
多くの親が悩んでいるのは、『つい感情的に叱ってしまう』ことです。つまり、怒りを抑えきれないことに悩んでいるのに、言葉では『叱る』を用いているのです。
カウンセリングでアンガーマネジメントに取り組むと、期待値が高い人ほどイライラが大きいのが分かります。例えば、『言えばすぐに子どもは動く』という発想です。でも、実際にはそれほど簡単ではありません。感情を表出するだけだと、そこには教えがないため、余計に長引いてしまうので、本来の『叱る』の意味(=教える、導く)という視点についてぜひ一考してみてほしいと思います。
怒りが癖になっている人にとって、それをコントロールすることはとても大変なのですが、『怒る』以外でどう導くかを一度考えてみることは、自分を客観視する機会になると思います」
(オトナンサー編集部)
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