オトナンサー|オトナの教養エンタメバラエティー

放射線、不安? 「エックス線検査」、年2回以上受けても問題ない?

健康診断のときや病気、けがをした際、「エックス線検査」を受けることがあります。エックス線検査には放射線が使われますが、年2回以上受けても問題ないのでしょうか。

エックス線検査、2回以上でも大丈夫?
エックス線検査、2回以上でも大丈夫?

 健康診断のとき、胸部の「エックス線検査」を受ける人も多いと思います。また、骨折や肺炎のように病気やけがをしたとき、エックス線検査が行われることもあります。しかし、エックス線検査には放射線が使われるため、不安に思う人もいるのではないでしょうか。特に、健康診断でエックス線検査を受けた人が直後、病気やけがで、再度、エックス検査を受けた場合、ほかの人に比べて被ばく量が多くなる可能性があります。

 エックス線検査は年2回以上受けても問題ないのでしょうか。内科医の市原由美江さんに聞きました。

1回の被ばく量は0.06ミリシーベルト

Q.エックス線検査はなぜ、必要なのでしょうか。放射線による被ばくが心配な人もいるようですが、年に何回までなら受けてもよいのでしょうか。

市原さん「そもそも、病気の発見や治療のために放射線は欠かせないものであり、医師が必要と判断した上で、エックス線検査や、放射線を使って体の断面を撮影する『CT(コンピューター断層撮影)検査』を行います。

放射線技師など業務で放射線を扱う人を除く、一般の人が治療や検査のときに浴びてもよいとされる放射線は年間1ミリシーベルトまでです。胸部エックス線検査を1回受けたときの被ばく量は0.06ミリシーベルトなので、計算上は年16回までなら受けてもよいことになります。

また、われわれは空気中や食べ物から、年間2.1ミリシーベルト(胸部エックス線検査35回分)の放射線を浴びています。これらのことから、エックス線検査を受けることで、放射線による健康被害を過度に心配する必要はありません」

Q.エックス線検査、CT検査、MRI検査の違いについて教えてください。また、検査を使い分けるときの基準は。

市原さん「病気や症状によって、検査方法が異なります。

エックス線検査は主に、胸や骨の状態を確認するときに行われます。一方向から体を撮影するため、立体的に捉えることはできませんが、例えば、胸部エックス線では、肺炎や肺がんなどの異常を見つけることができます。

CT検査は放射線を使って体の断層を撮影するので、体内を立体的に捉えることができます。例えば、脳出血やくも膜下出血といった脳の出血による病気や、肝臓や腎臓、すい臓など腹部の臓器のがんを発見しやすいのが特徴です。

CT検査はエックス線検査よりも放射線の被ばく量が多く、本来であれば、年に何回も検査を受けるのは望ましくありませんが、がん患者はCT検査を頻繁に受ける必要があります。被ばく量の心配よりも、がんの治療が優先されるため、年に数回、CT検査を受けることも珍しくありません。

MRI(磁気共鳴画像装置)による検査もCT検査と同様、体の断層を撮影しますが、そのときは放射線の代わりに磁石と電波を使います。被ばくの心配がないため、何回受けても問題ありませんが、CT検査に比べると検査時間が比較的長いです。主に脳の病気(脳腫瘍や脳の外傷など)や脊椎の病気(胸椎・腰椎のヘルニアや頸椎症など)の検査に効果を発揮します」

Q.エックス線検査やMRI検査でも見つけにくい病気はあるのでしょうか。

市原さん「先述のように、エックス線検査は一方向からの撮影なので、臓器同士が重なって写った場合、病気が見つけにくいことがあります。その場合はCT検査が検討されます。MRI検査はそもそも、脳、脊髄、骨盤内の臓器、関節を撮影することがほとんどなので、この部位以外の病気の発見目的で使うことはありません」

Q.妊婦や乳幼児がエックス線検査やMRI検査を受けても問題ないのでしょうか。

市原さん「妊娠中のエックス線検査は放射線が胎児に影響を及ぼす可能性があるので、すすめられません。また、MRI検査の際も強い磁気が発生するため、胎児への影響がまったくないとはいえません。そのため、妊娠初期の人に対してMRI検査を行うのは、あまり好ましくないとされています。

乳幼児がエックス線検査やMRI検査を受けること自体は問題ありません。ただし、MRI検査の間は体を動かしてはいけないため、子どもがMRI検査を受ける場合は、事前に鎮静剤を使って眠らせて、動かないようにしてから行います」

Q.ちなみに、新型コロナウイルスの診療の一環としては、エックス線検査はどのような場合に実施するのでしょうか。

市原さん「発熱外来などで新型コロナウイルスの患者を積極的に受け入れている病院では、PCR検査に加えて、エックス線検査を受ける患者が増えている病院もあるでしょう。しかし、風邪と新型コロナ感染症は症状では区別できません。

一般の病院の多くは、患者が新型コロナに感染していた場合の院内感染の可能性を考慮し、風邪の症状や発熱のある患者への胸部エックス線検査を行いません。そうした患者に対しては、各自治体の新型コロナ感染症の相談センターへの連絡か、PCR検査を実施している病院への移動をお願いしています。

なお、新型コロナの患者を受け入れている病院では、感染者で入院が必要な人に対してはCT検査を行います。胸部エックス線検査では、肺炎の全体的な様子を細かくみることができないからです。CT検査で胸部の断層を撮影し、肺炎の広がりや程度を確認します」

(オトナンサー編集部)

市原由美江(いちはら・ゆみえ)

医師(内科・糖尿病専門医)

横浜鶴ヶ峰病院付属予防医療クリニック副院長。自身が11歳の時に1型糖尿病(年間10万人に約2人が発症)を発症したことをきっかけに糖尿病専門医に。病気のことを周囲に理解してもらえず苦しんだ子ども時代の経験から、1型糖尿病の正しい理解の普及・啓発のために患者会や企業での講演活動を行っている。また、医師と患者両方の立場から患者の気持ちに寄り添い、「病気を個性として前向きに付き合ってほしい」との思いで日々診療している。糖尿病専門医として、患者としての経験から、ダイエットや食事療法、糖質管理などの食に関する知識が豊富。1児の母として子育てをしながら仕事や家事をパワフルにこなしている。オフィシャルブログ(https://ameblo.jp/yumie6822/)。

コメント