オトナンサー|オトナの教養エンタメバラエティー

信念なき地方自治、首長は「ホラ吹いてもウソつくな」【前編】

大風呂敷の背後にあった、不退転の戦略

 しかし、父には戦略と戦術がありました。ホラを単なるホラで終わらせ、ウソにしないための算段を考えていたのです。町長就任のわずか2年後、東京五輪が終わった翌年の1965年のこと。都市計画法が制定され、日本で初めて都市計画に基づいた計画的なまちづくりが全国展開されました。市街化区域と市街化調整区域に分割して、まちづくりを計画的に進めることで乱開発を防ごうというものです。

 父は、事実上水田しかない開成町の全町域を都市計画区域に編入すると宣言し、断行しました。建設省(当時)の規準では、都市計画設定の条件は人口1万人以上でした。1万人未満ではとても対応できない、と見ていたに違いありません。ところが父は、6000人強の町の都市計画区域編入を建設省に認めさせたのです。普通は、相手にされないはずですが、並々ならぬ気迫で押しまくった結果だと思います。

 全町域の都市計画編入が決定された1965年12月の「広報かいせい」の記事が、これまた驚くべき内容です。全町域が都市計画区域に編入されたので、「理想的な田園都市の建設を推進する」と宣言した上で、「強い規制が住民の方に直接関係します」と述べて、強引に協力を要請しています。この記事を見て私は仰天しました。

1 2 3 4

露木順一(つゆき・じゅんいち)

日本大学総合科学研究所教授・元神奈川県開成町長

1955年神奈川県開成町生まれ。東京大学教育学部卒。1979年NHK入局。政治部記者を長く務める。1998年2月から2011年3月まで神奈川県開成町長。人口増加率と合計特殊出生率において、県下トップクラスの町に発展させる。これらの実績の結果、2007年4月から内閣府地方分権改革推進委員会委員を務める。

コメント