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「免許更新制」7月廃止で教員負担は本当に軽減? 国会が“注文”付けた意味

教育を巡るさまざまな問題について、教育ジャーナリストである筆者が解説します。

「教員免許更新制」廃止でどうなる?
「教員免許更新制」廃止でどうなる?

 参院選が7月10日投開票の日程で行われます。近年は少子化もあって、教育問題が大きな争点として注目されることは少なくなりましたが、将来の社会の担い手が少なくなるからこそ、一人一人の生産性を高める教育の重要性は逆に高まるはずです。それには、教育に携わる教員の役割がますます重要になります。「教員の質」を巡っては5月11日、「教員免許更新制」を廃止するための改正法案が、参院で可決・成立しました。今後の教員政策はどうなるのでしょうか。

7月1日で「10年」の有効期限なくなる

 成立したのは「教育公務員特例法および教育職員免許法の一部を改正する法律」という、主に2本の法律と、関連法を一括で改正するものです。このうち更新制の廃止に関するのは後者の「教免法」で、施行日の7月1日時点で有効な教員免許状は、自動的に「10年」の有効期限がなくなり、更新講習を受ける必要も当然なくなります。

 一方、国会論戦では、むしろ前者の「特例法」に焦点が当たりました。中央教育審議会(文部科学相の諮問機関)の特別部会は審議まとめ(2021年11月)で更新制の「発展的解消」策として「研修受講履歴管理システム(仮称)」を打ち出しており、特例法はこれに関係する規定を盛り込んだものです。

 具体的には、教員の任命権者である教育委員会が、教員ごとに研修記録を作成するとともに、資質向上につながる研修を受けるよう、指導助言を行うことを義務付けています。

国会からの「注文」とは

 改正法には、衆議院で7項目、参議院で8項目の「付帯決議」が行われました。法的効力を持つものではありませんが、その後の運用に国会として注文を付ける意味があります。両院の付帯決議のうち、7項目の趣旨はほとんど同じです。

 衆議院の付帯決議の概要は次の通りです。

(1)指導助言は教員の意欲・主体性と調和したものが前提で、十分に教員等の意向をくみ取って実施すること
(2)オンデマンド型を含めた職務としての研修は、勤務時間内に実施され、費用負担がないこと
(3)教委は、教員の資質の向上につながり、子どもの実態に即して教員が必要とする研修を実施すること
(4)多忙化をもたらすことがないよう十分留意するとともに、働き方改革の推進に向けて実効性ある施策を講ずること。教員から報告を求める場合には、負担増とならないように留意すること
(5)研修記録は、校内研修・授業研究、勤務場所を離れて行う研修も記載対象とすること
(6)研修記録の作成や指導助言は、人事評価制度と趣旨・目的が異なることを周知すること
(7)教師不足を解消するためにも、免許状を失効している者が申し出て再度免許状が授与されることに広報等で十分周知を図るとともに、事務手続の簡素化を図ること

以上です。参議院では、臨時的任用教員にも研修機会を確保するよう、項目を加えました。

「研修履歴システム」のガイドラインが次の焦点

 研修履歴システムは、個々の教員が受けた研修の内容を、デジタルで一元的に記録することを想定しています。それを基に指導助言を行いますが、中教審特別部会の審議まとめでは、期待される水準の研修を受けているとは「到底認められない」場合には、職務命令で研修を受講させることもあり得ること、それでも研修を受けないような「必ずしも主体性を有しない教師」は懲戒処分の要件にも当たり得るとの考えを示しています。この点は法案には盛り込まれず、文部科学省が今後、ガイドラインで示すことにしました。

 国会では、更新制廃止後の同システムをしっかり運用して教員の質を担保すべきだという意見と、慎重な運用を求める意見が出された結果、先のような付帯決議に落ち着きました。

 参院選の結果は、ガイドラインの書きぶりにも影響を与えるとみられます。そうした観点からも、各党の主張に耳を傾ける必要があるでしょう。

(教育ジャーナリスト 渡辺敦司)

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渡辺敦司(わたなべ・あつし)

教育ジャーナリスト

1964年、北海道生まれ、横浜国立大学教育学部卒。日本教育新聞記者(旧文部省など担当)を経て1998年より現職。教育専門誌・サイトを中心に取材・執筆多数。9月にも「学習指導要領『次期改訂』をどうする―検証 教育課程改革―」(ジダイ社
)を刊行予定。

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