「ジェネリック医薬品」はほかと何が違う? メリット/デメリットを薬剤師が解説
薬局で処方薬をもらうとき、「ジェネリック医薬品」を選択するかどうか聞かれることが多くなりました。そもそも、ジェネリック医薬品は、ほかの薬と何が違うのでしょうか。

薬局で処方薬をもらうとき、「ジェネリック医薬品」を選択するかどうか聞かれることが多くなりました。ジェネリック医薬品は安価と言われますが、一方で「どのようなものかよく分からない薬」という印象を持つ人もいて、選んでいいのか迷うこともあるようです。
ジェネリック医薬品はほかの薬と何が違うのでしょうか。ジェネリック医薬品のメリット、デメリットについて、薬剤師の川口てるこさんに聞きました。
薬の形や味が異なる場合も
Q.そもそも、ジェネリック医薬品とはどのような薬なのでしょうか。比較的安価だと聞きますが、なぜ、安いのでしょうか。
川口さん「製薬会社が研究開発を行い、特許を取得し、販売にこぎつけた新しい薬を『新薬(先発医薬品)』といいます。新薬は基礎研究に2~3年、非臨床試験に3~5年、臨床試験に3~7年、さらに承認申請と審査で1~2年かかるといわれ、合わせて、9年から17年もの歳月と数百億円以上の費用をかけて開発されるのが一般的です。
そのため、開発した会社は特許の出願・登録により、出願した日から、原則として20年~25年の特許の存続期間が与えられます。その期間、その薬を独占的に製造・販売する権利を得るのです。しかし、特許の存続期間が過ぎると、他の製薬会社も同じ有効成分を使った薬を製造・販売できるようになります。それが『ジェネリック医薬品(後発医薬品)』です。
新薬に比べ、開発費や開発期間が少ないため、新薬より価格が抑えられるのです。国の厳しい審査で、品質が新薬と同等であると確認されたものがジェネリック医薬品として販売されるため、ジェネリック医薬品に含まれる有効成分の種類や有効成分の量は新薬と同じです。
薬の形や色、味、添加物などは変えてもよいことになっているため、見た目や添加物が異なることはありますが、有効成分の効果や安全性に違いはありません。最近は『オーソライズド・ジェネリック(AG)』と呼ばれる、有効成分だけでなく、添加剤、製造方法まで新薬と同一のジェネリック医薬品も登場しています」
Q.薬局でジェネリック薬を選択するかどうか聞かれる機会が増え、場合によってはジェネリック薬をすすめられることもあります。なぜ、ジェネリック薬の使用が推奨されるようになったのでしょうか。
川口さん「ジェネリック医薬品が推奨される理由は、高齢化に伴って、年々増加する医療費を削減するためです。2008年度の国民医療費は約35兆円でしたが、2018年には約43兆円と8兆円ほど増えました。医療費は今後も増加していくことが予想されますが、国内では少子化が進んでいるため、税収が増える見込みも期待できません。
そもそも、2006年時点の日本のジェネリック医薬品の普及率は1割ほどと、欧米(当時の普及率は6割から7割ほど)に比べて大きく出遅れていました。そこで、国はジェネリック医薬品の推奨により、医療費の一部である薬剤費を削減すべく、日本でのジェネリック医薬品の普及率向上を図りました。
その後、国は『2020年に普及率80%達成』という目標を掲げ、また、薬局や健康保険組合もジェネリック医薬品の使用を積極的に呼び掛けたことで、ここ数年でジェネリック医薬品の普及が急速に拡大しました。2020年9月時点のジェネリック医薬品の普及率は78.3%と、欧米と同等になりました」
Q.ジェネリック医薬品を選ぶメリット、デメリットについて教えてください。
川口さん「ジェネリック医薬品を選ぶメリットはやはり、価格の安さでしょう。そのため、現在、多くの人がジェネリック医薬品を選んでいます。
特に生活習慣病などで長く飲み続けなければならない薬の場合、そのメリットは大きくなります。例えば、高血圧で1日1回の薬を1種類(1日分の薬価38.0円、自己負担割合3割で自己負担額11.4円の場合)、1年間服用している人の場合、新薬だと「11.4円×365」で4161円かかりますが、ジェネリック医薬品だと、自己負担額4.56円としてその365日分、つまり、1664円で済むため、2497円分得です。
また、ジェネリック医薬品の中には『苦くて飲みにくい』『大きくて飲みにくい』といった新薬の問題点を改良して、飲みやすく製造されているものもあります。
デメリットとしては、新薬とは製造方法や添加物が異なる場合もあり、長年飲み続けてきた薬の見た目が変わることに抵抗を感じる人がいるかもしれないことが一つ。また、『お医者さんは先発医薬品の名前で話をするので、ジェネリック医薬品にしたら分からなくなって困る』という人もいます。
そうした場合は、診療時にお薬手帳を持参してほしいと思います。ほかに、外用薬では、使用時に『貼り薬の粘着感』『塗り薬の塗り心地』の違いを感じる人がいるかもしれません」
Q.症状によっては、ジェネリック医薬品を選ばない方がよいケースはあるのでしょうか。
川口さん「そもそも、すべての薬にジェネリック医薬品があるわけではありません。発売から間もない薬は新薬しか存在しないことになります。
一方で、ジェネリック医薬品がある場合については、症状によって、ジェネリック医薬品を選ばない方がいいケースは思いつきません。治療上の方針で、医師が新薬を指定する場合もありますが、患者が新薬、またはジェネリック医薬品を自由に選べる場合、医師は『どちらを選んでも治療上問題ない』と判断しているといえるからです。迷ったときは、ぜひ、薬局の薬剤師に相談してみてください」
Q.安価なジェネリック医薬品を多くの患者が選ぶと、薬局は売り上げが減って経営が苦しくなるのではないでしょうか。薬局にとってのジェネリック医薬品のメリットを教えてください。
川口さん「国は多くのジェネリック医薬品を調剤している薬局に対して、医療費の抑制に積極的に取り組んでいることを評価して、調剤報酬を加算しています。ジェネリック医薬品自体の価格が安くても、ジェネリック医薬品の割合を増やすことで報酬が得られる仕組みとなっているため、薬局の経営が苦しくなることはないでしょう」
(オトナンサー編集部)
コメント