必要性叫ばれる「発熱外来」とは 大規模病院でも設置少ない?
「発熱外来」の設置が叫ばれていますが、総合病院などある程度の規模の病院でも、必ず発熱外来があるとは限らないようです。なぜでしょうか。
新型コロナウイルス感染症について伝えるテレビの情報番組を見ていると、「発熱外来を早くつくった方がよい」と訴える専門家がいます。新型コロナ感染が疑われる人が通常通りに病院を受診すると、院内感染を引き起こす可能性があり、特別な方法で診察する必要があるとされているからです。しかし、総合病院などある程度の規模がある病院でも、「発熱外来」がある病院はまだ少数のようです。なぜでしょうか。
内科医の市原由美江さんに聞きました。
受診急ぐ人への苦肉の策
Q.「発熱外来」とは何ですか。以前からも存在していたのでしょうか。
市原さん「発熱外来とは、主に感染症が流行している時期に設置する診察用の施設のことです。通常の内科や外科などの診療科ではありません。通常、感染症を他の患者さんにうつすことなく診断する目的で設置されます。臨時に設けるケースが多いので、病院内の空きスペースを使ったり、仮設の建物やテントを使ったりすることもあります。
新型コロナウイルス感染症が拡大してから、よく聞くようになったかもしれませんが、実は以前にも発熱外来が設置されたことはあります。新型インフルエンザが流行した2009年にも、発熱外来が多く設置されました」
Q.発熱外来がある病院では、発熱があれば、とにかく発熱外来で受診するようになるのですか。
市原さん「発熱している人が全員、発熱外来を受診するというのは間違いです。虫垂炎や胆のう炎など他の病気で発熱することもあるためです。受診対象者は、発熱に加えて呼吸器症状がある人です。
息苦しさや強い倦怠(けんたい)感がなければ、自宅待機、不安なときはコールセンターに相談することが今求められていますが、それに応じることができずに、どうしても病院を受診したいと訴える患者さんが数多くいます。そういう人が病院に押し寄せて感染を広げてしまうことを防ぐために、苦肉の策として発熱外来を設置するケースが多いです。
風邪症状のみの場合、つまり、発熱はあるものの息苦しさや強い倦怠感がなく、症状が軽い場合は、受診せずにまずは自宅で安静にすることが大切です。症状が軽いのに発熱外来を受診すると、本当は風邪だったのに病院で新型コロナウイルスに感染する可能性もあります」
Q.発熱外来を設置したことが、よくニュースで報道されます。総合病院など規模の大きな病院でも、発熱外来が設置されている病院は少ないのでしょうか。
市原さん「発熱外来を設置するためには、マスクやアイガード、防護服などの医療資材が必要になります。現時点では、これらの資材の供給が不足しているため、発熱外来を設置することができない病院はあると思います」
Q.報道では、発熱外来を設置することに対する問題点はほとんど伝えられません。発熱外来の設置に問題はないのでしょうか。
市原さん「発熱外来だからといって、安心できるわけでも万能なわけでもありません。院内感染を起こさないために設置することは望まれますが、問題もあります。受診した患者さん1人ごとに、マスクや防護服などを交換することは現実的ではないですし、同じ医療従事者が複数の患者さんに接することで、二次感染を起こす可能性もあります。
これは、ドライブスルーでのPCR検査でも同じです。この点からも、軽症の患者さんは自宅待機の必要性があると思います。また、『発熱外来を開設』と大々的に掲げると、本来なら自宅療養していた人がわざわざ受診する可能性も増えます」
Q.もし、新型コロナに感染したと思ったとき、病院を受診する際には、発熱外来のある病院に直接行ってもよいのでしょうか。
市原さん「いいえ。まずは、各都道府県に設置してあるコールセンターに相談してください」
(オトナンサー編集部)
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