「イライラはカルシウム不足から?」「牛乳で解消?」の真偽を医師に聞く
俗に「カルシウムが足りないとイライラする」、「イライラするとき、牛乳がいい」というのは本当なのでしょうか。医師に聞きました。

オミクロン株の流行などで飲食店への時短要請が再開し、ストレス解消ができずに“イライラ”してしまう人もいるかと思います。そういう人に「カルシウムが足りてないんじゃない?」「牛乳を飲んだら?」という人がいます。俗に「カルシウムが足りないとイライラする」といわれますが本当でしょうか。内科医の市原由美江さんに聞きました。
カルシウムは関係なし
Q.「カルシウムが足りないとイライラする」というのは事実でしょうか。
市原さん「事実ではありません。カルシウムの99%は骨や歯に存在し、1%は血液中や細胞内に存在します。血液中のカルシウムは神経や筋肉の動きを調整したり、血液の凝固作用を促進したりする働きがありますが、そもそも、血液中のカルシウムが減ると代わりに骨が溶け出してカルシウム濃度を一定に保つため、血液中のカルシウムが減ることは通常ありません。
つまり、血液中のカルシウムが不足するということ自体が、通常は起きないため、『カルシウム不足が原因でイライラする』ということもないのです」
Q.なぜ、「カルシウムが足りないとイライラする」という誤解が広まったのでしょうか。
市原さん「先述した通り、カルシウムは神経の伝達に関係するため、『不足すると精神的に不安定になり、イライラする』と考えられたのではないでしょうか」
Q.では、カルシウムとイライラは全く関係ないのでしょうか。例えば、寝る前に、温めた牛乳を飲むとよく眠れるといわれますが、牛乳にはカルシウムが多く含まれています。
市原さん「確かに、牛乳にはイライラを抑制する働きがあります。しかし、それは牛乳がカルシウムを多く含むためではなく、食品に含まれる必須アミノ酸のトリプトファンが多く含まれているからです。別名『幸せホルモン』と呼ばれるセロトニンには、精神を安定させる働きがあり、このセロトニンの原料となるのがトリプトファンです。牛乳にはトリプトファンが多く入っているため、イライラを解消・予防する効果が期待できるのです」
Q.イライラを解消するのに効果的な食べ物を教えてください。
市原さん「先述のトリプトファンは肉や魚、乳製品、バナナなどに多く含まれているため、これらの食品を積極的に取り、セロトニンの生成を促進するために日光浴をしたり、お風呂にゆっくりと入ってリラックスしたりすると効果的です」
Q.イライラ解消には無関係ということですが、カルシウムが体に与えるよい影響と、摂取に適した食材を教えてください。
市原さん「カルシウムが慢性的に不足すると骨粗しょう症のリスクが上がりますので、積極的にカルシウムが含まれる食品を摂取するといいでしょう。カルシウムは乳製品や大豆製品、小魚や野菜などに多く含まれます。魚やキノコなどに含まれるビタミンDを一緒に摂取するとカルシウムの吸収率が上がって効率的です」
(オトナンサー編集部)
コメント