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ドル高是正へ? 「新プラザ合意」の可能性はあるのか

プラザ合意の再現が難しい理由

 今回、プラザ合意の再現が難しいと考える理由はいくつかあります。

 まず、ドル高が行き過ぎているとは言い切れない点です。現在のドル実効レートは、黒田日銀の量的緩和第1弾によってドル高・円安が始まる直前と比べて、30%弱しか上昇していません。トランプ政権誕生時からは3%の上昇にとどまります。

 そもそも、米企業収益が好調で、ダウ工業株30種平均が最高値圏にあるなかで、産業空洞化が懸念されるほどのドル高になっているとは考えにくいものがあります。また、景気循環的にみても、完全雇用がほぼ達成されている状況で、一段の景気刺激につながるドル安は必要ないでしょう。

 次に、トランプ大統領が主張する国防費の増額や大規模減税はまだ実現していません。レーガノミクスにも擬せられる「トランプノミクス」が実現して、あるいは現実味を帯びてドルが高騰した時こそ、何らかの対応が必要になるのかもしれません。

 また、少数の主要先進国間で政策協調しても、かつてほどの意義はないでしょう。1985年当時、米貿易赤字のうち約4割が対日分であり、対日独仏英の4カ国分で5割以上を占めました。ところが2016年は、米貿易赤字に占める4カ国のシェアは2割に過ぎません。

 したがって、現在の政策協調は、主要国間だけでなく、新興国も加わったG20などの場で包括的に行われる必要があるでしょう。利害関係者が増える分、調整が難しいのは言うまでもありません。

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西田明弘(にしだ・あきひろ)

株式会社マネースクウェア・ジャパン(M2J)市場調査部チーフエコノミスト

1984年日興リサーチセンター入社。米ブルッキングス研究所客員研究員などを経て、三菱UFJモルガン・スタンレー証券入社。チーフエコノミスト、シニア債券ストラテジストとして高い評価を得る。2012年9月マネースクウェア・ジャパン(M2J)入社。現在、M2Jのウェブサイトで「市場調査部レポート」「市場調査部エクスプレス」「今月の特集」など多数のレポートを配信するほか、テレビ・雑誌などさまざまなメディアに出演し活躍中。株式会社マネースクウェア・ジャパン(M2J)(http://www.m2j.co.jp)。

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