ドル高是正へ? 「新プラザ合意」の可能性はあるのか
悪影響は、現在の方がはるかに大きい
現在の米貿易赤字の半分近くは対中国分です。したがって、政策協調に中国が加わることが不可欠でしょう。ただし、4月の米財務省為替報告は、トランプ大統領の公約に反して、中国を為替操作国に認定しませんでした。また、トランプ大統領は、北朝鮮に対して強硬姿勢を取るなかで、中国に協力するよう圧力をかけており、為替・通商問題は後回しにすることを示唆しています。
そして、ドル高是正をうまくソフトランディングさせられる保証はありません。プラザ合意も当初10%程度の調整を狙って協調介入が行われたとされますが、その後、ドル安に歯止めがかからなくなりました。為替相場の安定を狙った1987年2月のルーブル合意も奏功せず、ドルが1988年4月にいったん底打ちするまで、プラザ合意から30%近くも下落しました。
最後に、ドルが下落した場合の悪影響は、現在の方がはるかに大きいかもしれません。1985年当時、米国債発行残高に占める外国人保有比率は13%。現在はそれが40%近くになっています。当局によるドル高是正(ドル安誘導)が明らかになれば、外国資金は米国債市場から流出するでしょう。それは米国債価格の急落(=市場金利の急騰)を招きかねず、米経済に大きな打撃となりうるでしょう。
ところで、トランプ大統領は、1988年から1995年にかけて、プラザ・ホテルの全部または一部を所有していました。“浅からぬ因縁”と言えるかもしれません。
(株式会社マネースクウェア・ジャパン チーフエコノミスト 西田明弘)
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