オトナンサー|オトナの教養エンタメバラエティー

マスク着ける? 着けない? コロナ対策、場面ごとに再確認

新型コロナウイルス感染症について、国が基本的対処方針を5月23日に改めました。夏場を控えたマスクの着用について、適切な場面を再確認しておきましょう。

マスクが必要な場面は?
マスクが必要な場面は?

 新型コロナウイルス感染症について、国が基本的対処方針を5月23日に改めました。夏場を控え、マスクの着用について、屋外での着用を大幅に緩和するなどの内容が中心ですが、具体的にどのように変わり、今後はどのような点に気を付ければよいのでしょうか。医療ジャーナリストの森まどかさんに聞きました。

夏場は熱中症に注意を

Q.「屋外におけるマスクの着用」について、これまでと変わった点を教えてください。

森さん「マスクの着用に関しては、法律等によって定められているものではなく、国による一般的な基準が更新されたというのが、今回の変更です。

国はこれまで基本的な感染対策の一つとして『マスクの着用(不織布マスクを推奨)』を示してきましたが、5月23日に『新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針』が変更され、マスクの着用については『屋内か、屋外か』『身体的距離』『会話の有無』による、場面に応じた適切な着用について詳細な記述を加えています。

これまでの感染拡大期の経験や、国内外のさまざまな研究等の知見を踏まえ、『必要ない』場面を具体的に示すとともに、一律にマスク着用を求めることよりも、これまでも指摘があった、夏場の熱中症や子どものマスク着用による事故、体調変化を防ぐことの大切さを盛り込んだ内容となりました。

屋外では、他者との身体的距離が確保できる場合(2メートル以上が目安)、他者との距離が確保できなくても会話がほとんどない場面であれば、マスク着用の必要はないとしています。

人通りの少ない場所、散歩やランニングなどで人とすれ違う場面等では、必要ないという見解です。特に夏場は熱中症予防という観点からも、『外すことを推奨する』と示していて、これまでとの考え方の違いが明白です」

Q.「屋内におけるマスクの着用」について、これまでと変わった点を教えてください。

森さん「屋内であっても、身体的距離が確保でき会話をほとんど行わない場合は、マスクは必要ないとの見解を示しています。例えば、図書館での読書の際は、隣の席との距離が確保できれば必要ないということになります。会話をする場合も、身体的距離が確保でき十分な換気等の感染対策ができていれば、マスクを外すことも問題ないと示しています。

また、屋内屋外を問わず『本人の意に反してマスクの着脱を無理強いすることにならないよう、丁寧に周知する』という内容が追加されました」

Q.感染経路のポイントや、感染対策の基本が変わったのでしょうか。

森さん「変わっていません。せき、くしゃみ、会話等のときに排出される飛沫(ひまつ)やエアロゾルの吸入、接触感染等が感染経路と考えられ、現在日本で主流となっているオミクロン株BA.2系統においては、飛沫や換気の悪い場所におけるエアロゾルによる感染が多いと考えられています。

基本的な感染対策として、引き続き、『3密(密閉空間、密集場所、密接場面)』を避けること、人と人との身体的距離の確保、手洗いや消毒による手指衛生、場面に応じた適切なマスク着用、換気などが大切と考えられています」

Q.ワクチンの3回目接種が進んでいます。3回目の接種を受けた場合でも、感染対策は必要なのでしょうか。

森さん「オミクロン株に対するワクチン初回接種(1回目、2回目)の効果は、デルタ株と比較すると低下するものの、追加接種(3回目接種)で一時的に回復すると考えられています。

期待される主な効果は『発症』や『重症化』を防ぐ効果ですが、3回目の接種を受けた人が未接種の人や2回接種した人と比較して感染しにくいことも、厚生労働省が公表している『ワクチン接種回数別にみた新規罹患率の比較』によって明らかです。

しかし、それらの効果がすべての人に当てはまるわけではないため、基本的な感染対策は必要になります。

また、3回目の接種をした人が周囲の人への感染をどれだけ防げるかという効果は、報告はあるものの、まだ確かなことは分かっていません。気付かないうちに周囲へ感染を広げるといったことを防ぐためにも、ワクチン接種と並行して、基本的な感染対策が大切になります。

5月30日現在で3回目接種完了者は全人口の58.8%、65歳以上は89.0%になりました。感染状況も医療提供体制も落ち着いている現在、一律に過度な感染対策を実施することは必要ないと思いますが、基本的な対策を継続することは、基本的対処方針でも求められています」

Q.飲食店での感染防止策(客の側)や、旅行・出張、出勤などの注意点、その他、今後の感染対策の心構えを教えてください。

森さん「会食や旅行を楽しめる状況が戻りつつありますが、感染防止策の基本的な考え方はこれまでと大きく変わりません。複数で会話をしながら飲食する場合は、お店の換気ができているかを気にするようにし、大声で騒ぐなどのリスクが高まる行為は避けましょう。

旅行や出張、出勤といった際に混雑した電車などを利用する時や、人混みの中を歩く時等は、マスクの着用が推奨されています。また、普段から自分の健康状態を把握するようにし、少しでも体調が悪い時には出勤や外出を控えること、新型コロナウイルス感染を疑う症状を自覚した場合は、出勤せずに発熱外来等を受診することも大切です」

(オトナンサー編集部)

1 2

森まどか(もり・まどか)

医療ジャーナリスト、キャスター

幼少の頃より、医院を開業する父や祖父を通して「地域に暮らす人たちのための医療」を身近に感じながら育つ。医療職には進まず、学習院大学法学部政治学科を卒業。2000年より、医療・健康・介護を専門とする放送局のキャスターとして、現場取材、医師、コメディカル、厚生労働省担当官との対談など数多くの医療番組に出演。医療コンテンツの企画・プロデュース、シンポジウムのコーディネーターなど幅広く活動している。自身が症例数の少ない病気で手術、長期入院をした経験から、「患者の視点」を大切に医師と患者の懸け橋となるような医療情報の発信を目指している。日本医学ジャーナリスト協会正会員、ピンクリボンアドバイザー。

コメント