【シーン別】ビジネスメールにおける「お礼」の書き方
普段は簡単に済ませてしまいがちな、ビジネスメールにおける「お礼」ですが、失礼のないことはもちろん、相手に好印象を与えるメールは「できるビジネスパーソン」の条件です。ここではその基本や例文を学びましょう。
ビジネスメールにおける「お礼」の基本
「できるビジネスパーソンはお礼メールがうまい」。そう言っても過言ではないほど、お礼メールはビジネスシーンにおいて重要な役割を果たします。失礼のないメールであることはもちろん、より良い印象を与えるメールで、一歩先を行くビジネスパーソンを目指しましょう。
ビジネスシーンにおいて、円滑にコミュニケーションを取るために欠かせないのがお礼メールです。会社に入って、何となくメールを作成してきたものの、自分のメールは相手に対して失礼ではないのか、どう書けばよいのか迷う人も多いのではないでしょうか。
また、一般にメールは手紙や電話と比べてマナーが軽視される傾向にあるため、相手に誤解されないよう言葉の選び方に注意する必要があります。ここでは、感謝の気持ちを伝えるためのお礼メールの基本や例文をご紹介します。
教えていただくのは、ビジネスマナー講師として企業や行政機関、教育機関で社員教育や研修、コンサルティングなどを行うマナーコンサルタントの川道映里さんです。
【一瞬で伝わる件名を】
件名だけで内容が相手に伝わるようにします。さらに、件名の後に(A会社・川道映里)などと、カッコ内に社名と自分の名前を書くとわかりやすい件名になります。
【本文は簡潔な文章に】
まず「いつもお世話になっております」と定番のあいさつ文を書きます。さらに好感度を上げるためには「△△様、いつも大変お世話になっております」のように、冒頭に受信者の名前を入れるとより丁寧な印象になります。
あいさつ文の後は、伝えたい用件を簡潔に読みやすくまとめます。1行35文字程度で、それ以上の場合は改行します。また、段落ごとに1行空けると相手が読みやすくなります。その場合、1段落はなるべく2~3行、長くても5~6行がオススメ。相手が読みやすいかどうかを考えて書くことがマナーです。
また、お礼メールの内容を書く時は、ほかの要件を書かないようにすることも大切です。ほかの要件を書くと、お礼がついでのように思われてしまい感謝が伝わりにくい可能性があります。お礼メールは誠意を持って、自分の素直な感謝の気持ちを記しましょう。
【お礼は早く伝える】
お礼メールで気をつけたいのは、メールを送るタイミングです。特に仕事上で何かをしてもらった場合は、できれば当日、または翌日にお礼を伝えるのが理想的です。自分に無理のないタイミングでできるだけ早くお礼を伝えるようにします。
また、これから信頼関係を構築しようという相手や今後も一緒にビジネスをしていきたい相手には、特にこまめに感謝を伝えることで、より緊密で円滑な協力関係を築くことができます。
NGメールから学ぼう!
お礼メールの基本を抑えたところで、ここではワンランク上のお礼メールを送るための方法を学びます。以下は、取引先と飲み会をした際のお礼メールです。一見、問題はなさそうですが、どこがNGポイントなのか考えてみましょう。
件名:先日の飲み会について
△△株式会社 営業部
◯◯◯◯様
いつもお世話になっております。
株式会社△△の××です。
先日は飲み会にお招きいただきありがとうございました。
皆様と貴重なお時間を過ごせたことにお礼を申し上げます。
取り急ぎ、お礼まで。
今後とも、どうぞよろしくお願いいたします。
さて、どこが問題かわかりましたか。
1.件名で用件がわかるように
まずは件名です。「先日の」とありますが、先述の通り、お礼メールはできるだけ早く送るようにします。今回の場合は、翌日すぐにメールを送り「昨日の」とするのがベストです。また「飲み会」ではなく、ビジネスメールでは「食事会」と表現します。
また、件名だけで用件がわかるように「昨日の食事会の御礼です(A会社・川道映里)」や「【御礼】昨日の食事会_A会社・川道映里」とすればわかりやすくなります。もしも、目上の方に対して「御礼」という表現が気になる場合は「御礼です」に言い換えると“上から目線”の印象がなくなります。
2.相手だけに向けた内容を
本文については、食事会の具体的な感想や「特に◯◯のお話はとても勉強になりました」など印象に残った会話を伝えると、相手に喜ばれます。
3.「取り急ぎ」は失礼になることも
最後の「取り急ぎ、お礼まで」はビジネスメールではよく使うフレーズです。「取り急ぎ」を辞書で引くと「とりあえず急いで」とあります。つまり、本来きちんと伝えるべきところを省略するという意味で、改めて連絡する必要があるということになります。「取り急ぎ」は、気に留めない人もいれば、失礼と感じる人もおり、相手によって受け取り方が異なる言葉といえます。特に、目上の方やお客様に対するお礼メールでは避けた方が無難なこともあります。
しかし、自分の仕事の都合などで、きちんとしたお礼メールが送れず、先にお礼だけでも伝えたい場合があります。そのような時は「取り急ぎ御礼申し上げます」など「~まで」を使わない、丁寧な言い方を心がけるようにします。「まずは、メールにて御礼申し上げます」と言い換えることも可能です。目上の方やお客様に対しては「略儀ではございますが、まずは御礼かたがたごあいさつ申し上げます」「甚だ略儀ではございますが、まずはメールにて御礼申し上げます」と言い換えると丁寧な表現になります。
心に響くお礼メールの例文【打ち合わせ・面談】
ここからは、さまざまなビジネスシーンを想定したお礼メールの例文をご紹介します。これらを参考に、自分のビジネスシーンに当てはめて、より相手の心に響くお礼メールを作成しましょう。
1.打ち合わせ・面談のお礼
【社内】
件名:プロジェクト打ち合わせお礼(◯◯部・××)
△△部◯◯部長
◯◯部長、お疲れさまです。××です。
本日はご多忙の中、新プロジェクトのために長時間ありがとうございました。
部長が用意してくださった資料のおかげで中身の濃い打ち合わせをすることができました。
また、ご指摘くださった改善ポイントは確認の上、18日までにご報告します。
来月の全体会議で生かせるよう再度検討し、準備を進めてまいります。
今後ともご指導のほど、どうぞよろしくお願いいたします。
【社外】
件名:新商品打ち合わせのお礼です(××・◯◯◯◯)
△△株式会社
◯◯様
◯◯様、いつも大変お世話になっております。
株式会社××の◯◯◯◯です。
昨日はお忙しいところ、新商品開発に向けた打ち合わせのために弊社へお越しくださり、誠にありがとうございました。
弊社の新商品につきまして、◯◯様をはじめ皆様から貴重なご提言を頂戴し、心から感謝申し上げます。
いずれも、今までにない斬新なアイデアで、現在も社内で検討を重ねているところでございます。
ご迷惑をおかけいたしますが、△月◯日(●)までに結論を出し、改めて◯◯様にご連絡を差し上げてもよろしいでしょうか。
皆様のお役に立つ、より良い商品がご提供できるよう精いっぱい努めさせていただきます。
今後とも、引き続きよろしくお願いいたします。
◆ここがポイント◆
打ち合わせのお礼のメールでは、相手への感謝はもちろん、打ち合わせで出てきた課題の解決方針や、次の打ち合わせにつながる予定を合わせて伝えるようにします。
心に響くお礼メールの例文【飲み会】
2.飲み会のお礼
【社内】
件名:【御礼】昨日の食事会_◯◯
××部◯◯部長
◯◯部長、お疲れさまです。◯◯です。
昨日は食事会に誘ってくださり、ありがとうございました。
初めて食べる仙台名物の牛タンに感動いたしました。
その上、すっかりごちそうになってしまい恐縮しております。
本当にありがとうございました。
また、おいしいお酒を頂きながら、◯◯部長から営業のヒントになるお話を伺うことができ大変勉強になりました。
特に「△△△△」というアドバイスのおかげで、本日からさらに仕事に力を入れていこうと気合いが入りました。
まだまだ微力ではございますが、早く仕事でお役に立てるように努力いたします。
今後とも、どうぞよろしくお願いいたします。
【社外】
件名:お招きの御礼につきまして(××・◯◯◯◯)
△△株式会社
◯◯◯◯様
◯◯様、いつも大変お世話になっております。
株式会社××の◯◯◯◯です。
昨日は、心のこもったおもてなしを誠にありがとうございました。
以前から気になっていた人気のあるお店にて、おいしい食事を頂きながら◯◯様の楽しいお話を伺うことができ、時間がたつのも忘れてしまいました。
特に、休日をアクティブに過ごされているお話は驚くとともに感動いたしました。
素敵な趣味があるからこそ、いつもお元気で活躍されているのだと実感しました。
また、貴社の皆様とも親睦を深めることができましたこと、心から感謝申し上げます。ありがとうございました。
これからも、より一層気持ちを新たに貴社のお役に立てるよう努めてまいります。
引き続き、変わらぬお付き合いをどうぞよろしくお願いいたします。
◆ここがポイント◆
具体的に、ごちそうになった料理やお店の感想を伝えると、会場を手配した相手は喜んでくれます。また食事会の場で印象的だった相手の言葉や振る舞いに触れ、今後の意気込みを添えてまとめましょう。
心に響くお礼メールの例文【アンケートの回答】
3.アンケートの回答に対するお礼
件名:アンケート調査ご協力のお礼(△△・◯◯◯◯)
△△株式会社
◯◯◯◯様
◯◯様、平素より大変お世話になっております。
株式会社△△の◯◯◯◯です。
昨日はお忙しい中、弊社のアンケート調査にご協力くださり誠にありがとうございました。
◯◯様のおかげさまで、多くの貴重なご意見を頂戴することができました。
特に、◯◯様におかれましてはスピーディーにご対応くださり、また弊社のためにご指摘くださいましたこと、心からありがたく存じます。
◯◯様をはじめ、皆様からのご意見をもとに、より高度な専門スキルを提供してまいる所存でございます。
今後もお気づきの点などがございましたら、お気軽にお聞かせいただければ幸いに存じます。
引き続き、どうぞよろしくお願い申し上げます。
◆ここがポイント◆
頂いた回答を、今後どのように生かすかを伝えます。文面に相手の名前を入れることで、相手のためだけに作成されたメールという特別な印象が伝わります。また相手の名前を「呼ぶ/呼ばれる」ことは心理学上、社会的報酬を「与える/受ける」関係を意味しており非常に大切です。
心に響くお礼メールの例文【契約】
4.契約のお礼
件名:新規契約のお礼です(△△・◯◯◯◯)
△△株式会社
◯◯◯◯様
◯◯様、平素より大変お世話になっております。
株式会社△△の◯◯◯◯です。
この度は弊社の企画案を採用してくださり、誠にありがとうございます。
弊社の新規案は、顧客のニーズと貴社のご要望を満たすものと恐れながら自負しております。
今回いち早く、貴社にご利用いただける運びとなり、担当者一同大変喜んでおります。
なお、ご不明な点などございましたら、何なりと私または担当の◯◯までお申し付けくださいませ。
至らぬ点もあるかとは存じますが、全力で取り組んでまいりますので、変わらぬご愛顧のほどよろしくお願いいたします。
◆ここがポイント◆
契約が決まったことへのお礼と、今後の長い付き合いに対してあいさつを忘れないようにします。また謙遜は大切ですが、へりくだり過ぎると頼りない印象を与えてしまうため、表現には気をつけたいところです。
お礼メールで人間関係を円滑に
「お礼メールで大切なことは、多忙中にもかかわらず貴重な時間を割いてもらった相手に、率直に感謝の気持ちを伝えることです。また相手のことを思い、自分と相手だけが共有した話題を入れると、さらに相手へと気持ちが伝わるでしょう。お礼メールはできるだけ早く送り、ビジネススキルとして丁寧にこなすことで、人間関係が円滑になり、あなたへの評価だけでなく会社のイメージアップにもつながります」(川道さん)
(オトナンサー編集部)
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