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激務支社で怒られ続けた42歳男性、「異動」で見つけた新しい自分

アラフォー世代の中には、新年度の異動で生活環境が大きく変わる人もいると思います。不安を抱きがちですが、新しい発見も。異動したからこそ気付いたエピソードを紹介します。

異動には期待や不安がつきもの
異動には期待や不安がつきもの

「○○支社勤務を命ず」などと会社が出す異動辞令は、字面こそあっさりしていますが、受け取る側の胸中は期待や不安でざわつくことでしょう。それが転勤を含む異動となればなおさらです。アラフォー既婚者となると、転勤先に家族を連れていくのかどうかという問題もあります。いくつかのエピソードを紹介します。

転勤で気付いた自分のポテンシャル

 金融関連企業の営業職Aさん(42歳男性)は、都心の支社勤務。「なるべくそつなくこなす」という姿勢で仕事をしていましたが、都心の支社は本社からの期待が高く、営業ノルマが高めに設定されていました。このノルマをこなすべく、支社の社員は毎日、必死に仕事をしており、優秀な営業成績の社員が何人かいましたが、Aさんはそうではありませんでした。ノルマについていくので精いっぱいでした。

 はつらつとした性格ではなく、無口だったためか、周囲に「ぼんやりしている」という印象を与えていました。いつも上司から「気が利かない。ボーっとしている。仕事ができない」と叱責(しっせき)を受けていて、何度も叱責されることから、Aさん自身も「自分は仕事ができない」と思い込んでいました。

 そんなAさんに、都心近郊の支社への異動辞令が出ました。通勤時間は片道40分ほど増えますが、自宅から通える範囲だったので引っ越しはせず、家族の負担はありませんでした。

「転勤前の職場はかなりストレスだったみたいで、会社の帰り道に寄った公園で気が付けば何時間も放心している、といったことがよくありました。辞令を受けて、『これからどうなるか分からない』という不安はありましたが、少なくとも都心の支店よりはのんびりしているだろうと考えていました」(Aさん)

 転勤先は予想通り、大変のんびりした雰囲気の職場でした。ノルマも一応あるのですが、前の支社に比べれば大したことはありません。勤める人たちもおおらかで、忙しさで殺気立っていた前の職場に比べれば「本当に同じ会社なのか」と思えるほどでした。

 新天地で改めて「そつなく」仕事を始めたAさんでしたが、課せられたノルマを拍子抜けするほどあっさり片付けてしまいました。残り時間を喫茶店にでも行ってつぶそうかとも考えましたが、せっかくなので仕事に精を出してみたところ、数字が面白いほど伸びていきます。周囲は「さすが、都心の支社から来た精鋭は違う」と感嘆しました。

 転勤後最初の月が終わって、Aさんの営業成績は文句なしのトップ。翌月の成績も、最初の月がまぐれではなく正真正銘の実力によるものであることを証明する数字でした。Aさんはすっかり支社のエースになっていました。

「都心の支社の前も長い間、仕事が忙しい支社に身を置いていて、そこでもこんな成果を上げたことはありませんでした。今の、のんびりした支社でこうして成果が出せて、びっくりすると同時にうれしいです。ただの“お山の大将”だとも思うのですが、怒られるよりは褒められる方が圧倒的にいいので満足しています。転勤万歳です」(Aさん)

 Aさんは、転勤によって自分も知らなかった潜在能力が開花しました。都心の支社で鍛えられてきた経験も武器となったでしょうし、緊張感の中で働くよりも、伸び伸びした環境の方が能力を発揮できるタイプだったのかもしれません。

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武藤弘樹(むとう・こうき)

フリーライター

早稲田大学第一文学部卒。広告代理店社員、トラック運転手、築地市場内の魚介類卸売店勤務などさまざまな職歴を重ね、現在はライターとミュージシャンとして活動。1児の父で、溺愛しすぎている飼い猫とは、ほぼ共依存の関係にあるが本来は犬派。趣味はゲームと人間観察。

geetara610@gmail.com

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