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オミクロン株懸念も…今年の「忘年会」、開くなら注意すべきことは? 店選び、幹事の役割…

例年なら、「忘年会はいつ、どこでやろうか?」と話題になるシーズンですが、コロナ禍前のように会社の忘年会を開いてもいいものでしょうか。もしやるとすれば、どんな点に注意すべきでしょうか。

コロナ禍での忘年会、どうする?
コロナ禍での忘年会、どうする?

 新型コロナウイルスの国内感染状況は落ち着いているものの、新たな変異ウイルス「オミクロン株」の影響が懸念される状況で12月を迎えました。例年であれば、「忘年会はいつ、どこでやろうか?」と話題になるシーズンですが、コロナ禍前のように会社の忘年会を開いてもいいものでしょうか。もしやるとすれば、どんな点に注意すべきなのでしょうか。医療ジャーナリストの森まどかさんに聞きました。

参加者の体調確認を

Q.多数派ではないものの「今年は忘年会をする」という会社があるようです。新型コロナウイルスの感染状況や今後の見通しを踏まえて、忘年会はやるべきか、見合わせるべきか、あるいはオンラインを考えるべきなのかなどについて教えてください。

森さん「日本は現在、新型コロナウイルスの新規陽性確認数が少ない状態が継続し、一般医療が安定的に確保されるとともに、新型コロナにも医療が問題なく対応できている状況です。11月28日時点の全国の1日あたりの新規陽性確認者の1週間平均は91人で100人を下回り、“第5波”のピークだった8月に1日2万5000人を超えていたことを思えば、感染は一定程度に収まっていて、飲食を含む日常生活上の制限が大幅に緩和されていることは当然とも言えます。

しかし、猛威を振るった『デルタ株』による感染拡大がなぜ、日本で急激に減少したのかは、ワクチン接種の進展だけでは説明がつかない一面もあり、諸外国の感染再拡大の状況を見ると、76.7%(11月29日現在)がワクチン2回接種を完了している日本でも、引き続き、感染対策の徹底と感染リスクが高い場面を避けることが必要と考えられます。また、感染性や広がりやすさがデルタ株以上に高いのではないかと言われているオミクロン株の感染が世界に広がり始め、日本でも空港検疫で確認され、警戒感が強まっています。

そうした現状を踏まえると、忘年会は“ウィズコロナ”を意識した生活様式の範囲にとどめることが望ましいのではないでしょうか。つまり、会社や部署のメンバーが大人数、一堂に集まって飲食を共にするという従来型の忘年会は、感染状況が改善している現在でも、リスクが高い行為であることに変わりありません。東京商工リサーチが実施したアンケート(有効回答8174社)では、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置に関係なく、忘年会、新年会を『開催しない』と回答した企業が70.4%(5760社)でした。

多くの企業で『大規模な忘年会の開催はまだ難しい』と判断しているようです。『忘年会は開催したい』という意向があって、全員個別のオンライン忘年会に抵抗があるのであれば、例えば、分散して少人数グループで集まり、それをオンラインでつなぐなどの工夫もリスクを抑えるための一つの方法と思います」

Q.では、忘年会をすると仮定して、参加者の範囲や店・料理の選定などについて、どんな点に注意すべきでしょうか。

森さん「参加の前提として、参加者自身の体調に問題がないことと、発熱などの体調異常がある人や新型コロナウイルスに感染した、あるいは感染の疑いがある人と接触していないことが必須です。参加者の同居家族の体調に問題がないことも確認した方がよいです。お店は都道府県の『第三者認証制度』で認証されているなど『感染対策ガイドライン』を順守していることが条件です。

気温が下がって、寒さを感じる季節ですが、換気をしっかり行い、従業員も客もマスクの着用や手指消毒、大声で騒がない、騒がせない、座席間隔を取るなどのルールを守っているお店を選ぶようにしましょう。料理は鍋料理や大皿料理のような形式ではなく、1人分ずつ提供される方が接触感染のリスクが下がります。人数については、忘年会をする会場や参加者など環境によるところが大きいので、“何人までなら可能”といった線引きは難しいと思います。

これまでの研究で『5人以上の飲食は大声になり、飛沫(ひまつ)が飛びやすくなるため、感染リスクが高まる』ことが分かっていますが、現在、36道県で飲食の場における人数制限の協力要請が撤廃されています。大声が飛び交うような状況をつくらず、隣や向かいの席とある程度の距離が保てていることと、お店全体の換気ができていることが大切だと思います」

Q.忘年会で幹事をする人が注意すべき点を教えてください。

森さん「周囲の感染状況、地域の感染状況を見て、不安材料があれば、開催を見送ることも視野に入れて計画することが必要です。その点については、お店側とも予約の時点でしっかり相談し、直前に延期や中止する際の条件も確認した上で、参加者にもその旨を周知しておきましょう。当日は参加者の体調を確認し、体調の変化がある場合に申し出やすい雰囲気をつくり、参加を無理強いしないようにしましょう。

カラオケやゲーム大会など大声が出やすい企画は避け、席の移動、回し飲み、飲酒の強要や飲み過ぎにつながるような行為もさせないよう配慮してください。会のスタートから解散までは2時間をめどとし、長時間飲み続けないことも心掛けましょう。また、お店側が求める感染対策を参加者全員が実施しているか、目配りすることも幹事の大切な役割です」

Q.では、参加者側の注意点を教えてください。

森さん「国立感染症研究所が新型コロナウイルスワクチンの接種歴がない人753人を対象に行った行動リスクの調査解析では、『会食・飲み会』の参加者は感染リスクが高く、その中でも『同席人数が5人以上』『滞在時間2時間以上』『席についてマスクを外した』『不織布以外のマスク着用』といった要素が有意に感染リスクを上げることが報告されています。

もし、無症状で感染に気付いていない参加者が同席していた場合、ワクチン接種歴がない人は感染リスクが高くなるため、飲食時以外は不織布マスクを着用し、2時間以内に退席することなどが自分を守る“備え”として考えられます。接種を完了している人は発症リスクに加えて、感染リスク、重症化リスクが下がることも確認されていますが、接種歴のない人に感染させないため、また、自身の『ブレークスルー感染』を防ぐためにも同様の対策を徹底することが望ましいです。

過度な飲酒は判断能力を低下させるため、程よく飲酒と会話を楽しむ会になるよう、心掛けましょう」

Q.忘年会の前後の注意点があれば教えてください。特に忘年会の翌日以降、二日酔い以外で体調不良(発熱など)があった場合、どのように対処すべきでしょうか。

森さん「当日までの周囲や地域の感染状況を見極めることや、連日、多くの人と接触し飲食を共にするなど、リスクの高い行動を続けないことは大切です。参加にあたっては発熱、せき、頭痛などの症状がないことを各自が確認してください。後日、発熱などの体調変化があった場合、新型コロナウイルス感染症以外が原因の可能性もありますが、自己判断せず、速やかに医療機関や都道府県の『発熱・受診相談センター(名称は異なる場合も)』に電話で相談し、指示に沿って行動してください。

幹事に連絡するなどして、参加者全員が情報を共有することと、会社へ連絡して、検査の結果が出るまで出社を控えるなどの対応も必要です」

(オトナンサー編集部)

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森まどか(もり・まどか)

医療ジャーナリスト、キャスター

幼少の頃より、医院を開業する父や祖父を通して「地域に暮らす人たちのための医療」を身近に感じながら育つ。医療職には進まず、学習院大学法学部政治学科を卒業。2000年より、医療・健康・介護を専門とする放送局のキャスターとして、現場取材、医師、コメディカル、厚生労働省担当官との対談など数多くの医療番組に出演。医療コンテンツの企画・プロデュース、シンポジウムのコーディネーターなど幅広く活動している。自身が症例数の少ない病気で手術、長期入院をした経験から、「患者の視点」を大切に医師と患者の懸け橋となるような医療情報の発信を目指している。日本医学ジャーナリスト協会正会員、ピンクリボンアドバイザー。

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