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歯磨きや食事中に「歯茎」から出血、どうして? ひどい場合の対処法は?

歯を磨いているときや硬い物を食べているとき、歯茎から血が出るのはなぜなのでしょうか。歯科医師に聞きました。

歯磨き中に歯茎から血、なぜ?
歯磨き中に歯茎から血、なぜ?

 歯を磨いているときや硬い物を食べているとき、歯茎から血が出た経験はありませんか。症状がひどくなり、歯磨きのたびに出血する人もいるようです。そもそも、なぜ、歯茎から血が出るのでしょうか。また、歯ブラシの使い方を見直すことで、歯茎の状態を改善することは可能なのでしょうか。歯科医師の中村貢治さんに聞きました。

歯周病や免疫低下が原因

Q.歯磨きをしているときや硬い物を食べているとき、歯茎から血が出る原因について教えてください。

中村さん「歯茎から出血する原因として多いのは『歯周病』です。歯周病にかかると歯茎が腫れ、出血しやすくなります。口の中には『常在細菌』として、『歯周病菌』や『虫歯菌』など多くの細菌が常在しており、統計によると、20代では30%台後半、45歳以降では半数近くが歯周病にかかっているといわれています。

また、生活習慣やホルモンバランスの乱れ、基礎疾患(糖尿病など)が原因で体内の免疫が低下した場合、口内では常在細菌の働きが活発になり、それに伴い、歯茎の血管も拡張するので、歯磨きや食事のときに歯茎から血が出ることがあります。このほか、強い力を加えて歯を磨くと、歯茎に傷が付いて出血することがあります。

なお、歯茎から出血したからといって、すぐに歯科医院で診療を受ける必要はありませんが、程度によっては受診を検討しましょう」

Q.歯茎からの出血がひどいときもありますが、その場合、どのような原因が考えられますか。対処法も含めて、教えてください。

中村さん「出血の度合いにもよりますが、歯茎からの出血がひどい場合、歯の磨き方が正しくない可能性があります。歯ブラシの使い方を見直しましょう。歯を磨く際は基本的に、指3本(親指、人さし指、中指)で歯ブラシを持ち、力を入れ過ぎずに、ほうきで掃くようにブラッシングをし、歯と歯の間は小刻みに動かすのが最適といわれています。かかりつけの歯科医師に相談し、歯磨き指導を受けるのが最良でしょう」

Q.歯科医院の定期検診では、歯の状態だけでなく、歯茎の状態もきちんと診察してくれるのでしょうか。それとも、自分から、「歯茎の状態をチェックしてほしい」と伝えない限り、歯茎については詳しく診察しないのでしょうか。

中村さん「定期検診時に、歯科医師は基本的に歯の状態だけでなく、歯茎の状態も診ているはずです。また、『歯茎の状態を詳しく診てほしい』と伝えれば、対応してくれると思います。歯茎の状態が気になるようであれば、歯科医院で相談するのが一番だと思います」

Q.歯周病にかかった場合、完治できるのでしょうか。

中村さん「口の中には常在細菌がいるため、歯周病は現代の医学では今のところ、完治できません。しかし、免疫力を向上させるとともに、歯磨きで口の中を常に清潔に保つことで、歯周病の罹患(りかん)を防ぐことは可能ですし、歯周病にかかっても症状を進行させずに、初期症状以下に抑えることができます。

症状にもよりますが、できれば、かかりつけの歯科医師による定期検診を受け、口の中の環境を整えるための指導や治療を受けるのが大切だと思います」

Q.歯磨きだけで歯垢(しこう)を取り除くことは可能なのでしょうか。それとも、「糸ようじ」などのデンタルフロスや歯間ブラシも使った方がよいのでしょうか。

中村さん「歯垢を取り除くには、まずは適切な方法で歯を磨くことが重要ですが、歯磨き時、全体的にきれいにできる率は平均で7~8割といわれており、適切な方法で磨いた場合でも9割が限界といわれています。そこで、歯磨き時はデンタルフロスや、歯間ブラシが必要だといわれています。

ただし、使用方法を間違えると、かえって、歯茎を傷つけてしまったり、歯茎の退縮につながったりします。歯科医院で、デンタルフロスや歯間ブラシの正しい使い方や、自分にとってどの製品が必要なのかを確認しましょう」

(オトナンサー編集部)

中村貢治(なかむら・こうじ)

歯科医師

神奈川歯科大学大学院時代、NASAでの宇宙実験で博士号を取得。その後、神奈川歯科大学放射線学教室医局長、大学講師を経て、中村歯科医院を開業。現在は一般社団法人小倉歯科医師会理事、一般社団法人福岡県歯科医師会部会部員など、診療だけでなく社会活動にも従事。中村歯科医院ホームページ(https://www.nakamura-ct-dc.com/)。

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