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眠気や疲労に「カフェイン」、本当に効果ある? 量は多ければ多いほどいい?

眠気解消や疲労回復には、コーヒーなどに含まれる「カフェイン」が効果的といわれていますが、眠気や疲労の度合いが激しいときでも、効果は期待できるのでしょうか。医師に聞きました。

カフェインを過剰に摂取したら…?
カフェインを過剰に摂取したら…?

 眠気解消や疲労回復には、コーヒーなどに含まれる「カフェイン」が効果的といわれています。出勤前、コーヒーを飲むのが日課になっている人も多いのではないでしょうか。ところで、眠気や疲労の度合いが激しいときでも、カフェインを含む飲み物・食べ物の摂取によって、眠気や疲労を軽減することは可能なのでしょうか。また、カフェインを大量に摂取すると、体にどのような影響があるのでしょうか。

 うるおい皮ふ科クリニック(千葉県松戸市)院長で、神経系の研究にも詳しい皮膚科医・アレルギー専門医の豊田雅彦さんに聞きました。

多く飲んでも効果変わらず

Q.まず、カフェインを多く含む飲み物・食べ物について教えてください。

豊田さん「カフェインは主に、コーヒーやお茶(玉露や煎茶、ほうじ茶、紅茶、ウーロン茶、緑茶など)といった飲料に多く含まれています。また、近年、コンビニなどで販売されるようになった『エナジードリンク』と呼ばれる飲み物にも多く含まれており、カフェインの含有量がコーヒーやお茶を超える製品も少なくありません。このほか、カカオ豆から作られるチョコレートや、煎茶や紅茶の茶葉を使ったお菓子などの食べ物にも多く含まれています」

Q.カフェインは眠気覚ましや疲労回復に効果があるといわれていますが、本当にそのような効果はあるのでしょうか。

豊田さん「カフェインは眠気覚ましや疲労回復に効果的だと考えられています。飲み物や食べ物から摂取されたカフェインは血液に溶け込んだ後、眠気を誘う物質(アデノシン)の働きを阻害し、神経を興奮させます(覚醒効果を発揮)。カフェインの持続効果は約4時間です。

一般的に、疲労を回復するにはタンパク質、脂質、炭水化物、ビタミン類などの栄養素や質の高い睡眠が求められますが、加えて、興奮時・集中時に優位になる交感神経系の働き、リラックス時に優位になる副交感神経系の働きを高めることも有効です。カフェインは自律神経系に強く働きかけるので、エネルギーを消費し、代謝を上げる効果や交感神経系の働きを高める効果があり、運動中の『疲労感』を軽減させる効果や脂肪燃焼効果があると考えられています。

また、カフェインを含むコーヒーや緑茶の香りは精神的リラックスをもたらします。人の脳は心地よい香りを嗅ぐとそれだけで幸福と感じ、気持ちが落ち着くからです。匂いの感覚(臭覚)は人間の脳の中枢部である大脳辺縁系という部位で処理されますが、ここでは情緒や記憶、意欲などをコントロールしているため、香りによるアロマ効果は脳に情動・感情などに好ましい癒やしの影響を及ぼすと考えられます」

Q.眠いときや疲れたとき、コーヒーやエナジードリンクをつい多く飲みたくなりますが、眠気や疲労の度合いが激しいときでも、カフェインを摂取することで、眠気や疲労を軽減させることはできるのでしょうか。カフェインの摂取量と眠気・疲労の軽減効果との相関関係について、教えてください。

豊田さん「結論から言うと、カフェインの摂取量とカフェインがもたらす効果(眠気や疲労の軽減など)との関連を証明する科学的データは現時点では存在しません。つまり、眠気や疲労の度合いが激しいときにカフェインを多く摂取すれば、眠気や疲労の軽減効果が高まるという根拠はなく、むしろ、カフェインを過剰に摂取すると、体に悪影響を及ぼす恐れがあります」

Q.カフェインを過剰に摂取した場合、どのような影響があるのでしょうか。

豊田さん「例えば、カフェインを一度に過剰に摂取した場合、急性カフェイン中毒を発症する可能性があります。その結果、中枢神経系の刺激による目まいや心拍数の増加、興奮、不安、震え、不眠症、下痢、吐き気などの健康被害をもたらすことがあります。

実際、救急搬送される重症のカフェイン中毒では中枢神経の刺激により、イライラしたり、じっと横になっていられなかったりするほどの興奮状態となり、激しい吐き気に襲われ、嘔吐(おうと)を繰り返すケースがあります。また、心機能が高まり、心臓がドキドキすることがあります。最も危険なのは不整脈で、心停止に至ることもあります。また、カフェインを長期的に多く摂取した場合、個人差はあるものの、高血圧リスクが高くなる可能性があります。

妊娠中の女性が高濃度のカフェインを摂取した場合、血管を収縮させるため、赤ちゃんに運ばれる栄養や酸素が少なくなり、流産や低体重の新生児が生まれるリスクを招くといわれています。子どもはカフェインの感受性が高いので、授乳中の女性が過剰摂取した場合、母乳を通じて摂取したカフェインにより、子どもが何らかの悪影響を受ける可能性があるとされています」

Q.カフェインの1日の摂取量の目安について、教えてください。

豊田さん「『カフェインに対する感受性は個人差が大きい』として、カフェインの1日の上限量は日本国内では定められていません。国外の機関の中には、健康に悪影響を及ぼさないとされるカフェインの摂取量を示しているケースもありますが、国や機関によってばらつきがあります。

例えば、ヨーロッパの公的機関である『欧州食品安全機関(EFSA)』の研究では、健康な大人の場合、カフェインの1日の最大摂取量は400ミリグラム以下、1回の摂取量は体重1キログラム当たり3ミリグラム以下を推奨しています。カナダ保健省(HC)も、健康な大人の1日の最大摂取量は400ミリグラム(コーヒーは、237ミリリットルのカップで3杯まで)未満と推奨しています。

米国食品医薬品局(FDA)は、健康な大人の場合、1日当たり400ミリグラム(コーヒーの場合、カップで4~5杯程度)までであれば、カフェインによる健康への危険な悪影響はないとしています」

【表】カフェイン「これ以上は危険」の目安は? 各国の機関が示す最大摂取量

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豊田雅彦(とよだ・まさひこ)

医師(皮膚科・美容皮膚科・アレルギー科)、医学博士

1964年長野県生まれ。富山医科薬科大学(現・富山大学)医学部卒業。1994年から2年半、米国・ボストン大学医学皮膚科学教室に留学し、皮膚老化や神経など多彩な研究を行う。2002年と2004年の国際皮膚科学会で、それぞれ臨床部門と研究部門の最優秀賞を単独受賞。2005年、うるおい皮ふ科クリニックを千葉県松戸市で開業。これまでに2000以上の医学論文や医学専門書を執筆し、国内外で年間最多250以上の講演会、学会発表、保健所指導を行う。かゆみをなくすことをライフワークに掲げ、患者さんが希望を持てる診療に日々尽力する、皮膚病・かゆみのスペシャリスト。うるおい皮ふ科クリニック(http://www.uruoihifuka.com/)。

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