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信念なき地方自治、首長は「ホラ吹いてもウソつくな」【前編】

小田急線新駅が開業したのは、死後の翌年

 しかし、こうしたまちづくりが町民大多数の賛同を得たわけではありません。父は5期20年の町長在職期間のうち、無投票当選はわずか1回だけでした。残り4回は激しい選挙戦を戦っています。最初の選挙は7票差。「ほら甚」と揶揄(やゆ)されながらも、理想の旗を降ろすことなく突き進む政治手法が反発を受けるのは、保守的な政治風土の中にあっては致し方のないことでした。

 父は1983年に勇退し、翌年の4月に急死しました。町長時代の心労がこたえたのだと思います。夢にまで見た小田急線新駅が開業したのは、その翌年1985年3月のことでした。

 父の進めてきたまちづくりを振り返ると、「先憂後楽」という、中国・宋時代の政治家の言葉が思い出されます。政治家たるもの、憂いの種を先に取り除き、楽しむのは一番最後だという、政治家としての戒めです。今日、この戒めをモットーとして、まちづくりに全身全霊で打ち込んでいる首長が何人いるかと思うと、暗たんたる気持ちになります。

「地方創生」が叫ばれて久しいにもかかわらず、その実がなかなかならないのは、首長の基本姿勢に原因があるのだと思えてなりません。

(日本大学総合科学研究所教授・元神奈川県開成町長 露木順一)

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露木順一(つゆき・じゅんいち)

日本大学総合科学研究所教授・元神奈川県開成町長

1955年神奈川県開成町生まれ。東京大学教育学部卒。1979年NHK入局。政治部記者を長く務める。1998年2月から2011年3月まで神奈川県開成町長。人口増加率と合計特殊出生率において、県下トップクラスの町に発展させる。これらの実績の結果、2007年4月から内閣府地方分権改革推進委員会委員を務める。

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