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自分も大丈夫だろう…大勢が密集するニュース映像は“逆に”外出を促さないか

新型コロナウイルス感染拡大の注意喚起のため、大勢の人たちが密集する光景がテレビなどで流れますが、逆に外出を促すことにならないのでしょうか。専門家に聞きました。

「ステイホーム」はすっかり定着したが…
「ステイホーム」はすっかり定着したが…

 連日、新型コロナウイルスに関する報道が流れています。その中には、神奈川県の江の島周辺でサーフィンをする人たちや、地元の商店街で大勢の人たちが歩いている姿などを映し出し、「こんなに外出自粛をしていない人たちがいる」と言わんばかりの報道が度々見られました。

 今後、緊急事態宣言解除で繁華街などの人出が増えれば、「新型コロナウイルス感染症の第2波の感染拡大が心配」として、大勢の人たちが密集する光景を伝える可能性がありますが、こうした伝え方を頻繁に行うと、「他の人も外出しているのだから、自分も大丈夫だろう」という心理になり、逆に外出を促してしまうことにならないでしょうか。

 心理カウンセラーの小日向るり子さんに聞きました。

「同調」は不確かなものに強く働く

Q.外出自粛を全面的に緩めない方がよいという風潮がある中で、メディアが外出中の大勢の人を映し出して度々報道することは、「他の人も外出しているのだから、自分も大丈夫だろう」という心理にさせませんか。

小日向さん「同調を誘発するという意味で『自分も大丈夫だろう』という思いにさせやすいと思います。『同調』という言葉は、賛成と同義で日常的に使われる言葉ですが、心理学の『同調』の意味は『人は集団や他者との間において、たとえそれが自分の考えや価値観と異なるものであっても周囲に合わせて行動を変容させる』という人間の心理メカニズムを指します。

今回の件に当てはめると、自分自身はまだ外出を自粛した方がよいと思っていても、報道などで多くの人が外出している映像を見ると、『みんなが外出しているのだから、自分だって大丈夫だろう』という心理が働きやすくなるということになります。特に『同調』は不確かなものに対しては、より働きが強くなります。その意味でも、未知の新型コロナウイルスに対しては、より同調心理が働きやすくなってしまうのです」

Q.メディアが外出自粛を促すために、外出自粛をしていない人に焦点を当てて伝えることは、逆に外出を促すことにつながる誤った伝え方でしょうか。

小日向さん「先述したように『同調』を加速させるという意味では、誤った報道の仕方だと考えます。ただ、『非常識な人を報道することでそれを見る人たちの正義感に訴えかけたい』という意図が報道側にあるとしたら、心理的動機付けの方向性としては誤っていないと思います。

しかし、最近はその正義感が暴走して、『自粛警察』といわれるような、他者を不快や恐怖に陥れる言動をする人も出てきました。さらに、それを報道することで、自粛警察への同調心理を加速させるという負のスパイラルが起きる恐れも出ています」

Q.では、逆に外出自粛を忠実に守る人たちを数多く報道すれば、世の中の人は心理的に「外出自粛を守らないといけない」と思わせる効果を生むでしょうか。

小日向さん「同調心理からすると、効果はあるといえると思います。ただ、『外出自粛を守らなければいけない』だと、心理的な圧迫を感じてストレス増加につながる可能性があるため、できるだけ『外出自粛の生活でも楽しいことはたくさんあるよ』というポジティブな心理を促すような報道の仕方の方が望ましいと考えます。

具体的には、自粛生活で新しい趣味を見つけた人を紹介したり、満員電車からの解放を改めて意識付けするような映像(before/after画像など)を放映したりする、といったものです」

Q.今後、第2波の感染拡大が起きると再度、外出自粛を強く要請される可能性もあります。流行下で素直に「外出を自粛しよう」と思うのは、どういう心理状態になったときだと思われますか。

小日向さん「最も手軽な方法は罰則を与えることも含め、人間の恐怖感情を刺激することです。実際に、罰則を設けて人々の恐怖感情を刺激し、外出自粛を要請している国もあります。

ただ、このやり方は『ある事象』において短時間、単発で用いられる場合は効果の方が大きいのですが、それが成功体験となって適用事例が広がったり、長期間にわたってしまったりすると、長い目で見ると暴力的な感情を誘発しやすくなります。罰則を与えることは、ストレスがかかることとセットだからです」

Q.「外出を自粛しよう」という心理状態に多くの人をさせるには、どのような呼び掛け、あるいは報道が望ましいでしょうか。

小日向さん「先述したのは、ネガティブな方向での『同調』の作動ですが、同調は多数派に傾くという心理なので、ポジティブな方向で活用することも可能です。外出自粛といったネガティブな事象を、同様の感情に結び付けてあおることは簡単です。その部分をいかにして人々の前向きな言動に結び付けるかを考えて報道することが、メディアの腕の見せどころだと思います。

そして、もう一つ。人間には『好きな○○さんが言うことだから自分も賛成!』というように、自分が好感を抱いている人物の期待に沿うように行動してしまう心理があります。従って、メディアで発信力を持つ人は発言に責任を持つことが大切です。

あるいは、世の中の人々のストレス値が高くなっていると思われるときは、できる限り刺激を避けることも重要な対処法です。多くの人に影響を与える可能性が高いコメンテーターの出演を一時的に制限し、事実のみを粛々と報道するという選択もアリなのではないでしょうか」

(オトナンサー編集部)

小日向るり子(こひなた・るりこ)

心理カウンセラー

カウンセリングスペース「フィールマインド」代表。出版社で働きながらボランティアで電話相談員を始めたことが、カウンセリングの世界に入るきっかけに。資格取得後、行政機関でのセクハラ相談員を経て、2012年に独立。2019年4月現在、約3500件の相談実績を持つ。メディア、ネットなどで心理・恋愛系コラムを多数執筆。フィールマインド(http://feel-mind.net/)。

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