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信念なき地方自治、首長は「ホラ吹いてもウソつくな」【前編】

理想のためには、住民への規制強化やむなし

 現代の首長で、理想実現のために住民へ我慢を強いると明言する首長がいるでしょうか。住民のご機嫌を取るというのは言い過ぎかもしれませんが、過度に住民の意向に配慮する人が多いように見受けられます。父の町政は、現在の一般的な首長のスタイルと真逆で、住民に我慢を強いることを恐れませんでした。町を「小田原に次ぐ田園都市」へ飛躍させるという高い理想を優先し、住民への規制強化やむなしと判断したのです。

 開成町の6.55平方キロメートルという狭い町域を3分割し、町北部は田園空間を整備・保全し、中部は住居区域として整備、南部は新駅を中心として新たに新都市を開発するという、現在も堅持されている土地利用構想として、全町域都市計画編入は結実しました。特に、町北部にある水田の区画を大きくして田園空間として整備し、万が一の食糧危機に備えるという構想に特色があります。

 開発一辺倒の時代に土地利用の規制をするだけでなく、農業の基盤を守るという発想があったことに驚かざるを得ません。整備された水田のあぜ道には、今ではアジサイが植栽され、公園のような美しい景観となっています。6月の「開成町あじさいまつり」の期間中は、20万人以上の観光客が訪れているのです。

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露木順一(つゆき・じゅんいち)

日本大学総合科学研究所教授・元神奈川県開成町長

1955年神奈川県開成町生まれ。東京大学教育学部卒。1979年NHK入局。政治部記者を長く務める。1998年2月から2011年3月まで神奈川県開成町長。人口増加率と合計特殊出生率において、県下トップクラスの町に発展させる。これらの実績の結果、2007年4月から内閣府地方分権改革推進委員会委員を務める。

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