「バス置き去り死」会見で批判…謝罪の場で「笑顔」を見せてしまう人がいるのはなぜ? 心理カウンセラーに聞く
静岡県で9月に起きた通園バス置き去り死亡事件で、記者会見に登壇した園幹部が笑顔を見せたり、笑ったりしたことに批判の声が上がりました。なぜ、謝罪すべき場で笑顔を見せてしまう人がいるのでしょうか。
静岡県牧之原市で9月に起きた通園バス置き去り死亡事件で、記者会見に登壇した園幹部(当時、以下同)が笑顔を見せたり、笑ったりしたことに批判の声が上がりました。園児が死亡したことを受けた謝罪会見の場で笑顔は不謹慎に思えますが、ネット上の反応を見ていると、謝罪の場で笑顔を見せてしまう人は意外といるようです。なぜ、謝罪すべき場で笑顔を見せてしまう人がいるのでしょうか。心理カウンセラーの小日向るり子さんに聞きました。
「共感能力」欠如の可能性
Q.謝罪すべき場で笑顔を見せる人がいるようです。なぜでしょうか。
小日向さん「大きく3つの要因が考えられると思います。1つ目は、謝罪する事象や相手を見下している場合。相手が怒っていればいるほど、小ばかにしたくなるという心理です。
2つ目は自己防衛。人間は恐怖や不安を感じた際に、口角を上げて笑顔の状態を作って、恐怖や不安を和らげようとすることがあります。これは無意識に行っていることがほとんどで、周囲から指摘されて気付く場合が多いです。
3つ目は『失笑恐怖症』という症状を持っているケースです。失笑恐怖症とは『笑ってはいけない』と思えば思うほど笑いたくなってしまうという強迫的な心理で、実際に笑ってしまうこともあります。症状が強くなると『笑うべきではない場面で笑ってしまったらどうしよう』といった予期不安にかられ、悲しい場や神妙な場を避けるようになってしまう人もいます。
この3つのほかに、そもそも謝罪すべきことだと認識していない人もいます。共感能力が欠けている人がこの傾向に当てはまることがあります」
Q.謝罪すべき場で笑顔というだけでなく、笑ってしまう人もいるようです。なぜでしょうか。
小日向さん「先ほど、考えられる要因を説明しました。園児置き去りの記者会見で笑った副園長がどの心理に近いのかは推測するしかありませんが、どのような心理的要因であっても実際に笑ってしまう人というのは一定数存在します。
笑われた相手は当然激怒しますが、笑った本人に悪意がない場合は、激怒されたことが恐怖体験となります。怒られたり非難されたりする体験が改善行動につながれば良いのですが、強迫観念になってしまうと、症状が繰り返し出てしまうことになります」
Q.謝罪すべき場で笑顔になったり、笑ったりしてしまう人は、多いのでしょうか。それとも限られた人なのでしょうか。
小日向さん「限られた人だと思います。園児置き去り事件で記者会見した園長、副園長の言動が強い非難を浴びたのも、通常の謝罪会見とは思えないような言動であったからです。もちろん事件の大きさもありますが、『そういうことってままあるよね』といった言動であれば、あそこまで非難を浴びることはなかったでしょう。その心理がどういった要因であれ、世間から常軌を逸している行動であるとみられたことは、あまりにもレアな対応であったからでしょう」
Q.自分が謝られる側で、笑顔を見せたり笑ったりする人に出くわした場合、どのような態度をすべきでしょうか。
小日向さん「相手に対して自分が教育的立場である場合は、指摘をして注意を促すべきですが、そういった立場にないのであれば、笑顔を見せたことに激怒することは得策とはいえないと思います。
小ばかにして笑っている人の場合、こちらが怒れば怒るほど、相手にとっては面白い展開になるだけですし、失笑恐怖症の場合は、恐怖体験となって症状の悪化につながることもあるからです。
また、そもそも謝罪すべきことだと認識していない人の場合、そこまで共感能力が欠如している相手には、諭しても無駄です。相手の反応に怒りを増長させるのでなく、俯瞰(ふかん)的に捉えて対応することを意識してください」
Q.「謝罪すべき場で笑顔になってしまうことがある」と、他人に指摘されたり、自分で気付いたりした場合、そうならないためにはどのようにすればよいでしょうか。
小日向さん「『笑う』という自分の行動に意識を向けるのではなく、被害を受けた相手の立場に意識を向けることに注力することが基本姿勢です。『笑ってはいけない』と強く思い過ぎる癖がある人は、その思考を紛らわすアイテムや動作を取り入れてみることもよいでしょう。笑わずにいられたという体験を重ねていけば、次第に意識しなくても笑顔が出なくなります。
その他、謝罪の場に理解してもらえる人がいれば、自分の状態を話して定期的に顔をチェックしてもらうなど、協力をお願いすることもアリだと思います」
(オトナンサー編集部)
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