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トランプ大統領が“辞める”可能性はあるのか

重大犯罪への関与が発覚すれば…

 現職の大統領を、その意思にかかわらず辞任させるために、弾劾手続きが存在します。それは以下のようなプロセスです。

 大統領が重大な犯罪に関与したとして、下院が過半数の賛成をもって訴追を決定します。それにより、上院で弾劾裁判が行われます。それは通常の裁判と同様に進められ、上院議員が陪審員の役割を果たします。そして、訴追案件に関して、上院の3分の2以上(67人以上)が有罪と判断すれば、大統領は職を解かれることになります。

 過去に弾劾された大統領は2人。1868年のアンドリュー・ジョンソン大統領と、1998年のビル・クリントン大統領です。いずれも下院で訴追されましたが、上院で「有罪ではない」と判断されました。研修生との「不適切な関係」に関連して、偽証と司法妨害に問われたクリントン大統領のケースでは、偽証について50人、司法妨害については45人が「有罪」と判断しましたが、いずれも67人に届きませんでした。クリントン大統領と同じ民主党の議員は全員が「有罪ではない」との判断でした。

 1974年のニクソン大統領のケースは、弾劾裁判が不可避の状況下で、下院が訴追を決定する直前の辞任でした。

 以上から、トランプ大統領が辞任に追い込まれるとすれば、弾劾裁判に値する重大な犯罪への関与が発覚し、さらに共和党議員も含めて大半の議員が「有罪」と判断するのに十分な証拠がそろうケースでしょう。現段階で、可能性は限りなくゼロに近いと言わざるをえません。

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西田明弘(にしだ・あきひろ)

株式会社マネースクウェア・ジャパン(M2J)市場調査部チーフエコノミスト

1984年日興リサーチセンター入社。米ブルッキングス研究所客員研究員などを経て、三菱UFJモルガン・スタンレー証券入社。チーフエコノミスト、シニア債券ストラテジストとして高い評価を得る。2012年9月マネースクウェア・ジャパン(M2J)入社。現在、M2Jのウェブサイトで「市場調査部レポート」「市場調査部エクスプレス」「今月の特集」など多数のレポートを配信するほか、テレビ・雑誌などさまざまなメディアに出演し活躍中。株式会社マネースクウェア・ジャパン(M2J)(http://www.m2j.co.jp)。

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