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コロナで雇用不安 一刻も早く学校を正常化し、「貧困の連鎖」抑止を

大学入試改革など高等教育を中心にしたさまざまな問題について、教育ジャーナリストである筆者が解説します。

休校を受けて、子ども用の学習ドリルを選ぶ母親(2020年3月、時事)
休校を受けて、子ども用の学習ドリルを選ぶ母親(2020年3月、時事)

 新型コロナウイルス感染症は、安倍晋三首相が「大恐慌の時よりも精神的には厳しい」(4月28日の衆院予算委員会答弁)と言うほど、経済活動にも大打撃を与えています。

 とりわけ深刻なのが、もともと貧困状態に置かれていた家庭の雇用不安です。学校の休校措置も長引く中、「貧困の連鎖」を生み出さないためにも、子どもの貧困対策が急務になっています。

進学や健康面でも不利な状態に

 新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく緊急事態宣言を出すかどうかが焦点になっていたさなかの3月25日、内閣府の「子供の貧困対策に関する有識者会議」が持ち回りで開催され、同31日に2019年度の「子供の貧困実態調査に関する研究 報告書」が公表されました。

 2013年の「子どもの貧困対策推進法」成立以来、政府は「子供の貧困対策大綱」を定めるなど対策を強化しています。研究もその一環として行ったもので、北海道から沖縄までの6道府県と14市町が行った子どもと親のアンケート結果を集め、分析しています。

 共通する質問項目を見ると、例えば、親が希望する子どもの進学先として「中学まで」、または「高校まで」と回答した割合は、調査した自治体のすべてで、非困窮世帯(生活に困っていない家庭)よりも、困窮世帯(生活に困っている家庭)の方が高くなっています。3.8倍の差が開いた自治体もありました。

 同様に、困窮世帯では▽父親の仕事は非正規が多い(最大9.2倍)▽親の健康状態はよくない(最大3.9倍)▽子どもの健康状態もよくない(最大3.5倍)▽親に頼れる相手がいない(最大5.3倍)――という実態が浮き彫りになっています。

 報告書では、全国共通で調査する際の項目案も作成しています。一刻も早く全国規模で実態を明らかにし、効果的な施策を打つ必要があります。

学校は連鎖を断ち切る「基盤」

 家庭の貧困は、現在だけの問題ではありません。貧困家庭に育った子どもが、安心できる環境の下で十分な学力を付けることができず、経済的理由も相まって進学を諦め、満足な就職もできず、自身も貧困に陥ってしまう――。将来にわたって続くのが「貧困の連鎖」です。

 貧困の連鎖を断ち切るには、教育に投資するのが最も効果が高いと言われています。高い教育機会を得ることは、個人にとって利益になるだけでなく、市民として、納税者として貢献してもらえるため、社会全体にとっても利益となるからです。

 また、学校は福祉部門をはじめ、関係機関とのつながりもあります。だからこそ政府の「子供の貧困対策大綱」では、学校を「地域に開かれた子供の貧困対策のプラットフォーム(基盤)」と位置付けているのです。

 その点でも、休校措置が長引いているのは残念です。子どものちょっとした表情から、心情や生活の変化に気付くことができるのが、教師の専門性の一つです。

 また、不利な社会・経済的背景に置かれた家庭を多く抱えているにもかかわらず、想定される以上の学力を付けさせている「学力格差を克服している学校」(力のある学校、効果のある学校)が存在することも、全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)の分析から裏付けられています。

 一刻も早く、学校の教育活動を正常化させるだけでなく、さらなる格差拡大の時代に備え、貧困対策のプラットフォームとしての役割をますます強化することが求められます。

(教育ジャーナリスト 渡辺敦司)

渡辺敦司(わたなべ・あつし)

教育ジャーナリスト

1964年、北海道生まれ、横浜国立大学教育学部卒。日本教育新聞記者(旧文部省など担当)を経て1998年より現職。教育専門誌・サイトを中心に取材・執筆多数。

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