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「しつけ」と偽ってイライラを子どもにぶつけていませんか? 親がすべき対処法

仕事などがうまくいかないときはストレスがたまり、子どもにきつく接してしまうこともあります。そんなときは、どのように対処すればよいのでしょうか。

イライラがピークのとき、子どもにどう接する?
イライラがピークのとき、子どもにどう接する?

 もし、あなたが次のような状況にいるとしたら、どうでしょうか。想像しながら読んでみてください。

 ある日、あなたは、会社の嫌みな上司に企画書の書き方について注意され、書き直しを指示されました。その後、会社を出て重い気持ちで帰路につき、電車に乗りました。ところが、その電車は信号系統の故障で30分も止まってしまいました。

 やっとの思いで帰宅したあなたは、すぐに洗濯物の取り込みと夕食の支度をしなければなりません。おまけに企画書の書き直しという持ち帰り仕事もあります。夕食の支度をしながらふと見ると、子どもは部屋の片付けや宿題をせず、ダラダラしています。あなたは、自分が無性にイライラしてくるのに気が付きました。

 この後、あなたなら子どもにどう接しますか。

ストレスを「しつけ」と偽って叱りがち

 選択肢が次の3つだとしたら、あなたはどれを選びますか。

A「さっさと片付けて宿題やらなきゃダメでしょ!」と叱る

B「お母さんイライラしているから、そばにいない方がいいよ」と言って、子どもを避難させる

C「あ~、なんだかイライラする。ごめんね。あなたのせいじゃないけど。仕事のストレスでイライラする。イライラする。イライラする。ごめんね。あなたのせいじゃないんだよ」と言って、イライラを純粋に放出する

 Aを選んだ人は、ある意味正直といえます。とはいえ、このような叱り方で子どものやる気を高めることはできません。それどころか、ほんの少しはあったかもしれない子どものやる気が一気になくなります。つまり、「百害あって一利なし」なのです。何が一番いけないかというと、自分の仕事や人間関係のストレスを子どもにぶつけていることです。子どもの立場になってみてください。これほど迷惑なことはありません。

 もし、あなたが、会社で悪いことでなくよいことがあったとしたらどうでしょう。例えば、あなたの書いた企画書が上司に褒められて社長賞をもらったとか、帰路の電車でいつもは座れないのに今日は座れたといったことがあったら、どうでしょうか。

 この場合、子どもが片付けや宿題をやらずにダラダラしていても、笑って許す可能性が高まります。つまり、子どもが同じことをしていても笑って許せるときとキレてしまうときがあり、それは親自身の心理状態によって叱るかどうかが決まるということなのです。

 私の経験では、親が子どもにキレて叱る原因の多くは、親自身のストレスです。もう既に、親にはキレる準備ができていて、子どもは不運にも引き金を引いただけなのです。そのとき、親には「子どものためだ。しつけのためだ」という錦の御旗があります。ですから、ブレーキがかからないまま子どもを叱りつけてしまうのです。

 ただ、親がこうしたことを続けていると、子どもに深刻な影響が出てきます。

 1つ目は、自分に自信を持てなくなって自己肯定感が下がるということです。つまり、親によく叱られている子は「自分はダメな子だ」「どうせオレなんかダメだよ」という否定的な思い込みを持ってしまうのです。そうなると、勉強、運動、習い事、生活習慣、遊びなど何事においても「自分には無理。できるはずがない」と考え、やる気が持てなくなります。

 2つ目は、「自分は親に愛されてないのではないか」と感じて愛情不足感を持ってしまうことです。すると、不安を解消するために愛情を確認したいという衝動に駆り立てられています。これが「愛情確認行動」といわれるものです。具体的には、危険なことをしたり、いけないと分かっていることをあえてしたりします。親が困ったり心配したりするのを見ることで「私のことでこんなに困ってくれている。愛されている証拠だ」と感じたいのです。

 2つ、例を挙げましたが、この他にも弊害はたくさんあります。子どもを叱り続けるのはやめるべきです。

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親野智可等(おやの・ちから)

教育評論家

長年の教師経験をもとにブログ「親力講座」、メールマガジン「親力で決まる子供の将来」、ツイッターなどで発信中。「『自分でグングン伸びる子』が育つ親の習慣」(PHP文庫)など、ベストセラー多数。全国各地の小・中・高校や幼稚園・保育園のPTA、市町村の教育講演会でも大人気。公式サイト「親力」で新書3冊分のコラムが閲覧可能。公式サイト「親力」(http://www.oyaryoku.jp/)、ツイッター(https://twitter.com/oyanochikara)、ブログ「親力講座」(http://oyaryoku.blog.jp/)。

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