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酷暑、中傷、メダルをかむ市長…東京五輪は「アスリートファースト」だったのか

アスリートのタレント化も影響?

Q.大会期間中、参加選手に対するSNS上での誹謗中傷が相次ぎ、問題となりました。SNS上でのアスリートへの誹謗中傷が増えた背景や対処法について教えてください。

江頭さん「この問題はSNSが誕生する前からありました。1992年のバルセロナオリンピック200メートル平泳ぎで金メダルを取った岩崎恭子さんは、14歳で金メダリストになったことでマスコミに注目され、当時の宮沢喜一首相から、お祝いの電話を受けるシーンがテレビで何度も放送されるほどでした。オリンピック前、中学生の水泳選手にすぎなかった岩崎さんはその後、いたずら電話や自宅周辺での嫌がらせに悩まされました。

注目されれば、批判的なことを言う人は一定数出てきます。オリンピックでメダルを取れば、100万人単位の人に顔と名前が知られ、メディアへの露出も増えます。SNSの浸透により、簡単に本人に直接メッセージを送信できるようになったため、誹謗中傷の数が多くなったのでしょう。

誹謗中傷への対処法は、SNS運営会社か、各国のオリンピック委員が悪意のあるメッセージをブロックするしかありません。同時にアスリートに対して、誹謗中傷の対象になることも覚悟してもらわなくてはなりません。アスリートなら、スポーツマンシップにのっとり、『よき敗者』でいることもできると思いますが、観客にまでそれを要求することはできません。競技に負けた悔しさだけでなく、注目されることに対する他人からの嫉妬はアスリートにとって不可避だと思います」

Q.東京五輪を通じて、以前よりもアスリートが敬意を払われなくなっているように見えましたが、考えられる理由は。

江頭さん「アスリートに対して敬意が払われなくなっているのは社会や経済の要因、アスリート自身の覚悟不足が理由だと思います。第1に、バラエティー番組への出演やタレントとの交流を重視するアスリートが増加したこと、いわゆる、『アスリートのタレント化』です。これはスポーツ界もメディアも望んだ結果ではあるものの、アスリートへの畏敬の念が薄れる原因になりました。タレント化が進んだ主な原因は、スポーツで得られる収入をタレント活動で得られる収入が上回る人もいるためです。

第2に、スポーツ競技にお金がかかり過ぎることです。プロとしての収入が期待できない競技の場合、スポンサー契約が取れなければ、国際大会への参加費用など、アスリート自身が生計を立てなくてはなりません。つまり、ユニホームを脱げば一般人になるのです。アルバイトをするか、会社員アスリートとして仕事をしなくてはなりません。世界トップクラスのアスリートが放つオーラは、日常生活ではプラスにならないのです。

第3に、スポーツマンシップの理解が浅いことが考えられます。オリンピックに出場する全てのアスリートは日本トップレベルでHEROなのです。話す言葉はもちろん、態度や振る舞いなど、全てがお手本となるよう覚悟を決めなくてはなりません。今回の東京大会で日本は58のメダルを獲得し、子どもたちが憧れるHEROが誕生しました。チーム競技もあるので、100人前後のHEROがいることになります。彼らが今後、メディアに露出するとき、一秒たりとも気を抜かず、HEROらしく振る舞ってほしいものです」

(オトナンサー編集部)

【写真】金メダルをかじられた後藤希友選手

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江頭満正(えとう・みつまさ)

独立行政法人理化学研究所客員研究員、一般社団法人日本スポーツマンシップ協会理事

2000年、「クラフトマックス」代表取締役としてプロ野球携帯公式サイト事業を開始し、2002年、7球団と契約。2006年、事業を売却してスポーツ経営学研究者に。2009年から2021年3月まで尚美学園大学准教授。現在は、独立行政法人理化学研究所の客員研究員を務めるほか、一般社団法人日本スポーツマンシップ協会理事、音楽フェス主催事業者らが設立した「野外ミュージックフェスコンソーシアム」協力者としても名を連ねている。

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