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満員電車でのベビーカー利用に賛否両論 「混雑時は正直迷惑」などの声も、識者に聞く

国土交通省は2014年、電車やエレベーターでは基本的にベビーカーを折り畳まずに使える、とのガイドラインを制定しました。これを受けて、公共交通機関でベビーカーを利用する人が増えていますが、満員電車での利用についてはいまだに賛否両論があるようです。

満員電車にベビーカー、どう思う?
満員電車にベビーカー、どう思う?

 子ども連れでの外出を楽にしてくれる「ベビーカー」。2014年には国土交通省が、電車やエレベーターでは基本的にベビーカーを折り畳まずに使える、とのガイドラインを制定し、公共交通機関でベビーカーを使用する人や、それに理解を示す人が増えています。一方、満員電車におけるベビーカー利用には賛否両論あるようです。混雑した車内では、他の利用客に不便を強いるだけでなく、ベビーカーに乗った子どもに危険が及ぶ可能性もあることから、ネット上では「空いている時はいいけど、混雑時は正直迷惑」「やむを得ず乗らなければならないこともある」など、さまざまな声が寄せられています。

 これについて、識者の見方とはどのようなものでしょうか。著書に「1人でできる子になる テキトー母さん流 子育てのコツ」(日本実業出版社)などがある、子育て本著者・講演家の立石美津子さんに聞きました。

満員電車は子どもにとって危険が多い

Q.まず、公共交通機関とベビーカーを取り巻く状況について教えてください。

立石さん「2013年6月、国土交通省に『公共交通機関等におけるベビーカー利用に関する協議会』が設置され、乳幼児連れの親が電車やバスでベビーカーを利用する際の安全性、利便性向上を目的とした『ベビーカーマーク』が誕生しました。このマークの貼られたスペースはベビーカーを広げたまま優先的に利用できるとし、国は『ベビーカー優先車両』をさらに増やすように鉄道各社に働きかけています。

また、ベビーカーを畳んで子どもを抱っこすることは現実的に困難な場合が多いことや、無理やり畳んで子どもを抱っこした場合、体勢が不安定となり転倒などの危険があるため、『ベビーカーは畳んでお乗りください』というアナウンスも行わない方針が定められました。これは、満員電車でも同様です」

Q.満員電車にベビーカーで乗車することについて、どのように思われますか。

立石さん「ベビーカーを必要とする外出の際、本来であれば、電車が混雑する時間帯に出かけるのを極力避けるのが賢明ですが、どうしても乗らなければいけない場合もあると思います。ラッシュの時間帯を避けたつもりが、事故などの影響で急に混雑することもあるでしょう」

Q.やむを得ず、満員電車にベビーカーで乗車する必要がある場合、どのようなことに気を付けるべきでしょうか。

立石さん「満員電車には、子どもにとってさまざまな危険があります。例えば、ベビーカーに寝かせたり、座らせたりしている赤ちゃんは、大人の腰の位置から下にいる状態です。車内が空いていれば問題ないものの、満員時は自然と大勢の見知らぬ大人に囲まれ、見下ろされる状態となります。網棚から何かが落ちてきたり、悪質ないたずらで手を出されたりする可能性など、狭い空間に多くの人や物が密集する場所ならではの危険がたくさんあるのです。

また、満員電車の乗客は非常に不安定な状態で立っていることが多く、ましてや、ベビーカーの周辺に立っている人は体勢の維持に苦労するものです。そのため、電車が揺れたり、急ブレーキがかかったりするたびに、よろめくこともあるでしょう。そんな時、ベビーカーに接触した弾みで子どもの上に倒れ込んでしまう可能性もないとは言い切れません。

こうした状況の中で、『子どもが最優先』という顔をする親もいます。子どもを守ろうとするあまり、ひじなどで他の乗客を押したり、ベビーカーに乗っている子どもが足をブラブラさせて他の人に当たっているにもかかわらず放置したり、袋菓子を持たせてその粉が他の乗客の服に付いたり……。こうした一部の親の非常識な対応により、その他大勢の、懸命に子育てをしている親までもが、周囲から冷たい視線を向けられてしまうこともあると思います。子育てに優しい環境作りのために、親としてのマナーや周囲への配慮が問われるのではないでしょうか」

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立石美津子(たていし・みつこ)

子育て本著者・講演家

20年間学習塾を経営。現在は著者・講演家として活動。自閉症スペクトラム支援士。著書は「1人でできる子が育つ『テキトー母さん』のすすめ」(日本実業出版社)、「はずれ先生にあたったとき読む本」(青春出版社)、「子どもも親も幸せになる 発達障害の子の育て方」(すばる舎)、「動画でおぼえちゃうドリル 笑えるひらがな」(小学館)など多数。日本医学ジャーナリスト協会賞(2019年度)で大賞を受賞したノンフィクション作品「発達障害に生まれて 自閉症児と母の17年」(中央公論新社、小児外科医・松永正訓著)のモデルにもなっている。オフィシャルブログ(http://www.tateishi-mitsuko.com/blog/)、Voicy(https://voicy.jp/channel/4272)。

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