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54歳長男はひきこもり 母と姉に光明差す「持ち家売却」という選択

持ち家の売却も検討する

 現在の家計の状況では、仮に生活費を切り詰めたところで大きな改善は望めそうもありません。そこで、筆者は次のような提案をしました。

「お母さま亡き後、ご自宅を売却して住み替えをするということを検討しなければならないかもしれません」

 この提案に姉は賛同しました。

「確かに今ある自宅は弟1人で住むのには大きすぎますし、管理もできそうにありません。家を売ってお金に換えれば、生活費の不足分にも充てられそうですよね」

 一方、母親はあまり気が乗らない様子でした。

「自宅を売るのですか? それはちょっと…」

「もちろん、必ずご自宅を売却しなければならないというわけではありません。そのような方法も検討できます、ということです。何よりご長男の意思が重要ですから、お金の見通しを数字で伝えてあげて、家族で話し合う必要があります」

「そうですね。まずは長男と話し合ってみます」

 さらに姉が質問をしてきました。

「自宅を売却するとして、新しい住まいはどうやって見つければよいのですか? 弟の状況では見つけるのは難しいと思うのですが…」

「確かに弟さんの場合、街中にある不動産屋さんに相談に行ってもなかなか見つからない可能性があります。なので、別のところで相談することになるでしょう」

「それはどこなのですか?」

「具体的には(都道府県から)『居住支援法人』の指定を受けた団体になります。指定を受けた団体では、住宅確保要配慮者(低額所得者、高齢者、障害者など)を対象に、彼らの入居を拒まない賃貸住宅などへの円滑な入居を支援しています。弟さん1人で相談に行くのは難しいでしょうから、お姉さまにも同席をしてもらうことになるでしょう。相談に行けば必ず何とかなるわけではありませんが、普通の不動産屋さんで相談するよりも効率的に探せると思われます」

「そのようなものがあるのですね。知りませんでした」

「お姉さまがご家族の生活を犠牲にしてまで、お金の援助をする必要はありません。その代わりといっては何ですが、お母さま亡き後、弟さんが何とか生活していけるような環境を整えるため、可能な範囲で手を貸してあげることもご検討ください」

「はい、分かりました。おかげさまで先が少し見えるようになりました。今日お話したことは、母と私で弟に伝えようと思います」

 そう話す姉の表情は幾分晴れたように感じられました。

 親が高齢になってくると、親だけで将来の見通しを立てたり対策を実行したりするのが難しくなってしまうこともあります。もちろん、すべてのケースでうまくいくとは限りませんが、ひきこもりのお子さんの兄弟姉妹にも可能な範囲で手伝ってもらえるよう、家族で話し合いをしてみるとよいでしょう。

(社会保険労務士・ファイナンシャルプランナー 浜田裕也)

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浜田裕也(はまだ・ゆうや)

社会保険労務士、ファイナンシャルプランナー

2011年7月に発行された内閣府ひきこもり支援者読本「第5章 親が高齢化、死亡した場合のための備え」を共同執筆。親族がひきこもり経験者であったことから、社会貢献の一環としてひきこもり支援にも携わるようになる。ひきこもりの子どもを持つ家族の相談には、ファイナンシャルプランナーとして生活設計を立てるだけでなく、社会保険労務士として、利用できる社会保障制度の検討もするなど、双方の視点からのアドバイスを常に心がけている。ひきこもりの子どもに限らず、障がいのある子ども、ニートやフリーターの子どもを持つ家庭の生活設計の相談を受ける「働けない子どものお金を考える会」メンバーでもある。

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