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「過保護」と「過干渉」はどう違う? 親子関係のパターンで知る両者の特徴と脱却方法

子育てにおける「過保護」と「過干渉」の違いを正しく説明できますか。似た言葉として混同されやすい両者の違いや、それぞれの特徴について、子育ての専門家に聞きました。

子どもの自立にも影響が?
子どもの自立にも影響が?

 親が、わが子を必要以上に甘やかすことを指す「過保護」という言葉があります。一般的にはネガティブなイメージの言葉として使われることが多いですが、一方で、似た言葉として「過干渉」という言葉も存在します。この両者について、「同じこと? 違うこと?」「正しく説明できる自信がない」「どちらにもネガティブな印象があるけど…」など、さまざまな声があるようです。

 子育てにおける「過保護」と「過干渉」の違い、それぞれにみられる特徴と問題点について、子育てアドバイザーの佐藤めぐみさんに聞きました。

「尊重し過ぎる」のが過保護、「無視する」のが過干渉

Q.まず、子育てにおける「過保護」とは何なのかを教えてください。

佐藤さん「『過保護』とは、親が子どものことを過剰に保護することを指します。パターンとしては次のようなものが挙げられます」

・子どもの身の回りの面倒を、年齢相応以上にやってあげる(例:中学生なのに親が学校の持ち物を準備する)
・子どもが不快な感情を持たないように奔走する(例:子どもが学校の不満を漏らしたら、すぐにクレームを入れる)
・子どもの主張を過度に尊重する(例:“子どものやりたいようにさせてあげること”をよしとする)
・子どもが失敗しそうなときに、それを見越して親が手助けする(例:夏休みの宿題が終わらないので親が代わりにやる)

Q.次に、子育てにおける「過干渉」とは何でしょうか。

佐藤さん「『過干渉』とは、子どもの身の回りのことに、過剰に干渉することを指します。パターンとしては次の通りです」

・子ども自身で解決できることに首を突っ込む(例:友達とのささいなけんかにいちいち立ち入る)
・子どもの日々、ひいては人生をコントロールしようとする(例:「◯◯した方がいい」「◯◯ちゃんのため」と親の意思を刷り込む)
・親自身の理想や期待を強く押し付ける(例:進路など、子どもの人生に大きく関わることを親が決めてしまう)

Q.つまり、「過保護」と「過干渉」の違いはどこにあるのでしょうか。

佐藤さん「子どもの意思や意見がどう扱われているか、という点で違いがあります。分かりやすくいえば、『尊重し過ぎる』のが過保護、『無視する』のが過干渉といえるでしょう。

過保護の場合、親は子どものことを、とても繊細なガラス細工に触れるかのように接します。傷つけないよう大事に大事に扱ってくれるので、その子は実社会を見ぬまま成長することになります。しかし、実際に社会に出れば、思い通りにならないばかりか、我慢や苦労、努力が求められることも多いのが現実なので、そこで自らの脆弱(ぜいじゃく)さを感じてしまうこともあるでしょう。

また過干渉では、親が子どもの日々の出来事に大きく意見するので、子どもは自分で考える機会が減り、受け身の人生になりがちです。干渉の仕方として、親が『ああすべきだ、こうすべきだ』と見て分かる形で干渉することもありますが、ソフトに子どもの行動をコントロールしていることもよくあります。親の願望を子どもの人生に託し、『△△した方が◯◯ちゃんのためだよ』と悪気なく干渉していくのがそれに当たります」

Q.「過保護」な親、「過干渉」な親について、それぞれの特徴はありますか。

佐藤さん「まず、過保護な親の特徴としては、子どもが持つ“負の感情”に弱いことが挙げられます。わが子が嫌な思いをすることが耐えがたく、本来であれば、年齢的に我慢して乗り越えさせるべきことでも、親がそれを先回りしてお膳立てしたり、肩代わりして責任を取ったりしてしまうのです。『そんな状況になったら、あの子がかわいそうだ』という思いが出やすく、それにより保護に回ってしまうといえます。

一方、過干渉な親の特徴としては、自分の意見や意思を優先させてしまうことが挙げられます。子どもの人生でありながら、自らの『こうあるべきだ』が強く、それが干渉という形で出てしまいます。また中には、『子どもの出来が親の出来につながる』や『子どもの失態や過ちが自らの評価に影響する』のような思いを抱えていて、『自分の思っている理想の子』にしようと干渉し過ぎてしまう場合もあるようです」

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佐藤めぐみ(さとう・めぐみ)

公認心理師(児童心理専門)

ポジティブ育児研究所代表。育児相談室「ポジカフェ」主宰。英レスター大学大学院修士号(MSc)取得。オランダ心理学会(NIP)認定心理士。現在は、ポジティブ育児研究所でのママ向けの心理学講座、育児相談室でのカウンセリング、メディアや企業への執筆活動などを通じ、子育て心理学でママをサポートする活動をしている。著書に「子育て心理学のプロが教える 輝くママの習慣」(あさ出版)など。All About「子育て」ガイド(https://allabout.co.jp/gm/gp/1109/)を務めている。公式サイト(https://megumi-sato.com/)。

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