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「つわり」が重症化すると死に至ることも? 予防法や治療法は?

妊娠中の女性を苦しめる「つわり」には個人差がありますが、重いつわりから母体が危険な状態となり、命を落とすケースもあるといわれます。本当でしょうか。

つわりが重篤化すると…?
つわりが重篤化すると…?

 妊娠中の女性を苦しめる「つわり」。その有無や症状の軽重には個人差があることが知られていますが、重いつわりに苦しむ妊婦の中には、母体が危険な状態となって命を落とすケースもあるといわれます。ネット上では「つわりで亡くなることがあるなんて知らなかった」「妊婦さんに無理させたらだめ」「つわりを甘く見てはいけない」といった驚きの声や、「つわりが重症化するとどうなるの?」「つわりが悪化しやすい体質はあるのかな」など疑問の声も多く上がっています。

 つわりが重篤化すると死に至ることがあるのは事実でしょうか。産婦人科医の尾西芳子さんに聞きました。

脳障害や肝障害の恐れも

Q.まず、つわりの基本的な情報について教えてください。

尾西さん「つわりは全妊婦さんの50%以上にみられます。つわりというと、妊娠初期に吐き気がしたり、嘔吐(おうと)したりするイメージが一般的ですが、何かを口の中に入れていないと吐き気がする『食べづわり』タイプや、ひたすら唾液が出るタイプなどもあり、一概に食べられないわけではありません。また、妊娠初期の頭痛や眠気、倦怠(けんたい)感なども、広い意味でつわりの症状と捉えられます。

つわりの原因は、実はまだよく分かっていません。妊娠によって増加するホルモンが原因という説が有力ですが、胎児を『自分と違う異物』だと体が認識して拒絶する反応という説、ミネラルバランスの変化によって生じるという説もあります。

というのも、つわりを感じている人の血液を調べると、マグネシウムやカリウムが不足していることが分かっているためです。また、ビタミンB6も不足するとつわりの症状が強く出ます。さらに、つわりは精神的なストレスによっても悪化することが医学的に証明されています」

Q.つわりが重症化すると母体が危険な状態になり、死に至るケースもあるというのは事実でしょうか。

尾西さん「事実です。つわりが重症化し、水分も受け付けなくなって脱水状態になったり、ビタミンやミネラルの不足によって栄養障害、代謝障害を起こしてしまったりすることを『妊娠悪阻(おそ)』といいます。妊娠悪阻は全妊娠の0.1~0.5%にみられ、適切な治療を行わないと肝障害や腎障害、脳障害などが起き、最悪の場合は死に至ります」

Q.つわりが重症化するリスクが高いと考えられる妊婦さんの特徴とは。

尾西さん「つわりは初産婦に多いですが、重症化するケースは経産婦に多くみられます。以前、妊娠悪阻になったことがある場合や多胎(双子、三つ子など)、妊娠高血圧症の既往がある場合などは、妊娠悪阻になるリスクが高いという報告があります。その他、母親や姉妹などが妊娠悪阻になったことがある場合もなる可能性が高いとして、遺伝も関係しているのではないかと考えられています」

Q.もともと、つわりの症状が軽い女性が何らかの理由や要因で重症化するケースもあるのでしょうか。

尾西さん「先述の通り、つわりには精神的、心理的な要素も強く影響しているため、家庭や職場環境でストレスがあると症状が悪化する可能性があります。つわりは個人差がとても大きく、また、同じ人でも初めての出産と2度目、3度目の出産で程度が大きく異なることも珍しくありません」

Q.妊婦さん自身がつわりについて、「かなり重い」「重症化する可能性が高い」ことを自覚するために覚えておくとよい症状の特徴・サインはありますか。

尾西さん「つわりが出た際、食事は取れなくても何とかなりますが、水分が十分に摂取できないとさまざまな影響が出る危険性があるため、水分も受け付けない▽飲んでもすぐに吐いてしまう▽目まいがする――などの場合は早めに産婦人科を受診しましょう。また、排尿の回数が減ったというのも危険なサインです。

なお、水分摂取といっても、水だけではなくゼリーやアイスクリームなどでも構いません。炭酸水だと飲みやすいという人も多いです」

Q.つわりが重症化してしまった場合、病院ではどのような治療を行うのですか。また、その治療が胎児にもたらし得る影響はありますか。

尾西さん「少量の食べ物を複数回に分けて取る食事指導や精神状態を安定させるための精神療法、点滴による脱水の改善、ビタミンの補給、制吐剤の点滴、漢方薬による治療、つぼ押しなどの治療を行います。水分も受け付けない場合や、飲んでもすぐに吐いてしまう場合、体重が妊娠前より5キロ以上落ちるような重度のつわりになると、母体からエネルギーを絞り出すため、尿に『ケトン体』が多く出ます。これが『3+』以上になると入院することもあります。

治療は母体の状態悪化に対して行うものであり、胎児に悪影響を及ぼすことはありません。ただ、治療を行っても改善されず、母体が危険な場合、妊娠を中断せざるを得ないケースもあります」

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尾西芳子(おにし・よしこ)

産婦人科医(日本産科婦人科学会会員、日本女性医学学会会員、日本産婦人科乳腺学会会員)

2005年神戸大学国際文化学部卒業、山口大学医学部学士編入学。2009年山口大学医学部卒業。東京慈恵会医科大学附属病院研修医、日本赤十字社医療センター産婦人科、済生会中津病院産婦人科などを経て、現在は「どんな小さな不調でも相談に来てほしい」と、女性の全ての悩みに応えられるかかりつけ医として、都内の産婦人科クリニックに勤務。産科・婦人科医の立場から、働く女性や管理職の男性に向けた企業研修を行っているほか、モデル経験があり、美と健康に関する知識も豊富。オフィシャルブログ(http://ameblo.jp/yoshiko-onishi/)。

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