果物の路上販売、もし「盗品」で、知らずに購入したら法的責任問われる? 弁護士が解説
駅前や住宅街の路上で販売されている果物が盗品で、事情を知らずに購入した人が、後でその事実を知った場合、購入者は法的責任を問われるのでしょうか。弁護士に聞きました。
駅前や住宅街の路上で果物を販売している人を見掛けることがあります。中には、スーパーや青果店よりも安い値段で販売するケースもあるようですが、ネット上では真偽不明ながら、「畑から盗んだ果物を売っている可能性がある」「買ってはいけない」などの声があります。仮に販売している果物が盗品で、事情を知らずに購入した人が後でその事実を知った場合、購入者は法的責任を問われる可能性があるのでしょうか。佐藤みのり法律事務所の佐藤みのり弁護士に聞きました。
「盗品かも…」で買ったら罪問われる恐れ
Q.そもそも盗品を売買した場合、どのような法的責任を問われるのでしょうか。
佐藤さん「盗品を売買した場合、刑法256条が定める『盗品譲り受け等罪』に問われる可能性があります。盗品譲り受け等罪で処罰される行為は、(1)盗品の無償譲り受け(2)運搬(3)保管(4)有償譲り受け(5)有償処分のあっせん(有償での盗品の処分を仲介すること)――です。(1)無償譲り受けの法定刑は『3年以下の懲役』、(2)から(5)の行為をした場合の法定刑は『10年以下の懲役および50万円以下の罰金』になります。
盗品と知りながら買い取れば、有償譲り受けに当たります。また、窃盗犯から頼まれて、盗品と知りながら運搬や保管をしたり、盗品を買ってくれる人を探して値段交渉をしたりした場合も、盗品譲り受け等罪に問われることになるでしょう。
なお、窃盗犯が自ら盗品を運搬・保管したり、有償処分したりしても、盗品譲り受け等罪に問われることはありません。窃盗犯が盗んだ後にこうした行為をすることは当然想定され、盗んだことについて窃盗罪で処罰すれば足りると考えられているためです。
窃盗犯以外の者が、盗品譲り受け等罪で処罰される行為をすれば、盗まれてしまった被害者が物を取り戻すことが困難になるばかりか、『窃盗をしても捕まりにくいし、もうかる』と考える人が増え、窃盗などの犯罪を誘発・助長することにもなってしまうでしょう。そこで、盗品譲り受け等罪の中でも特に(2)から(5)の行為について、窃盗罪(10年以下の懲役または50万円以下の罰金)よりも重い法定刑が定められています」
Q.では、盗品だと知りながら購入した場合と、盗品とは知らずに購入した場合とでは、法的責任に違いはあるのでしょうか。
佐藤さん「盗品譲り受け等罪は故意犯なので、盗品だと知りながら、先述の(1)から(5)の行為をした場合に成立します。従って、盗品と知りながら購入した場合には、盗品を有償で譲り受けたとして罪に問われる可能性がありますが、盗品とは知らずに購入した場合には、罪に問われることはありません。
ただし、故意の程度は、『間違いなく盗品である』という認識までは必要なく、『盗品かもしれないが、それでもいい』程度の認識で足ります。従って、後者の認識でも罪に問われる可能性はあるということになります」
Q.購入した物が盗品だと分かった場合、どのように対処すればよいのでしょうか。また、盗品だと知った後も黙って所持し続けた場合、どうなるのでしょうか。それぞれのケースについて、教えてください。
佐藤さん「購入した物が盗品だと分かった場合、道義的には、警察に通報するのが良いと思います。そうすることで、盗品の売買を繰り返している売り主の再犯を防いだり、被害者の救済につながったりする可能性があるからです。
ただし、盗品だと分かった後、黙って所持し続けたとしても、法的責任を問われることは考えにくいです。盗品を有償で譲り受ける罪の故意は、購入時点で必要になるため、購入後に盗品だと分かったとしても、処罰されることはありません。
また、駅前や路上で果物売りの人から果物を購入する場合、果物売りが(果物の所有権を持っていない)無権利者であると気付けなくても仕方がない状況といえるでしょう。そのため、即時取得(民法192条)が成立し、購入者は、買った時点で、果物の権利を取得できる場合がほとんどだと考えられます。
なお、購入した果物が盗品だった場合、被害者(農家など)は、盗難のときから2年間、占有者(購入者)に対してその物の回復を請求する権利がありますが(民法193条)、占有者(購入者)が、果物売りなどの商人から、盗品であると知らずに買い受けた場合には、被害者は占有者(購入者)が支払った代金を弁償しなければ返してもらえないルールになっています(民法194条)。
従って、もし被害者から果物の返還を求められたとしたら、代金の弁償などについて被害者と相談の上、返還に応じる必要はあります」
Q.購入して食べてしまった後、盗品だと知った場合はどうすべきでしょうか。
佐藤さん「盗品の現物がなくなってしまうと、警察に伝えても立件してもらえない可能性が高いですが、気になる場合には、警察に通報するのも一つの方法でしょう」
(オトナンサー編集部)
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