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上司の呼び方は「役職名」と「さん」付け、どちらが多い? 2000人に聞いてみた

社労士「垣根、低くなったのでは?」

 アンケート結果について、社会保険労務士の木村政美さんに話を聞きました。

Q.アンケートの結果を見て、どのように思われますか。

木村さん「社内で上司のことを『さん』付けで呼ぶ割合が『役職名』で呼ぶ割合よりも高いこと、また上司の呼び方について『どちらの呼び方でもよい』と考えている人の割合が高いことについて、以前に比べて、上司と部下との間での垣根が低くなった感じがあります。上司が部下との心理的な距離を縮め、業務を円滑に進めるために、『さん』付けでOKにしているのかもしれません。

また、『さん』で呼ぶことについて、どの役職者まで『さん』付けができるのか気になりました。社長以下全員が『さん』付けで呼び合っているのか、社長、専務などの役員は役職名で呼び、直属の上司にはさん付けしているのか、企業によって違うと思います。あらためて調べてみると、面白いかもしれません」

Q.企業という組織の観点から、上司を役職名で呼ぶメリット、デメリットは。

木村さん「企業組織の運営方法には大きく分けて『トップダウン型組織』と『ボトムアップ型組織』の2つがあります。トップダウン型組織(ピラミッド型組織)は、トップ(社長)が明確な意思決定や企業方針を出し、部長、課長、係長などの管理職を経て一般従業員に業務指示がされる方法です。一方のボトムアップ型組織(フラット型組織)は、現場に携わる従業員が出したアイデアや意見などを、上司や経営層が集約することで組織を動かす方式です。

上司を役職名で呼ぶことは、特にトップダウン型組織に向いているといえます。そのメリットは、企業方針・指示命令などが上司から部下に対してなされるので、伝達が徹底し、組織統制がしやすくなることが挙げられます。また役職名で呼ぶことにより、本人に自覚を持たせ、その役職に求められる職務の遂行を促すことができます。デメリットは、部下からすると、堅苦しいとか自由に意見が言えないなど、上司との間に心理的な距離感が生まれやすくなります」

Q.企業という組織の観点から、上司を「さん」付けで呼ぶメリット、デメリットは。

木村さん「上司を『さん』付けで呼ぶメリットとデメリットは、先ほどの回答と逆になります。メリットは、上司と部下がお互いに『さん』で呼び合うことにより、心理的距離感が縮まるので、フラットな人間関係が構築できます。部下が上司に対して相談や提案、意見などがしやすくなることで職場の活性化につながり、新しいアイデアが生まれるなど企業経営にプラスの効果が期待できます。

デメリットは、お互いが気安くなりすぎてしまうと、部下が上司の指示を聞かなくなるなど企業組織の統制を取ることが難しくなること、また反対に上司も管理職の自覚が薄れ、部下に指示を出さないなど役職本来の職務を全うしなくなることがあります」

Q.上司の呼び方として、役職名と「さん」付け、どちらを選ぶべきなのでしょうか。

木村さん「上司の呼び方として、役職名と『さん』付け、どちらを選ぶべきかは、次の基準で考えます」

(1)他の従業員が上司のことをどう呼んでいるか?
役職名で呼んでいる場合は役職名で、「さん」付けで呼んでいる場合は「さん」で呼びます。呼び方は自分の判断で決めるのではなく、企業のルールに合わせるようにします。特に周りが役職名で呼んでいるのに自分だけ「さん」付けにすると、職場の統制が乱れることで上司や他のメンバーに嫌がられるとか、役職名には敬称の意味があるので、それを省くと上司から無礼だと思われることがあるので注意しましょう。新入社員として勤務するときに上司をどう呼べばいいか迷うときは、職場の先輩に尋ねるといいでしょう。

(2)上司から「役職名ではなく『さん』で呼んで欲しい」と言われた場合
懇親会などの業務外の時間や、プライベートで付き合う際に、堅苦しさを避けるために上司の方から提案された場合は、「さん」付けで呼んでもかまいません。

Q.なぜ、歴史の浅い企業やIT系企業では「さん」付けが多いのでしょうか。今後は、役職名ではなく、「さん」付けの呼び方がスタンダードになっていくのでしょうか。

木村さん「歴史の浅い企業やIT系の企業で上司のことを『さん』で呼ぶことが多いのは、次の理由が考えられます。

(1)従業員の平均年齢が若いので堅苦しい雰囲気にしたくない
(2)社長の年齢も30代、40代が多く、社員との年齢差が少ない
(3)役職名が「部長」「課長」ではなく「〇〇マネージャー」「エグゼクティブ〇〇」「チーフ○○」など片仮名表記や特殊な名称になっていることがあるため呼びにくい
(4)企業組織が発展途中のため、新しい役職ができたり役職名が変わったりすることが多く、その度に呼び方を変えるのは煩雑である
(5)社内の肩書にとらわれずに、従業員が一丸となって業績の向上を目指すフラットな組織形態にしている
(6)役職者の数自体が少ない

などが挙げられます。一般的な傾向としては、社長の交代による組織体制の変化や、歴史の浅い企業やIT系企業が増加するに伴い、『さん』で呼ぶことが増えると思われます。しかし、上司の呼び方は役職名でも『さん』呼びでも、それぞれメリットとデメリットがあるので、企業の方針や組織づくりを行う上での考え方を優先して、選択すればよいでしょう」

※この記事は、オトナンサーがYahoo!ニュースを通じて実施したアンケートの結果を活用しています。アンケートは6月10日、全国のYahoo! JAPANユーザーのうち、「企業に勤めている人」を対象に行い、2000人から有効回答を得ました。年代は30代18%、40代35%、50代29%が多く、男女比はほぼ7対3。勤務形態としては、正社員が67%、パート・アルバイトが19%、契約・派遣社員などが14%でした。
※アンケートのパーセンテージは小数点第2位を四捨五入しており、合計が100%にならない場合があります。

(オトナンサー編集部)

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木村政美(きむら・まさみ)

行政書士、社会保険労務士、ファイナンシャルプランナー

1963年生まれ。専門学校卒業後、旅行会社、セミナー運営会社、生命保険会社営業職などを経て、2004年に「きむらオフィス」開業。近年は特にコンサルティング、講師、執筆活動に力を入れており、講師実績は延べ700件以上(2019年現在)。演題は労務管理全般、「士業のための講師術」など。きむらオフィス(http://kimura-office.p-kit.com/)。

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