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給食中の「もぐもぐタイム」は是か非か “食べる”プレッシャー感じる子も…

もぐもぐタイムのデメリット

 2019年12月22日に東京新聞で掲載された記事「黙々もぐもぐタイム 苦痛? 小学校給食に 続々保護者懸念」によると、「(中国新聞の調査で)広島市立の全142小学校にアンケートをしたところ、回答した106校のうち給食中に私語をしない時間を『設けている』『一部の学年、学級で設けている』としたのは71.7%の76校」と記されています。

 もぐもぐタイムは、広島県の隣の岡山県の教員らによる給食指導の手引書から広まったとされているので、中国地方では比較的広まっていると考えられますが、私が東京都内の学校の教師に講演・研修をするときに、「自分の学校(クラス)で、もぐもぐタイムを行っているという方は手を挙げてください」と質問すると、少なくとも3割程度は手が挙がります。

 もぐもぐタイムは、毎日さまざまな業務で忙しい教師にとって確かにメリットがあります。ルール化することで楽に指導でき、特に低学年などに多い、給食中のおしゃべりや注意散漫で食べるのが遅くなる児童への対応として有効だからです。

 一方で、デメリットもあります。例えば、人前でご飯を食べることができない「会食恐怖症」や、その手前のような状態になっている児童の場合、「食べなきゃいけない」というプレッシャーを感じたり、食べる雰囲気が重く暗くなったりすることで、さらに食べられなくなることもあるからです。

 私は、園や学校の教師の給食指導における悩み相談にも乗っていますが、もぐもぐタイムを実施しなくても給食の完食率が高いクラスは存在します。それを一言で表現すると、「子どもたちの食の個性を把握して、少しずつ苦手なものに挑戦させているクラス」です。

 また、たまに「隣のクラスの先生から、自分のクラスの残飯が多いことを指摘されている」という相談が届くこともありますが、そもそも、残飯を比較するのもどうなのかと思います。進級してクラス替えをするときに“食べられる子”と“食べられない子”をバランスよくクラス分けさせているわけではなく、その点において多少はばらつきが出るはずだからです。

 以上から、そもそも「完食させること」を学校給食の一番の目的とすべきではありませんし、そうしてしまうと、前半で紹介したような事例を招くことにもなりかねません。もぐもぐタイムを実施する場合、「食べなきゃ!」のプレッシャーでさらに食べられなくなる子に配慮して、「全部残さず食べるために」などの目的ではなく、「しっかりと味わうために」などと、目的を再定義することが大切だと思います。

 そして本来、「もったいない」と食材を大切にする気持ちは、押し付けられて育つものではありません。「食は楽しいもの」「食べることが好き」というポジティブな感情がベースにあれば、自然と将来的に「食材を大切にしよう」と思うはずです。日本にはその伝統的な文化があります。

 あなたは、「もぐもぐタイム」についてどう考えますか。

※1月29日発売の拙著「食べない子が変わる魔法の言葉」(辰巳出版)では、給食が苦手な子どもに対する解決のヒントを紹介しています。

(日本会食恐怖症克服支援協会 山口健太)

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山口健太(やまぐち・けんた)

月刊給食指導研修資料(きゅうけん)編集長、株式会社日本教育資料代表取締役、一般社団法人日本会食恐怖症克服支援協会代表理事

人前で食事ができない「会食恐怖症」の当事者経験から、食べる相手やコミュニケーションの違いによって食欲が増減することを実感。既存の「食べない子」への対処法に疑問を感じ、カウンセラーとして活動を開始。「食べない子」が変わるコミュニケーションノウハウの第一人者として、延べ3000人以上の相談を受ける。著書に海外でも翻訳出版されている「食べない子が変わる魔法の言葉」(辰巳出版)などがあり、給食指導などの研修を保育所や学校などの栄養士・教職員に向けて行っている。「目からうろこの内容」と言われるほど“とにかく分かりやすい解説”と、今日からすぐに使える実用的な内容が特徴。月刊給食指導研修資料(きゅうけん)

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