トランプ大統領が“辞める”可能性はあるのか
大統領の「職務遂行能力」を問う
実は、大統領の意思に反して、副大統領が職務を代行するケースがもう一つあります。それは、合衆国憲法修正第25条第4節の規定です。これによると、副大統領と閣僚らの過半数とが議会に対して、大統領に職務遂行能力がないと申し立てれば、副大統領がただちに大統領代行として職務を遂行できます。
その後、大統領が自身に職務遂行能力があると申し立てれば、再び職務を遂行できます。これに対して、副大統領と閣僚らの過半数とが4日以内に改めて議会に対して申し立てを行い、そこから21日以内に議会の3分の2以上が大統領に職務遂行能力がないと判断すれば、副大統領は大統領代行を続けることができます。つまり、大統領は復帰できません。なお、結論が出るまでの間は、副大統領が大統領代行を続けます。
さすがに、そこまで行くのは絵空事のような話であり、実際に「第4節」が発動されたことは過去に一度もありません。トランプ大統領が心変わりして政権を放り出すことのほうが、まだ現実味があるようにさえ思えます。
ところで、大統領の継承順位は、合衆国憲法やその他の法律で細かに定められています。大統領→副大統領→下院議長→上院議長代行(上院議長は副大統領が兼務するため)→国務長官→財務長官→国防長官→…と続きます。国務長官以下は各省の創設順であり、したがって、最後は国土安全保障長官の順となります。もっとも過去に下院議長以下が大統領に昇格したことはありませんが。
(株式会社マネースクウェア・ジャパン チーフエコノミスト 西田明弘)
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