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子どもの「指をしゃぶる」「爪をかむ」行為、歯の発育に悪影響はない?

子どもが指をしゃぶったり、爪をかんだりする行為は歯の発育上、すぐにやめさせるべきなのでしょうか。歯科医師に聞きました。

「指しゃぶり」は歯の発育に影響?
「指しゃぶり」は歯の発育に影響?

 幼い子どもで「指をしゃぶる」「爪をかむ」ことが癖になっているケースがありますが、「周囲の人にあまりよい印象を与えない」「歯の発育に悪影響を与えるのでは」などと考え、それらの行為をやめさせたいと思う人も多いはずです。子どもが指をしゃぶったり、爪をかんだりする行為は歯の発育上、すぐにやめさせるべきなのでしょうか。

「指をしゃぶる」「爪をかむ」行為が子どもの歯の発育に与える影響や対処法について、歯科医師の中村貢治さんに聞きました。

指しゃぶりすぎで「出っ歯」も

Q.乳児が指をしゃぶるのはよくある行為ですが、1歳を過ぎてからも指をしゃぶり続ける子もいます。また、歯が生え始めると爪をかむようになる子もいます。なぜ、子どもは「指をしゃぶる」「爪をかむ」などの行為をするのでしょうか。

中村さん「基本的に、子どもが指をしゃぶるのは(1)授乳量やミルクの量が足りなくておなかがすいている(2)歯が生え始めて、口の中がむずむずする(3)指をしゃぶることで不安やストレスを落ち着かせる――ことなどが原因だといわれています。また、爪をかむ行為は不安などからくる自傷行為に近いものです。ただし、その行為が続くことで、それが無意識のうちに癖になっている場合もあるため、必ずしも不安があるとは限りません」

Q.指をしゃぶったり、爪をかんだりする行為は歯の発育にどのような影響を与えるのでしょうか。

中村さん「指をしゃぶると上下の前歯が前方に押し出される状態となるため、日常生活で指をしゃぶり続けると出っ歯になる可能性があります。また、上下の前歯が前方に押し出されることで、かみ合わせが不安定となり、奥歯の発育にも影響が出る可能性もあります。

爪をかむ行為についても、前歯を使って不必要な力で爪をかむため、前歯や奥歯のかみ合わせが不安定になりがちです。指をしゃぶったり、爪をかんだりすることが癖になった場合、歯並びが悪くなったり、歯と歯の間に隙間が生じたりして、食べ物のかすが歯に挟まりやすい状態となることがあります。そうすると、正常な歯並びに比べて虫歯になりやすくなります。

なお、食器(箸やスプーン、フォークなど)や文房具(鉛筆やボールペンなど)といった硬い物をかむ癖がついた場合も、歯並びやかみ合わせに影響が生じる場合があるので注意が必要です」

Q.歯の発育に悪影響を与える行為をやめさせるには、どうしたらよいのでしょうか。

中村さん「すぐにやめさせるのは難しいと思います。子どもが指をしゃぶったり、爪をかんだりした場合、親はその都度、その行為が『よくない行為』であることを優しく、子どもに言い聞かせる必要があります。そのようにして、子どもに徐々に理解させ、時間をかけてゆっくりとやめさせることが大切です。

歯の発育に悪影響を与える行為だからといって、無理やりやめさせたり、頭ごなしに叱りつけたりしないでください。そうした形で強制的にやめさせた場合、その反動でかえって行為がぶり返されるため逆効果となります」

Q.子どもの歯並びが悪くなってしまった場合や元々悪い場合、矯正が必要なこともあると思います。矯正にかかる年数や費用について教えてください。

中村さん「矯正は基本的に保険外診療となるため、治療にかかる年数や費用に関しては必ず、通院先の歯科医院に確認してください。期間は歯並びの状態や開始年齢、その他さまざまな条件によって左右されるため一概にはいえませんが、平均すると早い人で2年、長い人で10年以上かかることもあります。

治療費についても、矯正の方法や期間によって異なります。簡単な矯正であれば、保険が適用されて数万円で済むケースもありますが、保険外診療の場合は平均で70万円以上かかるケースがほとんどです。歯の矯正には高額な費用がかかることもあるため、事前に歯科医師にきちんと相談し、納得した上で治療を受けることをおすすめします」

(オトナンサー編集部)

中村貢治(なかむら・こうじ)

歯科医師

神奈川歯科大学大学院時代、NASAでの宇宙実験で博士号を取得。その後、神奈川歯科大学放射線学教室医局長、大学講師を経て、中村歯科医院を開業。現在は一般社団法人小倉歯科医師会理事、一般社団法人福岡県歯科医師会部会部員など、診療だけでなく社会活動にも従事。中村歯科医院ホームページ(https://www.nakamura-ct-dc.com/)。

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