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この時季はつらい…「水虫」は病気なのに、どうして“虫”と呼ぶ?

足の裏がかゆくなったり、白くふやけてしまったりする皮膚病は「水虫」ですが、病気なのに“虫”の名前のように呼びます。どうしてでしょうか。

「水虫」という呼称の理由は?
「水虫」という呼称の理由は?

 梅雨など高温多湿な時季になると「水虫」になる人が増えるといわれています。この時季になると、足の裏がかゆくなったり、白くふやけてしまったりする人もいるのではないでしょうか。こうした症状が出たとき、ほとんどの人は「水虫になった」と言いますが、不思議なのが病気の名前なのに水虫という、まるで“虫”の名前のように呼ぶことです。一般的には、病気になれば、「○○症」「○○病」と呼ぶことがほとんどですが、なぜ、水虫は虫のような呼び方をするのでしょうか。

 うるおい皮ふ科クリニック(千葉県松戸市)の豊田雅彦院長に聞きました。

原因はカビ「白癬菌」

Q.水虫の正式名称は存在しますか。存在する場合、何と呼ばれていますか。

豊田さん「水虫は主に『白癬菌(はくせんきん)』というカビが原因で起こる感染症です。正式名称は、足に症状が出ると『足白癬(あしはくせん)』、爪に出ると『爪白癬(つめはくせん)』とそれぞれ呼びます」

Q.なぜ、水虫は虫の一種のような呼び方をするのでしょうか。由来を教えてください。

豊田さん「水虫という名前が登場したのは江戸時代のことです。田植えなどの田んぼ仕事の季節になると、当時は、足に強いかゆみがある水疱(すいほう)のできる人が数多くいました。現在のように優れた洗浄剤もなく、農作業後に足を十分に清潔にすることもできなかった時代です。誰もかゆさの原因が分かりませんでした。

医学が発達している時代でもなかったので、カビが悪さをしているとは思いもせず、水の中にいる正体不明の虫に刺されたと思い込んでいたようです。これが水虫と呼ばれ始めた由来です」

Q.現在は水虫の原因が分かっていますが、世の中では一般に正式名称ではなく、水虫と呼ばれ続けています。なぜでしょうか。

豊田さん「正式名称の足白癬、爪白癬は読み方や漢字が難しいです。一方で、水虫は俗称ではありますが呼びやすく、なじみやすいために呼ばれ続けているのではないでしょうか。『白癬って何?』という人はいても、『水虫って何?』という人はまれだと思います。水虫という呼び方がすっかり浸透しているようです」

Q.皮膚科医も、診察時などでも日常的に水虫と呼んでいるのでしょうか。

豊田さん「当然ですが、患者さんのカルテには正式病名で足白癬、爪白癬と記載します。しかし、患者さんに病気を説明するときには『水虫ですね』などと俗称で話すことが多いです。患者さんもその方が理解しやすいようです」

Q.水虫以外にも「○○虫」のように虫の呼び方をする皮膚病はありますか。

豊田さん「あります。水虫と同じ白癬菌による皮膚病ですが、かゆみなどの症状が股間部に生じたものを『陰金田虫(いんきんたむし)』と呼び、赤みのある発疹が特徴です。また、胴体などに生じた水虫で、陰金田虫同様に赤みのある発疹のものを『銭田虫(ぜにたむし)』と呼びます。

虫の名前が病名に付いている皮膚病としては、その他にも『蜂窩織炎(ほうかしきえん)』の『ハチ』や『クモ状血管腫(くもじょうけっかんしゅ)』の『クモ』、『蝶形紅斑(ちょうけいこうはん)』の『チョウ』などがあります。また、『さめ肌』『うおのめ』『白なまず』『黒なまず』など、虫以外の生物が含まれる皮膚病名もあります」

Q.水虫は突然なるものですか。初めて水虫になった人は治療をしたり、周囲にうつしたりしないために、まず、個人でどのような対応をすればよいですか。

豊田さん「水虫は突然なりますが、それは皮膚症状の発症やかゆみを感じるのが突然という意味です。白癬菌が皮膚内に侵入し、感染するまで最低1~2日かかります。しかし、足の皮膚に傷口などがある場合は、12時間で感染するというデータもあります。

このことから、白癬菌が皮膚表面に付着しても2日以内に足をきれいに洗えば、基本的には感染を防ぐことができます。ただ、ゴシゴシと力を入れて洗って皮膚に傷が付くと、かえって、足白癬になりやすくなるので注意が必要です。

もし、かゆみなどの症状が続き、水虫だと思ったときは皮膚科を受診し、水虫の確定診断を受けてから、治療に入ることが最も重要です。自己診断で水虫の市販薬を使用し、皮膚症状が改善しなかったり、薬剤でかぶれて来院したりする人が後を絶ちません。

完治するには3~6カ月かかります。完治する前に治療をやめると再発し、翌年もまた、水虫に悩まされる可能性が高いので、医師から完治の許可が出るまで治療を根気よく続ける必要があります。

また、水虫になると、それを他人に移す可能性が高いことを自覚することも大切です。家庭内では(1)脱衣所の足ふきマットやスリッパを共用しない(2)入浴後のバスタオルは必ず個人使用とする(3)小まめに掃除機をかけて白癬菌を吸い取る――などの対策を心掛けてください」

(オトナンサー編集部)

豊田雅彦(とよだ・まさひこ)

医師(皮膚科・美容皮膚科・アレルギー科)、医学博士

1964年長野県生まれ。富山医科薬科大学(現・富山大学)医学部卒業。1994年から2年半、米国・ボストン大学医学皮膚科学教室に留学し、皮膚老化や神経など多彩な研究を行う。2002年と2004年の国際皮膚科学会で、それぞれ臨床部門と研究部門の最優秀賞を単独受賞。2005年、うるおい皮ふ科クリニックを千葉県松戸市で開業。これまでに2000以上の医学論文や医学専門書を執筆し、国内外で年間最多250以上の講演会、学会発表、保健所指導を行う。かゆみをなくすことをライフワークに掲げ、患者さんが希望を持てる診療に日々尽力する、皮膚病・かゆみのスペシャリスト。うるおい皮ふ科クリニック(http://www.uruoihifuka.com/)。

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