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「がん」を自分事として考えよう 健康なときこそ定期的に「がん検診」を

5つの「がん検診」

 国が“がん対策”として推奨し、市区町村が実施する「がん検診」は、がんを見つける目的で行われます。胃がん、肺がん、大腸がん、乳がん、子宮頸がんの5つのがんで実施されており、これによって死亡率が下がることが証明されています。ほとんどの自治体で費用補助があり、対象年齢になると、安い費用か無料で受けられます(職場の健診を受けられる人は対象外の場合も)。

 胃がん検診は、50歳以上の男女が対象で2年に1度。いわゆる“胃カメラ”と呼ばれる「内視鏡検査」、あるいは“バリウム検査”とも呼ばれる「胃エックス線撮影検査(当分の間、40歳以上、1年に1度の実施も可)」を選択します。

 肺がん検診は、40歳以上の男女が対象で1年に1度。「肺エックス線撮影検査」と、リスクが高い人(50歳以上で、1日の喫煙本数×喫煙年数=600以上)は「喀痰(かくたん)細胞診」という、朝起きた直後の痰を容器に3日分入れて提出し調べる検査をします。

 大腸がん検診は、40歳以上の男女が対象で1年に1度。2日分の便を少量提出し、出血の有無を調べる「便潜血検査」を実施します。

 乳がん検診は、40歳以上の女性が対象で2年に1度。専用のエックス線装置を使い、2枚の板で乳房を挟んで撮影する「マンモグラフィー検査」が推奨されています。子宮頸がん検診は、20歳以上の女性が対象で2年に1度。子宮入り口付近の粘膜を綿棒などでこすり取り、顕微鏡で細胞を調べる「細胞診」を行います。

 なお、勤務先で年に1度受ける健康診断には肺エックス線撮影検査が含まれていますし、胃エックス線撮影検査などを受診させる事業所もあります。任意で受ける人間ドックに、がんを見つけるための検査が含まれている場合もあります。

 しかし、健康診断にしても人間ドックにしても、必ずしも、がんを見つける検査を網羅しているわけではありません。勤務先の健診は、仕事をしても支障がない健康状態かを確認するのが主目的です。がんについて「勤務先で毎年健診を受けているから安心」とは限らないのです。一方、がん検診は先述の通り、がんを見つける目的で行われます。繰り返しますが、検診で死亡率が下がることも証明されています。

 なお、がん検診で異常が見つかったからといって、すべてががんというわけではありません。“がんがある可能性”を見つけるのががん検診なので、異常があれば放置せず、怖がらず、医療機関を受診し、詳しい検査を受けることが大切です。もし、がんであったとしても、早期発見、早期治療によって多くの人が社会復帰しています。

 また、対象の年齢でなくても、がんになる可能性はあります。気になる症状がある場合は、ためらうことなく医療機関を受診しましょう。特に、乳がんは20~30代でも気を付けるべき病気です。普段から自分の乳房に関心を持ち、定期的に自分でも触れて乳房の状態を知り、何か変化があったときに気付けるようにしておくことも早期発見のために大切なことです。

「世界がんデー」を機に、自分にできることから行動していきたいですね。

(医療ジャーナリスト 森まどか)

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森まどか(もり・まどか)

医療ジャーナリスト、キャスター

幼少の頃より、医院を開業する父や祖父を通して「地域に暮らす人たちのための医療」を身近に感じながら育つ。医療職には進まず、学習院大学法学部政治学科を卒業。2000年より、医療・健康・介護を専門とする放送局のキャスターとして、現場取材、医師、コメディカル、厚生労働省担当官との対談など数多くの医療番組に出演。医療コンテンツの企画・プロデュース、シンポジウムのコーディネーターなど幅広く活動している。自身が症例数の少ない病気で手術、長期入院をした経験から、「患者の視点」を大切に医師と患者の懸け橋となるような医療情報の発信を目指している。日本医学ジャーナリスト協会正会員、ピンクリボンアドバイザー。

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