オトナンサー|オトナの教養エンタメバラエティー

痛み、頭痛、熱…「副反応」がないとワクチンの効果に不安? 実際のところは

ブレークスルー感染はまれ?

Q.副反応を怖がって、ワクチンを敬遠する人もいるようです。ワクチン2回接種後の感染も報道されています。改めて、ワクチンの意義を教えてください。

森さん「先述した一般的によく出る副反応以外に、まれに起こる副反応として『アナフィラキシー』『急性心筋炎・急性心膜炎』などがあります。なじみのないこれらの反応を『怖い』と感じるのは自然なことです。接種後30分以内に起こるアナフィラキシーについては8月22日時点で、ファイザー製では100万回接種あたり4件、モデルナ製では1.5件と報告されています。また、接種後の急性心筋炎・急性心膜炎はファイザー製で100万回接種あたり0.6件、モデルナ製で1.6件と報告されています。

まれであると同時に、アナフィラキシーは治療法が確立していて、接種会場や医療機関で適切な処置がされていますし、ワクチン接種後の急性心筋炎・急性心膜炎は、ほとんどが軽症で経過すると報告されており、『軽症の心筋炎・心膜炎は治癒する病気であり、通常の循環器の診療体制で対応できる』という見解が示されています。一方、新型コロナウイルスに感染し、発症した場合は重症化や死亡のリスクがあり、若年層は重症化のリスクは低くても、長期にわたる後遺症のリスクがあります。

また、感染が急拡大した場合に十分な医療を受けられない可能性、経済活動や社会生活のさまざまな場面において、行動制限が必要になる可能性などを考えると、ワクチン接種によって重症化する人を減らし、感染拡大を抑制することの意義は高いと考えられます。そうした理由からも、新型コロナウイルスワクチンは予防接種法の『臨時接種の特例』に位置付けられ、接種を受けるよう努めなければならない『努力義務』があるとされています。

2回接種後の感染である『ブレークスルー感染』の報道もありますが、9月9日の『東京都新型コロナウイルス感染症モニタリング会議』において、宮坂昌之氏(免疫学の第一人者。大阪大学免疫学フロンティア研究センター招へい教授)は『感染が1回接種で55%減少し、2回接種で93%減少した』という和歌山県のデータを紹介し、『2回接種した35万3430人のうち感染したのは25人(0.007%)、日本ではブレークスルー感染はまれであると考えられる』と話しました。

そうした調査結果からも、ワクチン接種の意義が高いことが分かります」

(オトナンサー編集部)

1 2 3

森まどか(もり・まどか)

医療ジャーナリスト、キャスター

幼少の頃より、医院を開業する父や祖父を通して「地域に暮らす人たちのための医療」を身近に感じながら育つ。医療職には進まず、学習院大学法学部政治学科を卒業。2000年より、医療・健康・介護を専門とする放送局のキャスターとして、現場取材、医師、コメディカル、厚生労働省担当官との対談など数多くの医療番組に出演。医療コンテンツの企画・プロデュース、シンポジウムのコーディネーターなど幅広く活動している。自身が症例数の少ない病気で手術、長期入院をした経験から、「患者の視点」を大切に医師と患者の懸け橋となるような医療情報の発信を目指している。日本医学ジャーナリスト協会正会員、ピンクリボンアドバイザー。

コメント